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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
五章 残されたもの
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ひと時の安らぎ

 メイミアと対面する食卓にカニ鍋と河豚という料理を囲っていた。

 俺は大皿に白い花が咲いてるかの盛り付けに「これ河豚っていうんだ。焼いて食うしか頭が無かったわ」と囁いた。

 調理中食材をさばく姿が超真剣で、待っていた食卓がこんな豪華になると思わず。


「…はっ!」


 思い立ったかの翔に「何⁉︎」と聞くと「さばけてよかった」と続いた。


「料理好きなの?」


「ああ…好きだ! 何気にシオンって毒耐性ありそうだよな!」


「毒。ないよ?」


「………クスっ」


 何故か笑われ、翔に催促されて食べる鍋も河豚も美味しかった。

 こうやってみんなで食べるのが懐かしくて安らぐ。

 友達と、メイミアと……。

 翔がいるから?

 安らぐってメイミアを受け入れてない、か。

 あれ。

 なんか無性に心地よくて楽し。


 ◆なんで楽しめるの?◆


 頭にそう響く。

 目の前が真っ暗になり言葉が続いた。

 

 ◆──なんで離れるの──君はヴァレンを選ぶの──◆


 それは俺が弱くて脆いからと、心で返していたら「そんな似てます? 似てる…似て…似てる?」と不意に翔が映る。


「へ、ああ…」


「「そっくり」」


 鼻がくっ付きそうな翔に応えると「…へー?」ともどかしさが漂っていた。

 テーブルは絵札のカードで山になりメイミアは就寝。

 ふと五連敗中に「集会ってやつ。時間いいの?」と聞いていた。


「おう。辞めたからな…1」


「え。大事な所だったんじゃ…2」


 手札を切って慎重に進んでいたゲームは我慢の限界。

 俺は手札を山に四枚重ね。


「元々は兄貴を慕った人達で、名残惜しくて俺を迎え入れた様なもんだしダウト‼︎」


「……そう。…もう嫌だ、勝てる気しないわ」


 永遠に減らない上に大量の手札が舞い戻る。

 それを宙に投げ出し、カードがバシバシ降ってきて何もかも上手くいかず「何で分かるんだよ俺が出した絵札」と、暑くて服を脱ぎかける俺に「だってフルで持ってたし? おい」と遮る翔。


「汗で気持ち悪…?」


 一向に退けないし避けたら「だったら風呂入れ!」と顔に血が上る翔。

 渋々従う風呂場で「…何なんだよ…人をわいせつ物扱いしやがって……」とブツブツ言いながら髪を洗う俺は泡を流し浴室を出た。

 水気を拭いて鏡に立つ、ドライヤーの使用中「な、遊び行こうぜ!」と洗面所の戸を開ける翔が楽しそうに言うので「おう」と、髪を梳かす片手間に目をやると真っ赤にする顔が映った気がした。


「…普通、着てから乾かすだろ」


 戸が閉まる。

 俺は「別にいいだろ!」とくしを投げたら、背後に現れるメイミアから「煩い」とはたかれ「ふん」と洗面所を出て行かれる。

 思わず「お前は恥ずかしがれや変態!」とタオルで包み、鏡の前に写す自分、そんな姿を凝視した。


「誤解されても、無理ないか…」


 どうみても女の子。

 特に青い髪が背に掛かる長さなのは罪人だから人前に出ずらく散髪する習慣がなかった。

 けど誤解の理由は恐らく。

 女性よりの肌色や中性的な顔立ちは我ながら少年と呼び難く少女と思われて当然かもしれない。


「はあ…、傷つく」


 思えばアルタイルでもティバイでも、同じように気にした事は幾らでもあったし、印象にある言葉で示すなら美貌と言うんだろうか。

 でも豚に真珠とか他人にどう思われても基本どうでもいいが友達は違う…。


「バカバカしい、容姿なんて遺伝だ。なんなら文句の一つでも言って……やる、親はいないんだ」


 ◆なら俺ってどう生まれたんだ…◆

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