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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
四章 悪魔と危険な遊び
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深海へ

 窓に布が掛かり、ぐったりする二人の間にいて、怒られる覚悟でいたらその様になっており、いやー車って便利だね!翔も運転したりするの?と言ったらシンとしており、俺も運転してみようかな!なんちゃって‼︎と続けたら空気が死んだ。

 笑えねえよ?って頬に雫が光っている翔。

 死を咲うみたいに。

 そいつはこうなる運命だったんだろうと聞こえる。


「縛りのないルールで未成年と殺人鬼が戦ったらっつう。死闘を実現するデスマッチ。そいつは一度観戦してる」


 助手席からそう続いた。

 乗車が終わり潜水艦に乗るらしく夜の岸辺を歩いていた。

 厳重に同行されさざ波が映る。

 俺は見広げた。


「これが海」


「潜るんだから沢山見れるぞ」


 俺らは無人の潜水艦に乗り着き、狭い空間が深水する。

 ガラスの窓。銀の群れが見える。

 読んだままの絵がここに来てその中にいるのが、でも今は筋トレしてたのは戦う準備だった事。あの時は邪魔してごめんねと言った。

 椅子にもたれ寝息の混じった潜水艦、気軽に接する筈がこれしか出ず「シオン。俺は運命が嫌いだ。家柄も人生も嫌いなんだ」と翔は向き直した。


「兄貴は亡くなった、だから兄貴の役目が俺になっただけで結末は変わらない。弟は病院で死んだ、突っ立ったままの自分を呪った。医者になるって成績を上げて。でも形見は途切れて今日で終わりだ。笑ってくれ」


 翔から手錠の鎖が響いていった。 

 けれど疲労困憊。

 旋毛からは淋しく感じる。

 報われない世界にいるみたい。

 俺は自分の手錠を壊した。

 出来る事から始めようと鍵を渡した。

 翔の手錠が外れ、黒服がかせと鍵の二つを所持していた事を説明した俺は「物取りなんだ、地元じゃ豚に真珠…じゃねわ。玄人って言われてたんだ。まずは勝とう」と提案した。


「相手は大人だ」


「それがどうした?」


「…もし、敗北してしまったら?」


「困る。まず拠点作りから始めなくちゃならない。資金又は食料の調達が良い所を根城にしよう」


「…ん」


「構成人数は二人だけど名のある権力者を縛り上げるか葬って知名度を上げよう」


「知名度?」


「俺らで実力の証明と信頼を作り上げて依頼を受託できるまでにする。組織名は何がいい?」


「組織名、根城、葬る…もしかして組立ち上げようとしてる?」


「いやこの世界に来たばかりで組とかそういうの分からない、参謀になって助言を欲しい」


「一応医者所望なんだが」


「そりゃいい! 家族の傷が癒える!」


「待て家族ってか傷ってなんだ?」


「だから負けてもらっちゃ困る」


「マフィアだぞ?」


「知らない。けど今は都合がいい、これを機に身に付けよう」


「負けたら死ぬんだぞ?」


「強ければ選択は自由だしほいほい倒せる様に手厚く手助けするよ!」


「ほいほいて…夢、だろ」


「人って似たものに引き寄せられるだろ?」


「ああ」


「夢じゃないよ」


「…かもな。兄貴みたいだもんな、シオンって」


「ん。そうだ(首席の)血筋だし」


 言ってると潜水艦が揺れ出し「うおっ」と声を上げる俺に欠伸が重なった。

 壁に激突したメイミアがふらふらしてる頃、出入り口から「ようこそ。深海のコロシアムへ送られた戦士達よ」との声や小舟の浮く海岸部に潜水艦が停止。

 開いていた出入り口には老人と二人の黒服がおり暗い道が続いている。

 杖を使い「わしが」と奥へ進む老人に黒服は端に寄り、潜水艦から出る俺らは翔を前に進む。

 依然老人は前を向いて「わたくしはここ饗宴神楽きょうえんかぐらの案内人、法の外へようこそお越し下さりました」との事に「お変わりないようで」と謙虚の含む翔と、やつれた目を擦りつけるメイミア。老人からは「御幼少の頃から随分経ちましたね。可愛らしかった翔様が深海のコロシアムへ出場すると知った時は、心臓が張り裂ける思いでした。願わくば…違う形でお逢いしたかった」と慈しむ様に感じた。


「気に病まないで下さい。元々仕えていた貴方が責任を取らされてしまった事は知っています。仇の息子と思って下さい」


「いえ翔様に罪は御座いませんよ。なによりも翔様のお側に居られなかったのが無念でしたから……あの、そちらは?」


 突き当たりに差し掛かった、滑らかな鉄の扉。その中心部にある舵輪だりんを操作して、小刻みの線が浮く液晶に手を当てる老人から「二人は」と間を持った翔。


「物取りです」


「悪魔です」


 俺らが咄嗟に出た変な自己紹介を経て、取っ手を握る老人は柔らかく笑みを残していった。


「翔様は明るいご友人に恵まれたようですね。健闘を」


 ──どうか頼みますシオン様──

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