ハジマリノクルシミ
この世界なんて、この世界なんてなんて残酷なのだろう。
俺は、ここに住む普通の高校一年生。名前は夜神幸一。今は学校に登校中だ。ごく普通の楽しい学校生活。
「おはよう、幸一。」
「おはよう。」
俺は後ろから声かけられたクラスの人に挨拶を返す。俺はクラスの中心人物ではなかったが、みんなは優しく接してくれたから。俺は思う。
なんてこの世界は楽しいのだろう。
教室の中に入った俺は、鞄の中から教科書を取り出す。置き勉はしてない。あ、でも雨がひどい時はすることもあるけど。教科書を引き出しの中に入れた後は、周りの人と他愛ない世間話をする。この時もまた楽しい。話したいことはいくらである。
ホームルームの時間が来た。まだ、話したいことがたくさんあるのに。いつもの通り挨拶、出席確認、そして短い話だ。あーあ、早く終わらないかな。と、思った時、
「今日は転校生がいます。」
え?、聞いてないんだけど。クラスのみんなも俺と同じだったのか、ざわざわとする。なんで今まで話さなかったの?
「えー、男子です。では、京介君入ってきて。」
そう言って入ってきたのは顔立ちが良く、爽やかな目をしたイケメンが入ってきた。
「みなさん、初めまして。上崎京介です。よろしくお願いします。」
とても軽く明るい声で挨拶した。こいつはクラスの中心人物になるな~。俺も話せるかな?
この時、俺は気づかなかった。こいつが俺の人生に大きく影響をあたえることになることを。俺の生活が大きく変わることを。
京介はクラスの人一人一人に
「こんにちは、初めまして。僕は京介です。君の名前を教えてくれる?」
こんな感じで話していた。俺にも来た。
「こんにちは、君は誰?」
「俺は幸一。これからよろしくお願いします。」
「よろしく。」
その時、京介の唇がかすかに上がったのを俺は気づかなかった。
それから一週間は今までとは変わらなかった。俺の予想通り、京介はあっという間にクラスに馴染み、中心的存在になっていた。
しかし、一週間後に俺に事件が起きた。俺は数学の授業を受けていた。二次関数とかわかりません!頭を抱えていた時、
「うぐぅ!」
背中に痛みを感じた。何事かと後ろを振り返ると、そこにはシャーペンを持った後ろに人がいた。いや、シャーペンをコネコネするなよ。何かの悪ふざけかと思って見過ごしていたが、この後ずっと刺され続けた。理由を聞くと、
「お前って何やっても怒らないよね。じゃあ、ちょっとだけ刺してもいいよね。」
いいわけないだろ!そう思ったが、何も言わなかった。
その日から俺の人生は変わった。靴を隠されたり、机の上に落書きされたりするのは日課になっていた。たまに、ひどく殴られもした。俺は助けを求めたりもした。しかし、誰も助けてくれなかった。俺は何もできずにただあがいていた。
なんでこの俺がこういう目に遭うの?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?な
んで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?
しかし、気づいたことがある。この暴行の首謀者が京介ということがわかった。
あ、あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、
あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、あいつが、
絶対に許すものか!ぜ、絶対に殺してやる!!
俺は気づいたら殺意が目覚めていた。アイツを殺せば絶対にまた楽しい生活に戻る!
ある日俺は夜の学校に呼ばれていた。どうせ京介が呼んだのだろう。でも、行かないと明日何をされるか分からない。とりあえず、行くだけ行ってみた。行った場所は学校の屋上。
「よお、来たか、ドブネズミ。」
屋上にいたのはクラスの人二人と京介だった。俺はこの時点でドブネズミと呼ばれるようになっていた。なんでこの俺が人間のような扱いを受けないの?
ここで、ここであいつを殺してやる!俺はポケットにナイフをあることを確かめた。
「よぉ、幸一。今日はだな、決闘をしようと思うんだ。」
京介が言った。決闘……
「おっと、逃げるんじゃねぇぞ。ルールは簡単。俺ら三人とお前で戦うんだ。武器の使用もあり。」
一人と三人で戦うのか。でも、武器の使用もありだったら今、ポケットに入っている物も使っていいはず。
「よっし、それじゃあ、決闘スタート!」
そう言って、京介の取り巻きその一が殴ってきた。その一撃は重く、口の中に血が出てきた。続いて後ろに強い衝撃と痛みを感じた。振り返ると、金属バットを持った取り巻きその二がいた。俺は痛みに耐えられず、その場にしゃがんでしまった。
「お前ら、手を掴んでおけ。」
すると、二人が俺の手首を掴んだ。そして京介がボディタッチをしていく。危険物がないのか検査しているのか。
「何かこのポケットあるぞ。」
そうしてナイフが見つかってしまった。
「おっ、こんなものが見つかった。幸一君、こんなものは危険じゃないか。ちょっと試してみようか。」
その時、胸に激しい痛みが通った。それと同時に温かい液体が周りに広がっていく感触がある。視界は 段々暗く霞んでいき、耳が遠くなっていく。
「おいおい、もうこんなとこで終わりか。
「まだまだ遊び足りねぇんだよ。」
二人が俺を蹴っているのは分かる。しかし、その痛みを感じなくなっていた。
ああ、俺は死ぬんだな
泣くようなことはなかった。俺の中にあるのは激しい憎悪。
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、
ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、
俺は消えて逝きながらあること感じていた。
この世界なんて、この世界なんてなんて残酷なのだろう。