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銀杏  作者: 風忍
5/6

おもいで


―ここ三十年程だろうか。公園に来る人が思いきり減ったのは。公園に来てもなぜか手元で機械をいじっている。私達が入る隙間はない。

昔は皆走り回っていた。

あれはコマといったかな?

一緒に遊びたくて一生懸命練習したら公園で一番うまくなってしまって大変だったな。

ドッチボールも皆よくしていた。思いきり投げたボールがよく緑のフェンスに当たって大きい音をたてていた。鬼ごっこで転んでしまった子をあの水道で何度も見てあげた。

秋にはイチョウの葉の黄色い絨毯をかき集めて、舞い上げて、人のT―シャツの中に投げ入れる悪戯っ子も大勢いた。

そして野球をする子もたくさんいた。思いきり飛ばした打球が何度もイチョウの木の長老様にぶつかり銀杏の実を落とすこととなっていた。

公園に来るのは子供の時位だ。一人。一人と大人になって来なくなる。でもまた新しい子供たちが通い始める。

そんな子供達を守るだけじゃなくて一緒に遊びたいと願った日から人の姿になれるようになった。

私はなんだろう?

人の言うお化けかもしれない。

必要がないからなのか大人には見えない。

水たまりには映るけど写真や鏡には私は映らない。

最近は子供達の間に入る隙間はないからこの姿になることはなかった。

そんな時に出会った二人の少年。隣にいるのに一人ずつ別々に壁当てをしているのが可笑しくて、久しぶりの野球に胸が躍って思わず声をかけてしまった。

最近は無くなる仲間が増えていた。私達の必要性はもうあまりないのかも知れないと考え始めていた。

壊されると言われてそれは哀しかったけど、でも覚悟は決めていた。

まさか助けてくれるなんてなぁ・・・

でもイチョウの長老様の言うことは無視しちゃだめだったんだな。

「最近のこの世の空気は我等を蝕む。昔とは違うのだ。あの姿になるような無理をしたらお主がどうなるか・・・」

それでも野球がしたくなっちゃって、止められなくて。いつの間に限界になっちゃった。しばらくは休まなきゃダメだって。

あぁ別に死んじゃうわけじゃないんだけど、人の姿になれないだけでさ

後悔はしてないよ。

とても楽しかったし、みんなすごくうまいんだもん。

だから心配しないでね。

ちょっと遊び疲れちゃっただけだから―


ありがとう


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