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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
六章 過去って
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デジャヴ

 俺は同意を得て廃墟だった病院に向かう。

 人が寄り付かず、二百人が集まれる地は指南に打って付けで魔力の解放を促していたら「ダメだどうしたら」と聞こえる。


「──ゾクッ‼︎」


 俺は魔力さついを当てた。

 これに慈悲はなく、こころに死の淵を再現する方角同士は極限に反発する。

 翔から魔力が充満し、また、膂力りょりょくが活性し出す。

 俺は「気分はどう?」と魔力を弱め。


「すげぇ」


「では身体に真髄を馴染ませるよ」


「しんずい?」


「その状態は、闇は、解放しても扱えず心身を蝕む猛毒。つまり体の支配権が闇になってるから変えよう」


 そう言ってる間に身勝手な魔力が吹き出す翔。

 思わず凄い魔力量だと感激したが「可笑しくなる」と焦った様子。

 それは俺という魔力よくしを弱める事で翔の魔力が存在を主張しており、自我を乗っ取られそうになっていた。

 また心身を蝕むとは、生き方に由来する。

 例えば人は何かしら仕組み上で生存する様に、文明や国などの仕来りに基づいている。

 心身とは道徳や誠実性を表し、蝕むとは生き様の変容。

 結果目の奥が霞み皮膚に血管が奔る翔は、黒魔術師の開花と似ていた。


「俺も妹もそうだった、存分に暴れていいよ」


 理性で押さえている翔を見守り。しかし「この狂った力がシオンを傷付けるだろ、そんなの…」と持ち堪えている。

 本来なら即座に暴走する想定の元、もはや未知だったが「その魔力は理性とか感情じゃ効かない、自分の中で支配し返す方法を探すんだよ」と促すが「シオンは丸腰じゃねえか」と続く。


「何で冷静でいられんだ、傷付くんだぞ」


「別に…死にやしないよ?」


「そうじゃねえ…」


 どうやら微動だにしない。

 少し、説明の不十分さを感じ「ごめん。故意的に怪我を求めてる訳じゃないんだ。独立するための経験なんだ。特にその魔力は、翔の言う丸腰に近い程いい。でないと折角出て来た魔力が引っ込んで…永遠に見つからなくなってしまう」と補い「その根幹を逸らしてきた。この身がもし、シオンを殺してしまう可能性が一%でも否定できなければ自害する」との事に詳しく聞くと「想像の話だ。身内の死で意識がブッ飛びそうな時があった。真っ黒だった。自分が光みたいに流動な姿が創造を破壊するみたいに。物体。概念。全てのものを失いそうになる。正に今それに近い」と翔。

 難しいが「潜在の体現や悟りみたいな気がするけど、とはいえ死なない自信あるよ」と告げる俺は耐えてる翔に「俺。最重要危険人物(テフェレセンシェン)の最年少(シオン)だぞ、どこに不安があるんだよ?」と続けたら「それってどういう」と全身が脱力へ向かい、地に静まっていく翔に「悪人の中で最強の象徴」と見送る。

 吹き出す翔はただ安らかにその目を閉ざし覚醒した。

 獲物を捉える眼力から真っ黒の風を帯びて、こちらに飛び掛かる蹴りが病院の残骸コンクリートを砕く。


「凄くね…」


 攻撃は受け流す。

 対抗策は補修の実践だが、翔が支配するまで、抑止し続けるのが指導者の在り方と魔術学校で教わりはしたけど、そもそも陰の方角の人が魔術学校に来ることが稀で、見たことないし、ヴァレンの時と同じ様にしているがあの時は死に掛けた。てかベールを無視してくる奴はあれが初めてだ。

 ──だからこの行いが合ってるか分からない、その道の教師の方が上手く導けるとしたら、俺の影響は今後の翔にとって良くないかもしれない。

 けど、だからこそ同等の力量に合わせ、工夫して促す。

 あと少し、その少しで俺を殺れるんだと潜在の成長に訴えて、既視感があった。


 俺は蹴りを避けて、視覚が乱れる。


 今膝蹴りを交わしたのは翔で、それが別人と重なって躱し、膝ほどの白い丈に青い剣を拵える、この白金髪の人は一体。


「誰?」


 気付けば現実に戻っていたが夢みたいな感覚。

 しかし寝ていたはずがなければ身体で思い出したかの感触が残っていた。


 ──大切な人──


 身体がそう言ってる。

 けど俺は関わった人達を忘れない。

 その事に疑心した。

 理由はもう容姿が思い出せない。

 でも五感は尊さを感じ。


 同時に翔の存在に惹かれている。


 知らない感受性だし脳が冴え渡る。


 調子がすこぶる良い。


 心から喜んでいる実感が。


 あれ…?


 急に今までの思考が分からなくなった。


 例えると朝見た夢を思い出せみたいに。


 忘れた。


 何も覚えていない。


 でも疑心した記憶は残っていた。


 確か関わった人達は忘れない。


 現にオルトロスを覚えているのだから……。


 そうか、オルトロスの様に意識したらきっと翔の才能を。


◇◇◇


「どう?」


 都心の景色は星を彩ったみたいに綺麗で、夜風にうたれる高層の頂上で待っていた。

 飛び移り「世界が変わったよ。にしても消える様に行くから見失う」と辿り着いた翔は無事魔力を会得し、遠く離れた横断歩道が青に変わる、砂粒程の人々を眺めていた。

 後は「法則を覚えればもう」と、言ってると驚く眼差しを浴びて、背筋に気配が感じ出す。

 向くとシイナが立っており「それ重罪だとメイミア様に言われませんでした?」と引き攣った声が都心に埋もれ。目を細めるシイナが吐息を零して続けた。


「元魔術職ファラドーナ エレンティーン メイリスが、魔力位よじげんを滅ぼす宣戦をアルタイルに布告しました」


 涼しい風が吹き抜ける、ガラス張りのビルが忙しく光りを変えた。

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