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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
四章 悪魔と危険な遊び
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生き写し

 校庭に鐘が鳴り出す。

 校舎の階段を上った廊下で「ニ年A組、B組」とぶら下がる木札を参考に教室を覗いていた俺は隣で賑わう生徒に「長めの髪で金髪の男の子を探していて、その子が何組か分かります?」と尋ねた。


「知ってますよ、C組に居ると思います」


 輪の中で強張るものを抑えて教えてくれた男子生徒に御礼を伝えた。


「はい!」


 親切な声に再度いい顔を振っていた俺はC組を覗く。

 配膳台で給食の準備をしている光景から、後ろの方で肘を付く所に忍び込んでいった。


「よ! 昨日ぶりだね」


 すると「なんで居んの?」と椅子が揺れる反動で机の中の紙が膝に降ってきたので、なんでって、何これってそのまま読んでいった。


「名前…水城翔。かけるって言うんだ。点数は。。満点⁉︎」


「返せ」


「…。」


 紙を掻っ攫う翔が机に戻し配膳に並ぶ後に付いて行く。

 その時間『まずメイミアを捕える化け物が居る件について』と思い出した。

 メイミアは「ばけ…私か弱いんだよ。それで一番お高い値段だったんだ!」とえぐくて反応しずらく「ずっとね、親の顔色伺う生活で父親は情緒不安定だし母親は他人みたいだった。でも子供ながらに愛されたかった、けど引き渡される時謝られた」との話で「…なんて?」と聞いた。


「産んだ後悔、それで運悪く会場で抗争勃発するし人質にされるで散々な結末ご臨終の薄い意識で、抱き締められたの」


「…」


「私はその人の温もりの中で死んだの。後から知ったんだ。その場に居た首謀者皆殺し、死因は窒息死って」


「おう…凄え因果応報」


「ふふ凄いんだよ。私のダークヒーローなんだ、大事な大事な思い出の宝物」


「…希望だけはあってよかった」


「うん、暗い人生が覆されたよ」


「…その後その人とはどうなって?」


 聞いていた頃にはかんざしを挿し直し、昔話しは終わった様に感じる。

 それが勿体ぶる笑顔を見せ付けられた、ひと吹きの間に秘密だよと言われ「ひ…秘密なら我慢し(何で我慢してんだよ)…そうだ、この辺に中学校は無いの!」とりんと立つ視野を上げると、首がよれている目の奥に不自然な姿が写っていた。


