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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
六章 過去って
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預言者

 そして一度は惹かれていたが実際に体験すると、万物ばんぶつを弾く圧倒感を認識する狂人の異名である支配下。

 あれから「また対すると思わなかったよ」と嬉しさがあった。


「フィナはいい。終点の妨げだ」


「なら、報復なのか?」


「ああ黒魔術界で根を張り名乗っていない」


 フォールオルドから分厚い風が発現し「グランデレ フォールオルドに黒魔術界の王を、グランデレ エルコンドル フォールオルドはここで最強と継ぐ。お前でない、あの方の象徴だ。名乗れ!」と信念を感じ、配下は静粛にしており、報復なら襲撃されるべきでやはり違う。

 俺はフォールオルドの間合いに入ると持っている絢爛けんらんな剣が黒に染まり「兄弟。テフェレ センシェン ハイロンから継いだ。知性を翼に生命力を織る象徴。テフェレ センシェン シオン」と背後をとった。

 慎重に伺う中「やはり今でこそ、お前の真髄が分かる」と首を百八十°曲げるフォールオルドは「精霊の生命力は、魔力位よじげんでは勝てぬ」と目に幾何学紋様が刻まれる。

 意味が分からないと答えるが「とぼけるか。この目には精霊位せいれいいが視えている、それに」といぶかしげに魔力が消失し「流石に硬い、腹を斬っていたつもりだったが。どうした?」と、俺の意思にないベールの発現や腹部に振り込まれた身体能力を追えなかった。


「気になるか? 俺が渡り合っている要因を」


 低空で剣を振るうフォールオルド。

 恐らくベールに別の軌道を試している。


「簡単な道理よ。お前と同じ契約者だからだ」


 速い──そういう剣捌きや頬に優越ゆうえつにじませ「俺は魔人と契約を結び、心眼を開花した」とこまやかな連撃。


「俺はお前の上の階級と交わしている。この意味を受け入れろ」


 提唱に注力しているのか、内容が通じてると誤解されてるし、集中力の切れる太刀傷こんせきがベールについている。

 幾つもの太刀筋が丁寧に、的確な剣捌きにベールの修復が追い付かず。

 左腕から血が流れた俺に攻撃が止む。


「活かしてやろう」


「活かす…?」


「ああ。あの方を討ったお前は活かす、後の勢力は拘束し保管だ」


 唐突に終戦を諭しているが、ベールをヴァレン、ユキ君、ミグサに掛けて一帯を支配した俺はフォールオルドの頭上へ渦を発現。膨張し黒い残滓が抉った地にフォールオルドは居ない。


「シイナ。知ってるか?」


 フォールオルドは俺と同じ契約者と言った。

 精霊位と認識してるそうだがシイナ自身も精霊と名乗っていたし気になる。


「知らん、だがシイナと聞けば六つの墓石の一つとされる」


「聞きたい」


「そこまで詳しくない。ただ魔人から聞いたまでだ」


「分かった」


 やはりシイナは黒魔術界に来ていない可能性が高い。

 なら俺を知った要因は何なんだ、シイナ。


「…行くよ」


 俺はフォールオルドに剣を振る。

 受け流されたが「本当に、報復でいいのか?」と聞く。


「ああ…」


「…。」


 信念は未だ感じるが攻撃的じゃない。

 その頃、渦はフォールオルドを飲み込んで蒸気を上げる。

 接触せずとも地を楕円にする効能だが、ドロドロの衣服から蒸気を焚いて「耐久力はどうだ?」と熱しているかの姿。

 急所に外傷なし。

 狂人差ながらに魔力で食い止めたと思われる。


「最高」


「フフ、フハハハハハハハハハハハハハ!」


 フォールオルドは高らかに「白魔術界アルタイル終焉しゅうえんだ。それを企む奴らに蹂躙させ、時期にやって来るそいつらを抹殺し、黒魔術界アルタイル再興さいこうを迎える。お前の力は価値あるものだ、俺に忠誠ちゅうせいしろ」と。


「嫌」


「拒否は許さぬ…それとも」


 フォールオルドの大地が裂ける。


「心を屈されたいか…」


 一帯に情動が馳せた。

 細胞まで反応するかの尊大そんだいで、率いるは凶悪揃いの黒魔術師。

 実績然りもはや威厳。

 だが構えている剣に目掛け、黒い剣を振るえば刀身は折れて吹き飛ぶ。


あらゆる魔術を退ける。ベールを見切ったというのは誇っていいよ、破った強者ツワモノなんてそう居ない。そしてグランデレ エルコンドル フォールオルド。王位を渡すか選べ」

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