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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
四章 悪魔と危険な遊び
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浴衣

 風景や見知らぬものとすれ違いあの本で読んだ文化と似てる。

 スーパーという店で日用品を巡り、お線香やライターと食材?をレジに通していた。


「袋はお付けしますか?」


「はい、お願いします」


 メイミアの愛想のよい一面を見て、軽く会釈えしゃくして受け取った。


◇◇◇


 なだらかな坂や石段、橋を渡る。

 びっしょりの衣服で進む木漏れ日の細道で、表札をぼーっと読み上げていった。


「…如月きさらぎさん」


 メイミアは一軒家の玄関におもむき鍵を開ける。


「どうぞ!」


 敷居をまたぐとリビングに行き、窓を開け「猛暑だね、適当にくつろいでね」と家の事を始めているので袋はテーブルに置いた。

 風鈴が響いたリビングでクッションに座る俺は、髪を結いて掃除する様子に何となく、窓際に移り夕暮れになる。

 沸騰が聴こえるうたた寝中、そうめん茹でたから食べよと呼び声が掛かって、氷の入ったつゆのグラスや白い糸の束が並ぶ。

 俺は美味しいと伝えていた。

 涼しい気分になる不思議なひとときに「よかった」と囁くメイミアは今日お祭りやってるんだよって俯いた。


「ミグサが言ってた娯楽?」


「うん、この後行こうよ…」


 いいよと言うはずが、そうめんを摘む箸が止まっていて気になる。

 俺はいいけど?って、そう言ってると「準備してくる!」と声が響いたリビングで一人になった。

 食器を洗いクッションを枕にしていた俺はハイ!と浴衣姿が映る。

 かんざしの羽が揺れるメイミアから衣服を受け、着替えた。

 夜道を進み太鼓の響きに連なって、賑やかな人集りがあった。

 お祭り──。水風船で遊ぶメイミアと紺桔梗こんききょうの空を眺め「次何しようか、っあ! 金魚すくい…輪投げか…射的とか」と聞き、赤っぽく橙っぽい提灯が垂れる風景と花火が彩る。

 メイミアとバシャンと鳴らす冷たい水にポイを沈め、泳ぐ群れを狙いバシャバシャと輝く反応が聞こえた。


「おおっ‼︎ 上手いなお嬢ちゃん」


「えっ待ってズルくない? そんなのあり? 破けないじゃん!」


 破けたポイを持つメイミア。

 俺は薄い紙をベールで包み数の勝負で勝った。

 器を店主に渡すと、おじちゃんもう一回…と俺らより先に居た男の子の地面に紙の残骸ざんがいがあった。店主は金魚を袋に移しよしときなよと口ずさむ。

 男の子が見つめている器は水で一杯。


「でも…」


 呟いた言葉は袋を貰う距離にも届かない程小さい。

 俺は袋で泳ぐ金魚を見つめる。

 花火の音、太鼓の音より「金魚が欲しい」という言葉を、ずっと続けていたのか。

 俺は袋を男の子に差し出す。

 真剣に挑む姿勢にお節介かもしれないが、男の子は無邪気に走っていった。

 ありがとうって言われた。

 遅れておじちゃんもう一回‼︎と耳を貫いた。


「このお嬢ちゃんは群れをすくう天才だよ」


「私に負けの二字はないから早くそのポイ大量に持ってきて‼︎」


「お、おう」


 その白熱を見て、癒された心が穢れていく。

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