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ある追憶の戦術使い  作者: 神崎蒼葉
アグノスワールド
105/109

引取人

 安らかに息を引き取る歓喜天。

 祝福かの光がアルタイル東を照らす。

 豪快な装飾をまとい歓喜天を抱えるラー。

 粉末を上げ天使達の待機する大地へ降り「歓喜天は我々が引き取る」とゼウスを仰ぐ。

 我々というのは堕天を迎える使命としてルシフェルの元に顕現するユダを含め「「なんの真似だ?」」とアルテミスにアレス。

 対して「何度でも言おう。仲間の生き様を引き取りに来た」とのラーに「ならば領域文明を追放される覚悟あってか?」とアルテミス。

 追放とは機密指名手配に加担したラーにより、文明の信用や安全性剥奪を辿る正式な処分。

 領域文明と支え合う莫大な軍事力の損失ながら「あいにく、文明とは侵略の抑止。我々と共に生きた結果が抑止に利用とあらば、論外」と揺るがないラーに「それに恒星領域行けるの俺らしか居ないしな」とアレイオン。政策や貿易等フィナに相談する道すがらシグラを治癒して抱える所にワルプルギスは顕現した。


「この子をシヴァの所へ」


「シヴァって、ま?」


 機密指名手配シグラ、シヴァ一派。

 まるでお嬢様を抱く感覚でそうよぎるワルプルギス。

 霞んだ視界に青い髪を映し「あなたが、親父がいっていた…」とシグラは口を開いた。

 我々の大将だった人とシグラは思うまで意識が回復していた。


「シオンだ。よろしく」


 爽やかに応えると「待て、俺はシヴァに会ったことない。なんて言えばいい?」とワルプルギス。


「家族を送り届けに来たでいいんじゃないか?」


「本当か? シヴァっつたら暴れたら手に負えないで有名だぞ」


「…あ、ああ」


 アレイオンはそう言って頭に流れる。

 遠い日の様で若頭の頃からニ代目、三代目と強烈な思い出の中「したら、変わるか?」と提案。

 ゼウス、アレス、アルテミス、天使達を映すワルプルギスは拒絶反応が現れた。


「嫌すぎるわ!」


 そんな返事に「頼んだよ!」とアレイオン。

 ユダは「そうだ」と酒を投げて「シヴァの好きなやつ。渡してくれ」と続けた。

 シグラはその酒を手に「他。話見上げないのか?」とワルプルギス。


「ねえな。けど愚冴との交友は大きいんじゃねえか? 身内としてシヴァも、ましてひ孫の面倒見てくれたって感じだろう」


「ひ孫なの? だから凛界乗り込むは雷霆止めるはやんちゃだったのか」


「シヴァ譲りって所だ。身体能力抜群だから…な。苦労…した」


 ため息を吐くユダ。

 会話を聞いていたラーはきょとんと零した。


「そんなことは無かったぞ? 愛情表現で良かったではないか」


「お前だけ頑丈過ぎんだよ」


 何故か俺だけ共感できない。ラーはユダの一喝にそう耽る。

 怪力且つ鈍感なラーは戦闘不能になるまで戦い、体力を気にしない大らかなタイプだと、アレイオンが察した所に「それがお前の答えか?」と歯冠を噛むゼウス。


「はい。ミグサを捕る人皆、敵とみなします」


「同じ時を繰り返すか」


「いいえ、ただ今は」


 アレスは光をまとう。

 それはシグラから内密に場所を聞き転移したワルプルギスの追跡をする企みであり、アレスの目にはブロックの様に断切する上空がバラバラと落ちてくる。


「…アレス。ワルプルギスを追うならば、俺も、歓喜天の意志を守れそうにない」


「…。」


 静まるアレス。

 十羅刹女アレイオンの尊厳に息を飲んだ。


「アルテミスも、どうかこの場を収めて頂ける器の広い方とお見受けしてお願い申し上げます」


「よい。ただし我が文明がシヴァに侵略される事があれば、その身を呈して援軍になると誓え」


「承ります」


 すぅと吐くアレイオンは尊厳を解いて「それに叔父様。ミグサは強いよ」とゼウスを見上げる。

 続いてラー。ルシフェルと共にアルタイルから消失するユダ。

 アルタイルはゼウスの意向に修復作業へ移る。

 天使達総動員でより頑丈に修復した。

 何故機密指名手配達をゼウスは逃したかは、領域文明の要請で消滅の許可が下ってしまった事。

 善の権限所持として、レリアスは同盟を拒んだ様に、無関係な領域文明の住人がいるにも関わらず、消滅の許可が下りた時点で同盟は手の上で転がされていた。

 ようやりおるとゼウスは鼻で笑う。

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