天才厨二病な婚約者とボクっ子王子の馴れ初め
理系な悪役令嬢物が描きたかった
このミクラン皇国において、リン・ハワードの名を知らない者はいない…
というのは彼女はハワード公爵家次女として生を受けてから僅か12年という短い歳月で理論魔法学に魔法エネルギー論という革命をもたらした天才少女だからである…。
これはそんな彼女の13歳の時の話。
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「なんで…なんでなの!!天才の私に限ってそんな筈ないわッ!この私の開発した『マジック レフト』が発動しないなんて!?」
そんなことを言いながらこのミクラン皇国皇太子であるアル王子(12)に向けて自らの左手に装着した自称マジックレフトを目が飛び出さんばかりに見つめている天才少女リン(13)は非常に残念なことに、思春期特有の男子が発症するあの病にかかってしまっていた…。
そもそもリンは幼い頃に魔法が使えないと診断され、強い…あまりにも強すぎる魔法使いたい欲求をなんとか満たす為に数多ある魔法学の中でも最強レベルのSSランク魔法の使い手しか門を叩くのを許されない理論魔法学を可愛い娘の誘惑という必殺技で押しとおり、実際成果を出してしまったのだ。
しかし天才と世間がもてはやしても、魔法の使えないリンはやはり魔法使いたい欲を抑えられないのか…理論的に本来生物にしか宿らないはずの魔法エネルギーを道具に与えて使おうとしたのだ。そこで、その試験として、この世に数人しかいないとされる自己自然治癒魔法を先天的に持ち、しかもリンの婚約者であるかわいそうなアル王子が選ばれたのだった
「リンさん、そろそろやめませんか?あなたが魔法を使いたいのは普段の(イタイ)言動からして分かってはいるのですが、生まれてから1度も使えていないのでしょう?それにそもそもあなたにはその圧倒的な魔法理論の才能があるじゃないですか?あなたの論文は世界を変えられるんですよ!
それを使えばいくらでも出世できるのに何故ありもしない魔法を道具に与える実験なんかの為に僕がこんなわけもわからない道具達の実験台になってるんですか?!」
リンの周りには既に壊れたり煙を噴いたりしている
失敗作…もといガラクタの山が転がっている。そのいくつかは爆発によって本気で彼が死にかけた道具がいくつもある…。彼にとって婚約者は愛しい存在だが同時に恐怖でもあった。
「あら、アルには分からないのね!この発明の1つ1つが私の成功の鍵となっている!それに私は魔法が使えないわけではないわ。だって私にはこの赤く輝くような隻眼からいつも私の成功する未来を見てるんだもの!」
呆れるしかない。こんな実験を続けたらほぼ不死身の彼でも耐えられなくなるのはなんとなく分かった。そこで彼はいつかリンに使おうと思っていた禁断の必殺技を使うことにした…。
「そういえば僕、最近ナタリー姉さんのお世話になってるんです。いつもあなたの実験のせいでボロボロになる自分の精神を休める為にね」
そう彼が皮肉っぽく言った瞬間リンは肩を縮めた。魔法理論の知識以外リンにとっては姉のナタリーは手の届かないような場所にいる存在なのだ。魔法理論一辺倒のリンと違って、彼女はありとあらゆる面で妹のリンに勝っている。スポーツや性格は勿論、魔法も使えるし、勉学はほぼ国内一位を独占する才女だった。
挙句、密かに想いを寄せているアル王子が姉の所に通っているなんて…彼女にとってはとても辛いことだろう。
「な…なぜそんなことを言うのです?私はあなたが別の女性の元へフラフラと行くのは婚約者として見過ごせません…。」
半分涙目のリンはもはやいつもの厨二くさいガキのような発言すら忘れて素で喋っている。それを見てこの人はどうして素直になれないのだろうと彼は思ったが同時にそんなリンのことがますます愛おしくなるのだった。しかしここで折れて情けをかけるとまた調子に乗ってあの意味もわからない実験に付き合わされるだろう…。それをとめる為に彼はさらに追い討ちをかけるような言葉をかけなければならない!
「はぁ、リンさん。僕はあなたの実験に付き合わされて身も心もボロボロなんですよ。それにあなたよりナタリー姉さんの方が優しいし、落ち着くんですよ。そもそもこんな実験で婚約者ボロボロにする令嬢なんていません!いっそ婚約破棄してしまいましょうか?」
「……ッ!」
その言葉を聴いてリンの表情は一瞬で青ざめた。
(T . T)こんな感じで黙ってただ涙を流し続けている婚約者に彼は流石に言いすぎたと思い結局折れて
「すいません、今のは冗談ですよ!だから安心して下さい!『ぐすっ…ずびっ……』あぁ頼むから泣き止んでください…あなたのことこんなに好きなんだから…って、あっ!」『ぐすっ………えっ?』
なんとか婚約者を宥めようと必死になって漏れてしまった彼の本音を聞き、リンは驚いて目を見はった。
彼は自分の言ってしまった言葉で既に真っ赤になっている。それは隣で先ほどまで泣いていたリンも一緒で、既に涙は衝撃で引っこみかわりに可愛らしい顔は嬉し涙やら恥ずかしさやらでぐしゃぐしゃだった。
「…ッ!リンさん!」
「(ぽ〜//…はっ!)はい!」
ボーッとして返事が遅れてしまったリンに彼は
「今の言葉は忘れて下さい…」
ただのヘタレ発言だった…。
そして彼はガラクタの山から逃げていくのだった。
「……えっ?」
あまりに突然のことにリンはついていけず、ただボーッとしたままだった。この後、リンはガラクタの山の中に一日中引き籠り続けて両親を心配させたのだった。
これ以降アル王子と公爵令嬢リンの関係が全ての人に明確になったが、両者ともヘタレすぎて全くお互い好きであることを認めなかったので結局、彼女の家族や親戚、アルの父である王やその家令総出の後押しで半ば無理矢理両者とも好き合っていることを認めたのだが、これがなんと、結婚した18歳を過ぎてさらに2年経った後だったので、以降ミクラン皇国では[厨二病な天才公爵とヘタレボクっ子王子の恋愛]という名目で笑い話として広く世間に行き渡って彼らに一生ものの黒歴史を植え付けたとかしないとか…。
ここまで読んでくださり
ありがとうございます!( ´ ▽ ` )
初投稿なので文章は読むに耐えない物だったと思いますが読んでくださった方、本当に感謝です!ぜひ感想や意見があったら気軽に書いてください!