急がば回れ、気が付けば迷子
冒険者協会に行くため、街を目指して森をでた。
そこから、なんと一日。ついに
「ま…街についた…」
疲れ果てている。お腹空いている。喉乾いている。なぜこんなことになっているかというと。
20時間ほど前。
「冒険者協会か…」
冒険者になれば魔法が使えるかもという、期待が膨らんでいく。
「魔法は楽しいよ〜」
緑色の髪。緑色の服。まさに色々な漫画でよんだフェアリーがのんびり答える。
「街いくか!」
やる気をだしそう言うと。
「行こう!行こう!」
フェアリーも乗り気である。
森を出るため歩き始める。
その瞬間、ふと気付いた。
名前を聞いていない。
昔からそうなのだ。相手の名前を聞くタイミングがわからない。聞かぬまま終わることは多い。
せっかく異世界に来たのだ。自分を変えねば。
だが、どう聞けば? さりげなく
①俺は〜 君は?
このタイミングではないような…
②自己紹介まだだったね…
今更かよ。
③フェアリーさんは…と声をかける
いいかも。さりげなく名前を聞いていないこもわかるだろう。
こう考えている時点で 自分を変えることができていないように思う。
「フェアリーさんは、森を出ても大丈夫なのか?」
質問風に聞いてみた。
「ん?大丈夫だよ。」
何もないように答え、そのまま自分の前を飛んでいる。
あれ?もしかして気づかないのかな。まさか、フェアリーって名前なのか?
ヤバイよ〜ヤバイよ〜。ある芸人が思い浮かんだ。どうでもいいな。
どうしよう。正攻法でいくしかないのか。
モヤモヤしたままでは気持ち悪い。
「あの〜、名前を聞いてもいいですか?俺は、ゆうと。」
苗字は言わなかった。個人情報は大事だよね?!
へりくだったような聞き方にびっくりしてたのか、または自己紹介すらしてないのに気付いたのか、
フェアリーにビックリマークが似あう顔が見て取れる。
「あたしは、フィーネだよ。」
えっへん、と聞こえそうに、名前を告げてきた。
自己紹介なのだから偉そうにしなくても。
そうこうするうちに、森の入り口にでた。
目の前には広大な荒野な広がる。
街はどの方向だろう。
「近い街は?」
「うーん、一番近い所でいいの?」
「冒険者協会があるところならどこでも。」
「ミネルーの街が近いかな。ココをまっすぐ!!」
ココと指を指し示すさきは山があった…
「ココをって…山越えるの?」
「そう!一番近い!」
「なら、いくか!!」
「行こう!行こう!」
単純なことだった。
もっとあたりを見渡せば、良かった!
二人がまっすぐ進んでいる横には、人が通った道があった。
気付かない2つの影は山道へと入っていく。
予想外に山道はきつかった。
ゴツゴツとした石があちこちに転がっている。
道は徐々に斜めになっているのがわかる。
何より山に入ってから気づいた。水も食料もない。
フィーネが言うには近いはずだ。森をでてすでに12時間くらいたっている。森にいるとき昼だったのが。今は完全に夜だ。暗闇をフィーネの後を続く。
でも何かおかしい。フィーネがあたりをキョロキョロしながら進んでいる。
「どうした?」
「うん?なんでもないよ。ただ夜になると魔物が活性化して強くなるから気を付けないと」
なるほど。夜は活性化するのか。確かに気を付けないと。だが、それだけなのかな。
「あとどれくらいで着きそう?」
フィーネはものすごい笑顔で答える。
「もうすぐだよ〜。」
本当だろうか…周りを見渡す限り灯りはない。
自分達が歩けているのは、フィーネが使う魔法。
《ライト》あたりを照らす魔法だ。
そのおかげで歩けているが。
もうすぐだよ〜は何時間なんだろ。聞いてはいけない気がする。
ひたすら歩き続けた。
6時間くらい経過。あたりは朝日に照らされ、《ライト》を使わなくても山道が見える。
「あった、目印。」
フィーネは突然声をあげる。
「目印…?」
石に矢印が書いてある。
「ううん。なんでもな〜い」
フィーネはそういうと口笛を吹いている。
まさか…
まぁいいか。目印があったらならすぐつくのだろう。
甘い考えだった。
狼の魔物。ウルフが襲ってきた。突然後ろから体当たりをくらったのだ。
「ぐへっ」
自分でも悲しくなる。声が漏れた。なんと言うか。たいして痛くないのだが。膝カックンをされたような、敗北感がおそう。OTL まさかこの格好をすることになるとは。
とりあえず殺そう。事実をなかったことに。
立ち上がりウルフに向き直すと、必殺シュート。
身長差があったので蹴りやすかった。
ウルフが宙を舞うと、ドサッと音とともに落ちる。
「つよ〜い」
「これぐらい簡単だろう?」
なんか褒められると嬉しい。
「ウルフも持って行こう。毛皮売れるから!」
「なるほど!了解!」
気軽に頷くのではなかった。持っていくのは自分なのだ。一匹なら問題なかった。その後も何回もエンカウントしたのだ。今現在肩には8匹のウルフが。
だが調子に乗っている。魔物がたいしたことなかったので助かる。どれくらいで売れるのかな〜とか考えていると。フィーネが
「ヤバイ。強い魔物が…」
フィーネが驚愕!といった顔をしている。
その視線をおうと。自分も目を見開く。
虎だ…虎なのだ!あっと言う間に走ってとびかかってくる。だが、とりあえず殴ってみた。
あっ力入れすぎた。顔をぶち破り腕が体内にめり込む。異世界に来てから、力が半端ないのだが。
フィーネが固まっている。
「どうした?」
「あんたおかしい…」
一言で片付けられてしまった。
とりあえず虎も担ぎまた歩き始める。
そして、やっとこさ山が下りはじめ、遠くに街が見える。ここで出発から19時間たっている。
ここで
「ま…街についた…」
疲れ果てている。お腹空いている。喉乾いている。
状態なのだ。