「8-初めては痛くしないでください(物理攻撃の話ではない)」
今の私は前野サファイア。
ベスフレのサファイアではない。
つまり、目の前のギャルを倒せない?
いやいや、倒す必要はない。
和解だ。人には言葉がある。
言葉は意思を伝えるためにある。
そして、私は言葉を使うのが極度の苦手だ。
…………終わった。
「初めては痛くしないでくだしゃい」
「いや、アタシを何だと思ってんの?」
「私の純潔を汚す者!」
「ヤんないよ!」
「…………なんでリアルには煙玉もスキルもないんだろ」
「思考がゲーマーじゃん、ウケる」
どうして、私をゲーマーだと知っている……まさか!
「ストーカー!」
「ストークしてないよ、アタシのイメージが犯罪者に固定になってんの?」
「レッドネームは私だった!」
「いきなりのセクハラはレッドネームだね」
「せめて、初めてはレモン味が良いです」
「キスもしないから、落ち着いてー」
何故か、頭を撫でられた。
…………この人、良い人だ!
「えっと、ごめんなさい。取り乱しました。何の用でしょうか?」
「今さら取り繕っても遅いよ〜」
仕方ないじゃん、極楽ひとりぼっちモード中に話しかけられたら、慌てるもん。
いつものインテリアルモードに切り替わらないから!
「用って、サファイアちゃんの弁当可愛いなって話したかっただけだよ、アタシ」
笑顔って人の警戒心を緩和する効果があるんですね、忘れてた。
「これはベスフレのイメージで作ったら、こうなりました」
「ねぇ、食べかけでもいいから写真いい?」
「それは恥ずかしいです」
「じゃまた今度作ってきた時にお願いネ?」
今度……また話したい。なぜ?
弁当に興味津々だということは分かった。
弁当を作る私に興味がある。
私に興味がある!
つまり、友達になりたいってことか!
「喜んでお受けします」
私に初めて友達ができた!
「よろー!サファイアちゃん♪」
「はい!」
サファイアと呼ばれたくなくて敬遠していた人との繋がりがやっとできました。
…………いや、今リアルだよ!
本末転倒じゃん!
サファイアって呼ばれたくなくて、ゲームの世界で友達作りしてたんだよ。
なら、どうする。相手は私と友達になりたいと言っている。
なら、ゲームの中、限定にすればいいじゃない。
それとなく、フレンド申請を促そう。そうしよう。
「ギャル子さんはベスフレはやってるんですか?」
「ヤッてんよー楽しーよね」
「はい、PKって楽しいですよね」
「え……」
「え?」
あ、ベスフレって友達を作って冒険するゲームだった。
VRMMORPG――【best・friend・online】
通称、ベスフレは、フレンドリストが強さに直結する特殊なシステムが採用されている。
自分が死んだり、他プレイヤーを殺したりしたら、ペナルティがフレンドリストに載っているプレイヤー全員が負うことになる。
絆が試される性格の悪いゲームだ。
そんなゲームでPKしてる奴は、一言でイかれてる。
そんなイカれてる私は、目の前のギャル子さんに素直を話しちゃった。
「デスペナでフレンド真っさらコースじゃん、大丈夫かよ」
「大丈夫だよ……元から0人だから」
「それでPK成功させてるって逆に凄くね?」
思っていたより好感触だ。やっぱり正義の断罪は認められる!
「うーん、それだとフレンド申請出来ねぇよね、ちな、何人殺ったん?」
「たぶん250人以上かな?」
「…………ガチじゃん!」
「うん、牢屋行き知らなくて、五日以上、牢屋で過ごすためにゲームとか、嫌だから、私は正義の執行人になるって決めました!」
「正義の執行人?」
「モンスターPKしてる奴らを殺して平和にするんだ」
人に嫌なことはしちゃっ駄目だよね。
「噂の『二人目の死神』ってサファイアちゃんだったんか、マジやばたにえん」
「二人目の死神?」
「そう、プレイヤー達が恐れるプレイヤー、通称『死神』がいるんだけどさ、最近、モンピやってる奴らが騒いでんのよ」
「騒いでるの?」
「そ、普通ピケやると、スキル熟練度って下がるじゃん、でも、短い時期でピケ連発、しかも、タゲがモンピだけってことで、同一人物。でも、『死神』は健全にゲームやってる奴らしか狙わないんよ……だから、『二人目の死神』が現れたって」
短縮言葉が乱用で何言ってんのか分かんない。
でも、その『死神』さんが悪い人だってわかりました。
「私は【ぼっち】ってスキルで、ステータスバグってるけど、初代『死神』さんはどうしてPK連発できるだろう?」
「……今、【ぼっち】スキルって言った?」
「うん、皮肉だよね」
絆を謳うゲームがシステム的にお前はぼっちだって言われてるみたいでね。こっちはぼっち脱却で頑張ってたのにね。
「マジ?……本当に、【ぼっち】スキル、今世間を騒がしてる【ユニークスキル】の【ぼっち】!?」
肩を掴まれて、目茶苦茶揺らされてしまいました。
「詳細を教えて、めっちゃ気になる!」
「教えますので、落ち着いて下さい」
開放してくれたあと、目の前でぴょんぴょんしながら回ってますギャル子さん。
そこまで、私が知りたいなんて、なんて情熱的な人なんだろう!




