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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
六章 過去って
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帰還

 視界が変わった。

 落下無し、水辺でない、アルタイルの上空。

 異常いじょうな魔力の濃度のうどけた地表、建物は焼けげ山々が燃える。

 目に幾何学紋様きかがくもんようを起こす俺は多くの生命が写る北の方角から非難ひなんの人々と読みとり、西に自身の象徴シンボルを感じた。


「俺先に行く、ゆっくり来て」


 幾何学紋様から魔力に切り変え、最速でこの場を抜けた。


◆◆◆


 白魔術界アルタイル魔術王族護衛隊師まじゅつおうぞくごえいたいし、通称魔術師。名の通り大層たいそうな塔がある南に大隊長達が集中し、東に魔術学校。

 感知する紛争は三つ。南の大隊長達と東の魔術学生並びに魔術教員の衝突しょうとつ

 そして西の黒魔術界奥地。

 それは白の同盟どうめい申し出から部隊が絶命になり「お前ら…黒魔術界の連中はそろいも揃って…敵に加担かたんするつもりか」とミグサ。


「いいや違う、お前の象徴が気に食わねえだけだ」


 燃える雑草に倒れている魔術師達。

 負傷は法則崩れの痕跡こんせき、刃物による傷で赤い飛沫ひまつが軽症と錯覚する抗争跡。

 陰の魔力が傷痕を膨張し空気にき出す者達に息はない。

 部隊を殲滅せんめつさせたリーダーである男は中指で耳たぶを突き、木の根元で野垂のたれるミグサをにらむ。

 浅い息で、青い羽根のピアスから魔力を採取さいしゅし「しんぼる…これは親友からの…貰い物だ」と生命維持を続けた。


「親友。そうか親友か、ならその親友とやらの居場所も知ってるだろう」


 リーダーの男がき出す間に、配下二名がミグサの両腕を樹木に貼り付ける。


「態々生き残した後始末を続ける、ソイツの居場所を吐け」


 ミグサの肩に刃を突き向け、数える様にそれら関節を「一つ一つ」と口にして、嗜虐しぎゃくな笑み。

 片やミグサの表情は疑問。


「そうか、魔術師大隊には教育が施されていないか。手短の紹介なら人柱じんちゅう。あの方の弟子だった。師から教わったのは必ず殺れ。酷く。反骨の完膚なきまで。尋問じんもんで俺の右に出る者は居ない、四肢ししを削ぎ落として活かすなどと言われているが、生命力から死の損傷限界まで手に取って分かる。新参でも聞いた事あるだろう、遭遇すれば」


 死ぬ。


 今遭遇している男は悪の権化。


 名はフォールオルド。


 粛清対象の第一位が、王だったとは。


「終わっ…てる」


 顔を覗かれ血の気が引く、負傷の後遺症こういしょうもあり。

 無防備に裂かれる。

 肉を、腕を、足を、結末が駆け巡る。

 そう想像し──しかし、首に力を入れ意地の悪い顔を上げた。


「言わねえよ」


 唾を吐く言動、また最後の力を見せつけた結末が下る。


「お前の様な奴には(時間の)無駄むだか」


 同時、奇声が響く。

 腹の肉を刺し曲げる剣を引き抜くと、滝の様な汗が滴る。


「喋ればむごき方をしなくて済む、だか余りにえられるとこっちの気がくるっちまう。そうだろ?」 


 娯楽。

 黒魔術界では見慣れたものであって、拷問ではなく。

 笑いが起こる総勢に食いしばり、それが清々(すがすが)しく、赤くまみれた口で言葉を返す。


「ああ…みっともねえんだ、敵であろうと命をうばったら、その繋がりの誰かが傷付きずついちまう。誰かが死ぬとすれば、俺でいい」


 ──笑止した。この場で最も慣れていたフォールオルドさえ、寒気におそわれる。

 一頻り背けながら。


きょうざめだ。ソイツはお前を親友と思っていない。もてあそばれてるんだよ…」 


 全てが無駄むだだと悟り、仮に聞き出した所で嘘を付かれる。

 直ぐにでも始末つもりで、象徴をうばおうとした。


だまされ恐怖し苦しむ寿命が伸びた。悪運もきる。今更黒魔術界の力を欲し自滅じめつしていく? 自業自得だ。法則崩れを規制し罪人ざいにんとする白魔術界アルタイルの王に首を返却してやろう……は?」


 ミグサを拘束する一人に腕をおさえられるフォールオルド。

 視界には左耳に銀の十字架じゅうじかあかい羽根が光っていた。


「よく分かんないが、この人を助ければあの時のおんを返せるかもしれない」


 不安な声。

 対してフォールオルドの顔を押し出してもう一人。


「は? 私のでしょどう考えても! 何で先輩の象徴付けてんのよ。だれの許可をてんのよ!」


 その矛先はミグサに向いていた。


「ウルメスドに…シェス…配下の奴らは…」


獲物えものの前で背けるアホに説明する筋合すじあいないわ」


「この非常事態ひじょうじたいで動いてるやからの情報収集をしていたら、この人の象徴が、会頭から聞いたあの人の象徴と一致いっちしてるから背けた時に拘束してる二人となりすました」


 一連の意図をユキが説明した瞬時しゅんじ、大地が響く。


「俺らの領分りょうぶんで邪魔した狼藉ろうぜきの、抗争こうそうの覚悟は出来ているんだろうな…」


 ミグサをかくまい身を引くユキ、人柱に歯向かうは死を招く黒魔術界の通例を予期しており、組織内では御法度ごはっとだが遠に空も侵食し尽くす飽和領域に付け入る魔力なく。

 フォールオルドはたくらむ。敵対勢力をさらし上げる機会だと。黒魔術界の人間に納得なっとくのいく素晴らしい動機どうきが仕上がり現状のアルタイルなどどうでもよいのだ。

 あの最強の、あの方がおっしゃった魔人の実現。これに最も近いのは我々だ。本当の最強こそ、あの方につかえて来た俺が知っている。

 フォールオルドに迷いはなかった。

 支配下の前で身体能力の向上など不可能、真っ先にとらえるきっさきがミグサにいき、抑えられる者は居なかった。

 だが、真髄しんずいきざまれた声が、この行動の抑止よくしを持っていた。


「よ。フォールオルド」


 木陰こかげから明かりが照らされる中で、その歩みが四人の元へ向かう。


「俺の身内なわばりに何の用だ…」


 間一髪かんいっぱつ。ミグサ達に炎の壁を司り、距離をとり計らうフォールオルド。

 見よう見真似でヒビキ先生の魔法を黒魔術で再現した。

 親友の元に辿り着いた俺は笑みを込め。

 象徴の使い方が違うと伝える。

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