「……あるけど、田舎だから少し離れた」


「方向は?」


 メイミアは腕を伸ばし「あっちだけど、ちょっと! 魔力は駄目だってば」との出来事から、俺は空いていた席に給食を置き翔の席にくっ付ける。


「よし」


「よしじゃねえ、独りで食えや。そもそも生徒でもないお前がなんで学校入って来れんだよ」


「いいじゃん」


 他もこうやって食べてるし、俺はパンをかじった。

 鋭い目力でここは他校の関わりに厳しいし、学校に連絡されたら問題になるんじゃないかと言われるが、退学したよと答えた。


「中学生が退学になるかよ。親元に連絡来て困るのお前だろ」


 そう言われても想像が追い付かず完食した俺は食べないの?と聞いた。

 手を付けない給食が気になったんだが、お前が早過ぎんだよ‼︎と投げ出す机が壁に激突、ぶっ飛ぶ配膳を俺が確保してるとバックを持ち出す翔に教室中が凍てつく。

 所々に破けた学ランを肩に掛け「気が変わった」と椅子を蹴り押し金属が打つかる豪快ごうかいな音が鳴った教室で、教師はしかめて窓を向く。

 俺は教室を抜ける翔を追った。


「ゲームセンターとか行ってみたい」


「勝手に行け、俺は行く所があるしお前と居ると目立ってしょうがない」


「目立っ?」


 昨日の広場で目立っていたよと言ったら怒られそうで、ひとまず付いて行ったら分かった事があった。

 ジムとは、体を鍛える施設らしい。

 俺はダンベルで鍛える翔を見ていてそう思った。


「楽しそうな所を素通りして、よりにもよって筋トレかよ…これが翔の趣味?」


 熱心に腕を動かす光景から長い時が過ぎていくと「おい。お前なら何kg持ち上げられる」と翔。

 知らないが友達っぽい雰囲気に触れられた気がして目を配る。

 やったことないけど関心を活かせるなら何でも持てる。

 何がいい?と返事を待った。

 しかしその口が開くと同時に「お客様お時間です」との声。

 運が悪いんだか何だか、話題の失ったジムを出てから。通りすがりで同い年くらいの子が賑わう繁華街を抜けた、やけに古風な家に着く。

 ──なので。


「じゃあまた」


 数十分振りの口を開いていた頃には、距離感が増して、夕日に混ざる光景はアルタイルと同じ冴えない日常と大差はなく。


「時間あるなら上がってけよ。シオン」


 翔は玄関前でこちらを伺っていた。

 俺は鈍い目で家に招かれ中に入った。


「いらっしゃいませ‼︎‼︎」


 お出迎えかの家人達から腰の低い案内を受けた。

 お茶をもてなされた俺は御辞儀をし、そっと聞いた。


「翔って何者?」


「ただの家柄。昨日……そこの写真に見覚えあるか?」


 制服を脱ぐ片手間の翔が、黒い(ふち)の写真が二枚、花飾りのある所を言っている。

 ミグサと優斗君の遺影だった。


「通り魔に襲われた弟を双子の兄貴が身代りになった、傷が深かった弟は病院で息を引き取った」


「どうして俺に?」


「様子が変だったから話した」


「ところで、そこの服は何の…衣装? 模様っていうか、血っぽいけど」


「あれは兄貴が着てた特攻服らしい、で俺が族を継いだ」


「族って昨日のバイク? がうわーって来た、アレ?」


「……うわーって。まそうだよ、面倒事ばかりだ」


 ただでさえ家の影響で学校の推薦は取消されるし、踏んだり蹴ったり振り回されて…それでも。兄貴の形見だからとお茶をすする翔。

 思っていたよりこの世界は複雑らしいが、今日も行くの?と聞いていたら急遽に響く足音と共に外からエンジン音が聴こえてくる。


「昨日で最後だ」


 ふすまが開かれた。

 若。迎えが到着致しましたと整列する家人達。

 その道奥に影に覆われる人物が、灯りに照らされて来る。

 それは眼鏡をかける白く慎ましい服装、さわやかな短髪が額を出し、少々の髭がある男。

 エンジン音に気付いたのはこの白服の男の異質感で、たたみを踏み越える視線の先には翔がいた。


「水城翔さん。約束の時間ですが、人数が少ない。承った契約によれば、十七歳と十八歳の方とお連れする予定ですが」


「二人は昨晩…不慮の事故に遭って、来られないと思います」


 翔は白服に立ち上がって言った。

 白服は背筋を逸らし「そうなると」と「契約不成立になりましてご実家は潰されて悔いないと?」と顔を突き出した、よりは心を覗いている言動に「オイ」と俺は零れた。


「この私に殺気を向けるか」


「嫌なら帰れよ…」


「そのまま返しますが?」


「汚ねえ面で翔に寄んなよ」


 不快。

  不快。

   不快。


「なんて。失礼な人でしょう。冷嘲熱罵な行いでこの家は無残にも散ってしまいそうになる」


 白服はミグサの実家を潰せると挑発してる。

 けど原因は不明。

 でもそんなのいい。

 やっと喋ってくれる仲になれて、スゲー嬉しいのに。

 なんで、邪魔ばかり。

 気付けば歩んでいた。

 翔にそれ以上家の問題に立ち入らないでくれと止められ、直後家が軋んで揺れ出す。

 白服の魔力の影響だった。


「ですから人数が足りていない。念のため申し上げますが成人した方は選出致しかねますので」


「承知しています、一方的な残虐を目的としたことも」


 翔が言うと鼻で咲う白服。

 殺気立つ魔力が家内の花瓶を砕きこの場の人々に促す。


語弊ごへいがありますよ。世界中の資産家のため、そして貴方のブランド力を評価された言わば。選ばれたのですよ、戦士として」


「ええ、この身一つでこの場を収めて頂けると自負しています」


「…ほう。賢い子だ。本来貴方が逃げないよう他の二人は人質みたいなもの。特段価値無し埋め合わせは用意している。行きましょう」


 関心する白服に黒服達の合流。

 翔と共に家人達を通り、足音の逆流が重なる。


「いつまで帰って来ないつもりなのよ!」


 ぶっ倒れた白服の姿が見える。

 家内を絶望感に駆り立てたメイミアが蒼白していた。

 俺は「ねえ、白いおっさん」と今までのやり取りを確認する。


「あの高飛車たかびしゃが…今度は何ですか!」


「契約が三人って言ってたよね?」


「そうです、三人ですよ」


「よかった。これで人質になれるよ、ありがとメイミア」


 途端にメイミアが口を開く。

 白服も口を開ける、よりも先に「コイツは観客の前で戦わせ、一方的な残虐で金儲けするマフィアなんだぞ。出場者はみな殺される、来るんじゃねえ」と黒服達に抗い隙間を広げる翔の強調、その暴れっぷりを一瞥いちべつしドスのある発声が響く。


「黙らせろ……青髪の子よ。こっちは商売でやってる分富豪の連中に価値が付かない餓鬼はお断りだ」


 ネクタイを緩め眼鏡を外す、間にいるメイミアは交互に伺った。


「ん?」


「しかし。口封じには好都合、感謝してくれ。けして踏み込めない無法の道楽に送られる私を」


 語り癖に感情がたかぶった多幸福の白服に「あの、何のお話をうおうおっ?」とのメイミアと俺は黒服達に囲まれ車に乗った。

 隣には「なんで」と憤りの翔。

 発車した車内でメイミアに「は?」と手錠姿を強調された。

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