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銀杏  作者: 風忍
6/6

おわり



 太陽照り付ける真夏の空。

葉桜が並んだ道。緑葉をつけた大きなイチョウが日陰を落としている。

 「今日の試合は木下公園記念球場からお送りいたします。」

 大きな球場と高いフェンスに囲まれた公園が隣接している。

 しばらくぶりのこの姿はやはり気持ちがいい。

 球場のライト側応援席。隣には木塚シュンが、その周辺にはあの頃の面影が残った顔が並んでいる。

 私が休んでいる間にずいぶんと時間は経ったのね。


 九回裏 二アウト 満塁 興奮してきてメガホンを持つ手に力が入る。思わず隣の席を叩いてしまった。

「あっ。申し訳あり・・・。」

―こんなに満員なのに隣の席、空いてる―

 「四番 サード 水村 鷹」

 ―そんなの考えてる場合じゃなかった―

 大きな歓声が球場に響く。

 「タカー」

久しぶりに声が枯れるほどの声を出して叫んだ。


 ものすごいチャンス。でもなぜかいつもより緊張が少ない。心が軽い。皆が来ているからかな?

 ただ無心に振った。弾けるような高い音。

球場に割れるような音が木霊する。

白球がスタンドまで大きな放物線を描いた。


いつもよりゆっくりとダイアモンドを走る。

ライト側。そこにいる友達に向けて大きくガッツポーズをする。


―あの頃の空振りが嘘のようだね―


「あっ」


皆が同じ方向を見る。


隣に空いた席。


昔と変わらない人が微笑んでいた。



球場の隣の公園。

 

 二人の少年がキャッチボールをしていた。

「ねぇ。」

 突然掛けられた声。

「一緒に野球しない?」



5編超えてしまいました・・・。

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