表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

死んだ話

僕が死んだ話

作者: 浅木翠仙

ついにシリーズ書き終わりました。

この話から始まる、「死んだ話」。

この次の話である「俺達が死んだ話」と解決編的な「彼らが死んだ話」も是非読んでください!

何とか小説の体裁は整えたつもりですので!(笑)

僕が死ぬ話をしよう。


何も面白くないかも知れないね。


興味すら無いかも知れないね。


でも話すだけ話させてもらおう。


ただ、僕が話したいだけだからね。


無視してくれても構わないよ。



      #     #      



そうだね、あれは月曜日だ。

月曜日だった。晴れていたね。

暑かったくらいだ。溶けるかと思ったくらいに暑かった。


それが始まりの日だったね。

何のかって?

それはもちろん僕が死ぬまでのカウントダウンが始まった日だということだよ。


そう、その日から死ぬまでの間、僕は死の瀬戸際を歩いていたと言っても過言ではないと思うよ。


いつ死んでもおかしくなかった。

ただ偶然生きて、そして必然的に死んだんだよ。


ああ、話を戻そう。

ええっと……どこまで話したっけ?

そうだ、月曜日が始まりの日だったということだね。

あやうく忘れるところだった。


いやいや、忘れてないよ?

ちょっと度忘れしただけさ。え、結局忘れてるって?

思い出したから良いんだよ。


て、また話が逸れたね。

月曜日あったことを話さないと。


単純な話だよ、車に轢かれたんだ。

トラックだったか……いや、軽自動車だった気もする。

残念ながらあまり覚えていないな。

バイクだった気もしてきたよ。


それでどうなったかって?

病院に運ばれたんだよ。

救急車に乗せられて。いや、本当に人通りの多い道で良かったよ。おかげで助かった。


驚くなかれ。火曜日には目覚めて、それから1週間で退院さ。


医者からも驚異の回復だと言われたよ。

いや、まさに奇跡さ。


少し身体の調子が悪いからリハビリみたいに看護婦さんに付き添われて歩いたりしてね。あ、今は看護師さんと呼ばないといけないんだっけ?


そう、若い看護師さんで、僕の身体を支えるように密着してくるから大きめの胸が当たってさ、役得だよ。


それを1週間くらい続けて身体の感覚が戻ってきてね。さっき言った通り、退院したんだ。


退院の日は晴れで良かったよ。

リハビリしてる間、ずっと雨が降っていたからね。でもあの看護師さんに胸をもう当ててもらえないと思うと少し残念だったね。

まあ、仕方無い。身体が良くなったことを純粋に喜ぼう。


退院して、1日休んで木曜日には職場復帰さ。

驚かれたよ。まさか本当に戻ってくるとはって。

仕事で何か問題が起きても動揺せず対応する部長の、驚く顔が見れて嬉しかったよ。


大したことじゃないけど、仕事場で数人見慣れない人がいてね、逆に見なくなった人もいたよ。

まあ、急用や僕みたいな急病で休んだ人がいて、その応援が来てただけだろうけど。


それで金曜日、あれは危機一髪だった。


頭上から植木鉢が落ちてきてね。危うく頭に直撃するところだった。

ちらっと見えたけど、どうやら猫がぶつかって落としてしまったものらしい。


奇跡的に避けることができたけど、地面との衝撃で飛び散った破片で、スーツのズボンごと足を切ってしまってね。


いや、大した傷じゃない。ただの切り傷だよ。唾付けておけば治るんじゃないかな?

ちょっと傷が多いし、少し深そうなのもあるから気を付けないといけなさそうだけど。

痛いものは痛し、しばらく歩き方が変になるかもしれないね。


それで土曜日、仕事は休みでね。うちの会社はブラックではないから、土日はちゃんと休めるんだ。良いだろう?

まあ、残業はそれなりにあるけどね。

そういえばここのところ残業代が出ていない気がするよ。


え? それはつまりブラック企業ではないかって?

そうでないと祈りたいね。

まあ、過労死するまでの仕事環境ではないよ。


……ああ、また話が逸れてしまったね。

閑話休題。

話を元に戻さないと。


そう、それで土曜日だ。


土曜日の休み、僕は散歩に出かけたんだ。

風が心地よくてね。1週間ちょっと続いていたらしい大雨が嘘のようだったよ。


川の水も減っていたみたいだった。

川縁に水位が高かったときの跡が残っててね、洪水にならなくて本当によかったと思うよ。


その日は河川敷で足を滑らせてしまってね。川に落ちるかと思ったよ。

水位が減っているとはいえ、川の勢いはそれなりのものだったから、本当に危なかった。

ぎりぎりのところで踏ん張れて良かった。


それで日曜日だ。

日曜日は何もなかったよ。

家でごろごろしてたからね。


部長とかと違ってうるさくする嫁とかがいないからね、本当に家の中は天国だよ。

いや、部長の奥さんは凄く優しい人でうるさくする感じでは無かったな。

なるほど、嫁がいても部長も家は天国か。何か負けた気分だ。いや、部長に何か勝てるとは思っていないけど。


それで再び月曜日。

いや、三度みたびだね。リハビリ中にも月曜日はあった。


その日、僕は葬式に行ったよ。

大学の先輩で、卒業後も気にかけてくれて、何かと世話してくれた人なんだけど、どうやら日曜日に交通事故で亡くなってしまったらしい。


僕もほんの少し前に事故に遭って、彼は死に、僕は生きた。


何だか複雑な気分だったよ。


僕はもう大丈夫だと言うように、涙は見せなかった。彼にもう心配はかけたくないからね。


そして火曜日。僕は死んだ。


階段で足を滑らせてね。頭から落ちたよ。

そのあと具体的にどんな風になったかは知らないけど。


でもね、おかしいんだ。

昨日死んだ大学の先輩が、天国でこんな風に言ったんだ。



「ようやくお目覚めかい、先輩?」

勢いで書いた短編をちゃんとした形にするあたりで三部作になってしまった残念作ですが、このままの流れで「俺達が死んだ話」と「彼らが死んだ話」も読んでくださると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして、織絵と言います。 ふと、新着短編のところを見ていて目に留まったので読んでみたのですが、凄いですねっ。 はい、もう、何て言うか…とにかく凄いですっ! 読者が先を読みたくなるような…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