↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶戦術  作者: 神崎蒼葉
四章 悪魔と危険な遊び

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/122

浴衣

 見知らぬものとすれ違いあの本で読んだ文化に似ていた。

 スーパーという店で日用品を巡り、お線香やライター、食材をレジに通す。


「袋はお付けしますか?」


「はい、お願いします」


 メイミアの愛想のよい一面を見て、軽く会釈《えしゃく》して受け取った。


◇◇◇


 なだらかな坂や石段、橋を渡る。

 びっしょりの衣服で進む木漏れ日の道で、表札をぼーっと読み上げていった。


「…如月《きさらぎ》さん」


 メイミアは一軒家の玄関を開ける。

 敷居を跨《また》ぐとリビングの窓を開け「猛暑だね、適当に寛《くつろ》いでね」と家の事を始めているので袋はテーブルに置いた。

 風鈴が響いたリビングでクッションに座る俺は、髪を結き掃除する様子を見て、窓際に移り夕暮れになる。

 うたた寝中、そうめん茹でたから食べよと呼び声が掛かって、氷の入ったつゆのグラスや白い糸の束が並ぶテーブルに座った。

 食べると涼しい気分になる不思議なひとときに「今日」と囁かれる。


「お祭りやってるよ」


「ミグサが言ってた娯楽?」


「うん、この後行こうよ…」


 そうめんを摘むメイミアの箸が止まっていて、いいよ?って、言ったら「準備してくる!」とリビングに響いた。


「ハイ!」


 かんざしの羽が揺れるメイミアから衣服を受け、着替える。

 夜道を進み太鼓の響きに連なって、賑やかな人集りがあった。

 お祭り──。水風船で遊ぶメイミアと「次は金魚すくい…輪投げ…射的」と聞きながら花火を見る。

 冷たい水にポイを沈め、群れを狙いバシャバシャと輝く。


「おおっ上手いなお嬢ちゃん」


「えっ待ってそんなのあり? 破けないじゃん!」


 破けたポイを持つメイミア。

 俺は薄い紙をベールで包み数の勝負で勝った。

 器を店主に渡すと、おじちゃんもう一回…と俺らより先に居た男の子の地面に紙の残骸《ざんがい》があった。店主は金魚を袋に移しよしときなよと口ずさむ。

 男の子が見つめている器は水で一杯。


「でも…」


 言葉は袋を貰う距離にも届かない程小さい。

 俺は袋で泳ぐ金魚を見つめる。

 花火や太鼓の音より「金魚が欲しい」という言葉を、ずっと続けていたのか。

 俺は袋を差し出す。

 男の子はそれを持って無邪気に走っていった。

 ありがとうって言われた。

 その時、おじちゃんもう一回!と耳を貫く。


「このお嬢ちゃんは群れをすくう天才だよ」


「私に負けの二字はないから早くそのポイ大量に持ってきて!」


「お、おう」


 その白熱を見て、癒された心が穢れていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。