9. ナイスガイ
剣道経験は、全くないため
間違ったことを書いてしまっている場合は、教えてくださると嬉しいです。
「ただいま」
百合は、鍵を鍵穴に差し込み回してドアを開けた。
懐かしい...
ここを出て、そんなに経っていないのに、家にあるものすべてが懐かしく思える。
ふと机の上を見ると、置き手紙らしきメモが置いてあった。
『お父ちゃんは海にでてます。お母ちゃんも船あげるの手伝うので一緒に行きます。ちょっとしたら帰ります。』
家の中には誰もいないようだ。
百合は一人っ子のため、こうして両親が家にいないときは、小さい頃からやっている剣道の練習をしていた。
百合のお気に入りの竹刀は、「ナイスガイ」と名付けられ、現在は二代目を使用している。
ちょっと、練習しよっかな
手作りの竹刀袋からナイスガイを取り出し、さっとふる。
うん、いい調子
剣道は、相手の動きを感じ取り、どうでるかが鍵となる。
百合は剣道部で、目立って上手いわけではなかったが、島で養われた視力と聴力には自信があった。
誰もいない家に、今では珍しい風鈴の音と、竹刀をふる音が聞こえる。
しゅっしゅっしゅっ チリン ....がたっ
ん?
家に誰もいないにしては不自然な音だ。何かが落ちた音ではなく、何かが動いた音。
誰かいる...?
夏だというのに、冷たい汗が流れる。
ナイスガイを握りしめて、音が立たないように廊下を移動する。
泥棒...じゃないよね?
田舎というのは平和なもので、島のほとんどの人は、出かけても家に鍵などかけない。しかし不思議と、盗難事件などは一回も起こったことがないと聞く。
西島一家は用心のため、鍵かけを徹底しているのだが、ほとんどの無意味に等しかった。
しかし、だとしたらなおさらおかしな話である。泥棒は、どうやって家に入ったのだろうか。
一つ一つ部屋を見て回り、残すは物置として使われている部屋のみとなった。
中は、使わない服のつまった段ボールが敷き詰められている。
まさかここには、いないよね
とは思いつつ、ドアをゆっくりと開ける。しかし、百合の予想は盛大に外れた。中には、たくさんの段ボールではなく、一人の男が後ろを向いて座っていた。
その距離、1メートル。
「きゃあああああああああ!!!!」
叫ばずにはいられなかった。
「うわあああああああああ!!!!」
男も振り向き、百合の声に反応する。
誰だこいつっ
「がこんっ!」
ナイスガイが下に平行移動し、痛々しい音が響いた。