5. memory loss
確認はしていますが、この部分がおかしいとか、表現直したらいいなどのありましたら、教えてくださると嬉しいです!
「ごちそうさまでした。美味しかったです。」
食事を済ませたらしい少年は、手を合わせて、百合に言った。
改めて聞くと、少年はなかなかいい声の持ち主であった。少し幼さを残しつつも芯があって、よく響く。そんな透き通った声だ。
「それで...」
少年は続ける。
「ここはどこなんでしょう...。僕はなぜここに?」
少年の言葉に百合は違和感を覚えた。
「僕はなぜここに」という部分は少々おかしい。普通に考えて、少年がここにいるのは少なからず少年の意思があってのことのはずだ。
「あと、僕は誰なんでしょう」
その一言が、百合の頭の中のごちゃごちゃを一気に吹き飛ばした。
違和感などではない。少々どころではない。明らかに、おかしいのである。
自分が誰かなんて自分が一番よく知っていて、もちろんそれは、他人に聞く事ではない。
この人頭大丈夫か...?
そう考えられずにはいられなかった。だが、もちろん少年はふざけているわけでも、頭がおかしいわけでもなかった。大真面目なのである。
「と、とりあえず、立てる?」
百合はカラカラに乾いた喉を震わせ、なんとか声を出した。
少年はコクンと頷くと、膝に手を置き、立ち上がる動作をしたが、数十分前のように激しい音をたてて、後ろに倒れてしまった。意識はない。
少年の「体は大丈夫」というのはどうやら、お腹が空きすぎてそちらにばかり意識がいってしまい、痛みなどその他を含めてあまり感じなかったということらしい。
なにもともあれ、百合は生まれてはじめて119番に電話をかけることとなった。