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外伝② 水辺の王子

 ジュアは狩を生業をして生活する水辺の部族長の長子である。彼は今日も部族の若者を連れ狩りを行っていた。

「右! 回り込んで包囲しろ!川下の窪みに獲物を追い込め!」

 ジュアの的確な指示により、獲物が次々と若者の手により捕らえられていく。

「よし! 戦果は十分だ」

「引き上げるぞ!深追いはするな!」

 今日の狩りも十分な成果を上げると、ジュアは部族の若者とともに水辺の砦に帰っていった。


 水辺の一族はゾンネ川の下流にある湿地帯に砦を築いていた。ゾンネ川はシャムス王国の南西に流れる大河である。水辺の一族は王国の人間からは身を隠すようにひっそりと生活していた。

 王国からは完全に独立し狩りのみで生計を立てる彼らは、種族の力なのか泳ぎが達者なものが多く、水中で狩りを行うことが多かった。

 多産であるこの部族は、長を血縁ではなくもっとも狩りの得意な者から選んだ。部族長の長子たるジュアは一族の中でもっとも力があり、狩の能力にも天賦の才があった。彼がいる限り水辺の部族は安泰だろうと絶大な信頼を寄せられていた。


 狩から帰ると、砦ではささやかな祝いの宴が行われた。ジュア達が捕らえた成果を、老いたものも幼いものも訳隔てなく口に入れることが出来た。狩りの後の宴こそ、部族のものにとって、もっとも幸せな瞬間である。ジュアも若者達と談笑し、狩りの疲れを癒しながら食事を楽しんでいると、父親である部族長に呼び出された。


「ジュアよ聞いているか?」

「父上、何の事でございましょう?」

「王国では何人もの者が国家反逆罪により処刑されていると聞く、いったい何があったのだろう?」

 長は物憂げにため息をついた。

「そのことでしたか、私も詳しくは分かりません……ですが、これは国が荒れる兆しのようなものだと思われます」

「うむ………わが部族にも災いが及ぼさなければよいが」

「その点は大丈夫なのではないでしょうか。我々は王国から完全に独立しており国交もありません、危害が及ぶ事はないものと思われます」


 父を安心させようとジュアは努めて明るい声で答えた。


「そうか……だがくれぐれも気をつけてくれ、最近この辺で王国の人間を見かけたそうだ、お前にもしものことがあっては困る。部族を守っていけるのはお前だけなのだからな」

「はっ、肝に銘じておきます」

 成長した息子に満足げに目を細める長に笑顔で答えると、ジュアは一礼して立ち去った。


 数日後、ジュアは再び若者を連れ狩りに出発した。今日も王国では国家反逆罪での処刑が行われるといういやな噂を耳にしたが、皆、どこ吹く風だ。ジュアは狩りも達者なら泳ぎも達者であり部族でもっとも早く泳げる。巧みな泳法により自分の体程の大きさの魚を追い立てていく。いよいよ捕獲と言う時にジョアの体に衝撃が走った……

(何事っ!)

 思うまもなくジュアの体は強烈な力により上に持ち上げられていく

(しまった敵の罠だ!)

 気づいた時はすでに手遅れだった。ジュアは太い網に絡まれながら意識を失ったのであった。





(ここはどこだ?)

 ジュアが気が付くとそこには見慣れぬ景色が広がっていた。とても暑く、グツグツ、トントンと聞きなれない音が聞こえている。

(しまった王国の人間だ!)

 目の前に鋭利な刃物を手にした王国の人間が立っている、あわてて逃げようとしたが巨大な手に体をつかまれ、必死にもがいても強力な力でつかまれているために脱出できない。

「ずいぶん元気なカエルね~、ご主人様に出すわけにいかないから、これはワンちゃんのご馳走ね」

「は………離せ~!!!」

 所詮は人とカエル、互いの言葉が通じる訳もなくジュアのあまりにも短い生涯は幕を下ろす事になった。


 いや……ジュアはきっと生き続けるのであろう


 ソルの体の中で、ソルと共に



(完)

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