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傷の跡が穏やかに咲いていく。  作者: 神崎蒼葉
一章 魔術世界
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印象

 帰り道にメイミアとの出会いを聞かれ、長い付き合いになる人ってどんな印象だったか気になると、そう言った質問に言葉が浮かばなかった。


「余り、いや、特には」


「そうか。俺はシオンに会った時は天才って言われてたじゃん?」


 口数が流れるように進むミグサは気が動転しているかもしれず「結果これだけど、天才は聞いたことないよ?」と寄り添うが、それで気になった俺を見た印象が驚きだそうで、確かに入学した頃は声を掛けられる言葉が決まってその白い羽根は何?だった。

 白い羽根は俺の周りで宙を舞っていたメイミアで、当時は俺の周りを浮遊ふゆうしていた。


「人気だったよな、確かその数日後にメイミアが入学したん」


「アイツがベラベラと喋らなければ…」


「なんて言われたんだ?」


「ほっといてくれ…たく、豚に真珠で悪かったな…」


「は? 豚に真珠が、何?」


 俺の頭に感情が流れてくる。

 それは過信、油断、慢心まんしんなのだが「うらやましいと思ってた」と聞こえる。


「どこが?」


「だっていつでも一緒だし、シオンとメイミア。廊下ですれ違う姿が印象に残ってる。ずっと神秘しんぴまでに感動したから」


 思わず想像したら「…便所に行った時か」とこぼれる。

 ミグサは便所の寄り道の出来事で感動した事になるから下校にして欲しいと言ってくるが「毎日補習だったからみんなと同じ時間に帰ってないよ」と伝えていたら「じゃ、じゃあ中途入学は凄いだろ。絵に描いた天才だ」と、やっぱり優しさを感じた。


「まあな。かげで天才とうたわれた期待も簡単に裏切ったからな」


 そう言って気が付けば静けさが物語る程後ろにいるミグサ、きっと友達の評価を踏みにじったが俺は続けた。


「首席に合う友達は沢山いる。進級して話し掛けられるのはミグサくらいだし、印象悪くなるから」


「喋らない方がいいって言いたいのか?」


 そう言って紡がれるは「そういうの毎日学校に来る奴の台詞だろ」だった。


「うん」


「明日からちゃんと来いよ、一日一回笑うまで喋り続けるからな!」


 ミグサは笑顔で姿を消す。

 そのやりとりを部屋のベッドに転がって思い出していた俺は、服から紅い羽根と青い羽根の象徴ピアスを取り出して、玄関に置いてある貝殻かいがらに入れる、雲が月に被さる頃。

 ミグサの家から逆算し見つけた鳥居をくぐり、石段を上り漸く着いた。


「これが神社…」


 両膝を付いて見渡すその注連縄しめなわにある紙垂しでの真下、お賽銭さいせんの前にある本を発見する。

 開くと白いページが続いているのを確認していたら空へ突き抜けるかの光が体から発せられ。


「ぷっわぁ」


 ふざけた声で胸から飛び出す生物を掴んでにらんだ。


「ようシイナ、よくもまあ抜け抜けと出て来れたな…」


 液体なのか個体なのかはっきりさせるため締め上げるとぶるぶるするシイナ。


「あぁ…あれは仕方な痛たたた痛いですよ‼︎ 原形無くなりますって!」


 個体が「転移てんいのために来られたのでは?」とだっした。

 俺がその前に気になるから調べてると伝えれば「御言葉ですが。封繋つなぎを調べミグサ様と屍人しびとの関係性は不明かと」と知ってる様な反応が返ってきた。


「ミグサを知ってるの?」


「はい。シオン様から見ていたので、屍人が離れた辺りですが」


 そう聞いていて、屍人とは亡くなった人の事であり、封繋つなぎとは屍人を現世にとどめて置ける本、またすでに使用済みと説明を受けた俺は分かりやすくお願いと、その様に会話が続いた。


「では、本は魂のドーピングです。ミグサ様が開いた(といた)事で一緒に居られたのではないでしょうか」


「本人は取り憑かれてたって言ってたよ。魔力吸われてたし」


「逆です。解放者は生命力をいちじるしく消耗致しょうもういたしますし、そうしなければ屍人は消えてしまいます」


 消える、そうか。

 肩が落ちる。

 遅かったのかと呟いていた。

 こうやって行動していたのが久しぶりで心の支えになっていたかもしれない。


「いえ」


 一方シイナの声に向く暗闇から人影が近づいてくる。


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