運命の別れ
護衛を始めて三日経った日のことだった。
三嶋のもとに上司から連絡が入る。
なにやら難しい顔をしながら受け答えした三嶋は、通信を終えると彼女の方を見やる。
「どうかしましたか?」
何かを感じ取った彼女は、三嶋に対して問いかける。
それに三嶋はうなだれるように頭を下げた後深刻な表情で彼女を見て、
「……残念だが、君の護衛を外れることになった」
一言、そう告げた。
先ほどの通信は、三嶋の護衛任務の終了を告げるものだったのだ。
理由としては、彼女を暗殺する疑いがあった対抗企業の社長がスキャンダルの槍玉に挙げられ、もはや彼女に構っている暇はないだろうとのこと。
念のため代わりの護衛をつけることにはなるが、三嶋はこの任務から外される。それを聞いた彼女はしばし沈黙していたが、
「それならば仕方がないですね」
三嶋を気遣うように笑顔で応える。
だがその笑顔は今までと違い、どこか寂しげな雰囲気を纏っていた。
入れ替わりの行動は迅速にとの命令なので、三嶋は今からでも荷物をまとめ始める。その間、特に言葉を交わすことの無い二人。
そして荷物をまとめ、発つ準備ができた三嶋は、
「……世話に、なったな」
一言だけ彼女に言葉をかけた。
それに彼女も何か応えたようだが、それは三嶋の耳には届かなかった。
時刻は夕日が街全体を照らそうとしているころ、
一抹の不安を抱えたまま、こうして三嶋は彼女の家から去っていった――