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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
五章 残されたもの
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黒い片翼

 時計の針は縦一直線になり兄さんは生きてると終えたら「門を…燃やした事を信じていいか」と問われ詰まった。

 何の話し?

 今まで戦闘やお祭りを兄さんから知ったと伝えた所に。

 …燃や?

 …ん。

 ああ教員室に呼び出された話かと理解したら「大事だろ。ある人って知り合いか、友達か? 教師ごと燃やそうとするって危ない奴だ。悪魔だそんな奴今すぐ縁を切れ‼︎」とテーブルを乗り上げる翔から気迫や迫力、その人間性に魅入っていた俺は段々「危ない奴で悪かったな…」と、ただ「災難の元になるっていうなら合ってるよ。でも常識外れの出来事で進むべき道が遮られても追い詰めるなって」とまとめれば「だな」と消沈した反応で「知り合いを悪く言って、危ない奴は俺だな、わるい」と続いた。

 知り合いは俺だしお互い客観視できる話がしたかったためと、独り言みたいになっていたら「兄弟が生きてるか」と遺影に呟く翔。


「信じていいか聞かないの?」


「シオンが言うならそうなんだろ」


「…。」


 少し不満。色々答えられるしそういう話しが理想だったが、目頭から込み上げるみたいな、幸が薄い腰を下ろし「ここは極道だ。大なり小なり一般人と流れる血が違う。深海でお前を魅て…あのマフィアが成す事業を打っ潰した強者なんだよ俺にとって。信じるさ」と先程の情動が冷酷級に落ち着いてる。

 また「…信用ないか? あれから数日間、本来なら失態というケジメをつけに来る。今頃ここは焼け野原になってる筈だ、そうなったとしても受け入れていたさ。ダメか?」と不思議な人情に触れていた俺は混乱する。

 翔の方角はこちら側で、言葉は白魔術界であり。


「ダメっていうか、人格者だなーって」


「そうか? まあ口じゃどうとでも言えるしな。ただ家を継ぐ気のない意識でも信用次第で生き残れるかどうかの世界から得たものだ。俺の誇りだ。ありがとう」


「偶々だよ、先生だったし」


 運がよかった。

 心から。

 よかったはずだ。


 ◆なのに何がよかったのか分からない◆


 少なくとも五感ははっきりしてる。

 強い敵に死に掛けた感覚があって、なのにその最中がぽっかり空いた様に。

 時間が惜しくて…その前に何かあったはずで「…先生」と呟く翔は「ま。そこは触れないが、ここまで自分の身が安泰だと知らない間にシオンが動いてるとか思ったりするんだよ」と真面目な顔付きに「動いてないよ」と伝えるが「そうなのか…ならメイミアさんと関係あるとか」と疑心な様子。


「関係?」


「実は」


 聞くと昨日のニュースについてだった。

 学校ではその『ニュース』についての話題がなく、誰に尋ねても知らないの一点張りだったという。

 また翔が言うに登校中に会った学校の勧誘であの時記憶の供給が行われていたらしい。

 俺は体験できなかったが、俺と翔が入学したら深夜の事件をこの世から伏せると説明されたそうで。

 ならニュースは何処へいったのかと、その様な疑問に「どうだろう。人をひれ伏す様な力を持ってるし俺からはなんとも」と、一緒になって寝ていたし。


「意識を失っていた間にメイミアさんが白服をやっつけたんだよな」


「うん。どっちが敵か分からなくなった」


 メイミアや翔の戦闘は記憶にあり「この際だから聞いてみたい、シオンとメイミアさんってどっちが強いんだ?」と好奇心の声。

 暫く静寂になり、外で鳴らす虫の音を感じ取れる頃「いっぱい負けてる。死ぬ程強いよ」と冗談っぽく振り返る言葉は黒い片翼の姿。

 その思い出をぼかし「マジか、次から目を見て話せなくなりそうだ……よし、じゃ行こう。いつの間にか消えるのは無しだからな??」と立ち上がる仕草を鼻で微笑えた。


◇◇◇


 生い茂った奥地へ向かっている間、地図を写す画面越しの翔が何度目かの「ん?」を囁いており「病院って森林にあるの?」と満月を映す水辺に黄色く発光するものが宙に泳ぐ、好ましい自然に囲まれているけれど迷子だと思う。


「地図だとこの辺なんだ。変だっつうかそれ女郎蜘蛛だぞ! 肩に乗っけてないで振り落とせよ」


 言われた通り地へ離した。

 視線を戻すと薄暗い人影がざわざわと来る。

 長髪を靡かせ、両手を上げている鳥肌もんの人影が翔の背後で足を止め、唸り声と共に両手が下がった。

 悲鳴が上がる間に、髪を結く部長に「テメー心臓止まりかけただろうが‼︎」と胸ぐらを掴んでいる。


「なんの此れしきよ、それでも総長?」


 俺は部長と挨拶し、何か既視感を覚えた。


「辞めたし元々俺の族じゃねえから」


「そうなんだ。なら部活動に専念なさいよ…」


 互いに対立していたが「にしても見つかって良かった。この辺通信障害がある事忘れてたし、皆ここに行き着くんだよね」と思い出した様に部長は胸を撫でて、そんな姿にやや不安。


「さあ楽しい夏休みだ、行こう」


 意気揚々の部長を翔が追い掛け、そのどんよりとした後に付いて行く。


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