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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
四章 悪魔と危険な遊び
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尊厳

 開戦。敵の飽和領域は濃度が高く鉛かの世界。弓の所持が微かに映る。

 脅威は魔術系統に由来する自然の発現。王道な火や風などを感じる。

 複数の魔術師から成る大魔術級や飛んでくる雷の形状は矢や槍など、自然の加工が自在に発現していた。

 死にかけたと思う。

 傷の蓄積を重ねていた俺はある時を境に戦意を奪えた。

 要因は『レジェ様。ヘイデル様。イズ様。ロロメル様』との声。

 敵からその様に聞こえる度、鉛かの世界は解かれ、傷は回復し、攻撃を躱せる様になって「…何で。ただの少年が尊厳有しているのよ」と続いた。


「エグ…」


 映し鏡かの翔。

 体感上深い傷然り、敵の動作が見切れる身体能力の変容や魔力でないものを操っている…。

 考える時間が惜しいが剣を生成し、青い魔力が地に溜まる海水と共鳴し饗宴神楽がより青く輝く。


「は…?」


 敵は混乱状態。

 しかしこっちも状態が悪い。

 平衡感覚が気薄ながらに完成した一見絢爛な剣、地面に翳す試し斬りで威力を確認する。

 はずが深い斬れ跡から浸水し始め翔に襟首を揺さぶられた。

 耳には「おいおいおいおい!」との絶叫や「はあぁ? 最高峰の地表に魔力よじげんは疎か想力ごじげんすら干渉しない特異物質に何したって言うの……」と朦朧の視野に戦意喪失の声。

 理想は今頃斬り終えていたいが萎縮が進む。

 頭痛や喉が詰まる様な症状で「じゃあ」と深い呼吸から「最後だ、翔から手を引け」と切り直したら「厄介な事が始まるのよ。此処は利益の一部に過ぎないけれど一から創り直すとなれば時間が掛かる。信用出来るかしら?」と既に全身が痺れ視界が歪み出しているが、投げやる動作が伺える。


「構わない。話し合いが成立するなら…それでいい」


「成立でよろしくて?」


 俺は「…ああ」と立ち眩み「では修復作業に移りたい、君の尊厳で修復出来ないの、どこへでも好きな所へ行って下さ」と聞きながら杖代わりに剣を刺した地が爆発、翔と敵が叫び出した。俺は爆発で底をえぐった所に「……優しく触れると爆発するんだった」とぶっ倒れて思い出す。

 敵は「妾を。脅かす様な真似してくれて、よくも」と腕を振り上げていた。

 向かい合うと生成した六角形の光を十個、螺旋状に回転しあっという間に飛んでくる中強い頭痛を伴いベールが消失。

 咄嗟に翔がいる感知や皮膚を貫く光景に風が過ぎ去る。


「早く…」


 見ると外に手を振られ、グシャグシャだった扉が修復していた。

 負傷を感じず「…助かった。敵」と零していたら「敵って…あってるけど、名乗ってませんね。妾ファラドーナ エレンティーン メイリスよ」との応えに振り向けば貧血に襲われていそうな姿、ぇ…。


「どこかで…会ったことあるような」


「ええ保健室の先生でしたから」


「ゲッ⁉︎」


「ゲッって何よ?」


「…メイリス先生がいるなら、翔に退学したって言って欲しい様な、信じてくれなくて…」


「こっちが初耳よ? 大体君が魔力を開花しているなんて想定外だわ。女神の転生者に近い人達の資料には目を通していたけども、君の成績オール( )じゃないのよ!」


「はい」


「テスト記録全部赤点。どうやって入学したか未だに不思議だったけど、メイミア様も居たし。どうとでもなるかって思ってたらなんなの君は!」


 それで診察後に闇がどうとか言っていたんだ…。


「それにベール。風聞にしか認知してなかったけど、何でウチの学校にディザスターが居るわけ⁉︎」


「教育し甲斐あるでしょ…」


「……とにかく、手厚い担任に恵まれていたんでしょうね。君の資料には魔力情報さえ記されてないのよ」


 俺はその言葉に公園が蘇る。

 粛清されそうな際、先生は本当に心配していたように思えていたら「ほら行って」との後押し、俺らは扉に向かい上陸した。

 車に乗り家へ着く。

 メイミアは「私。寝て……私の部屋? あれ終わっクシュン!」と目を覚ました。


「終わった、あのっクシュン!」


 俺は鼻を摩り言葉が飛ぶ。

 けれど別の機会にしようと目を瞑り、少しして呼び鈴が鳴る。

 玄関を開けたら袋を持って訪ねていた外跳ねた髪の茶色がかった少年に「ミグサ?」と聞いたら「俺だよ翔。切って黒染めしたんだ」と知り、しみじみ感じる風習から「でさあ」と袋を譲り受けていて、赤い生き物や貝殻だったり斬新な食材だなーと覗いていたら「届けに来たんだ、よかったら食べてくれ」との事で「それが腹減ってるっていうか、料理担当が寝てるっていうか捌けないですはい!」と伝えたら首を傾げていたので「作って!」と続けた。


「鍋にしたらいいんじゃないか?」


「なにそれ?」


「普段なに食ってんだよ」


「焼いた肉か果物」


 俺は「…不味くても文句は無しだぞ」と笑顔で聞いて夕日に玄関を閉めるのだった。


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