クラスメイトの背後
また魔力が抜けて肩に触れられた様な感覚があった。
声が聞こえてくるし後ろに向くと「ずっと探してたんだ、補修してると思って行ったら燃えてるわヒビキ先生はぶっ倒れてるわシオンはいねー、そんな事いいんだ。こいつ何とかしてくれ‼︎」と、病相じみた同級生が言う背後に、透き通った黒い肌、薄い布を纏い鎌を持つ巨人がいる。
俺はミグサに魔力が吸われていた事を実感し離れるが、ミグサは巨人に魔力を吸われているらしく。
「死ぬ」
そう続くが、比喩?
弱ってるのは感じるが半透明の巨人に取り憑かれるって一体、いや。
「俺の魔力量じゃ(足りない)…お祓いしてきたら?」
そう伝えると巨人は石で刃を研ぐ。
「んな人脈いない。それより超怖えー。呪われるの嫌だよ」
「呪いより凶器を凄い研いでるよ」
「怖過ぎて見れない…。それでメイミアに相談したいんだ、いつも一緒だろ。さっき喋ってたし、何処にいるんだ?」
「いつも一緒じゃなく…。そういえば朝から見てないような?」
「何と喋ってたんだ……。なあ、心当たりないか? 直ぐ相談したいんだ、生きた心地が!」
「ッ?」
「どうした?」
いや。そう言い聞かせ鼓動を強く打った俺は「メイミアは、多分、裏山にいる」とだけ伝えれば視界が歪む。
気付けば「おい腕もげる勢いで引っ張りやがって‼︎」と声を上げる裏山で、ミグサと巨人の三人で彷徨っていた。
「つい…」
その声が背中に篭る。
正規の道ではないから足場が悪く、生え伸びた草木を掻き分けながら進んでるし俺にしがみついてるミグサは『多分』を忘れてる。
「あぁ」
「わ…悪かった置いていかないでくれ」
「ミグサに吸われて魔力はゼロだ…」
あの補修から残りを吸われ、逃げる魔力もなければ回復もしないが「魔力が無かったら生命維持、出来ないだろ。こんな時に冗談言うなんて…でも大丈夫かもしれないって思えてきたぞ。なんたって」とミグサ。冗談じゃないが、元気づけした様になっていた。
そして何度も聞いた長話が始まりそうで「転生者でしょ。死んだら美人女神に口説かれて救世主になる誓いをした勇者ミグサ様。魔王対峙のついでにメイミアも討伐してくれませんか?」とまとめる俺は目的地に着いた。
「勇者から変だぞ?」
「勇者は信じてるけど」
「アルタイルに魔王いないが…」
「そんな難しい話を理解できないよ。ほら」
目的の人がいるというのに「違う」と訂正するミグサ。
討伐というのが気に食わないらしいが、平地で楽になった広場で「何処に?」とのミグサに「ここだよ」と巨人を見つめる銀髪の悪魔がそう言って咲う。