第3話:パーティ結成、運と罠の綱渡り
フォレストタウンの朝は、相変わらずRPG感満載だ。市場の喧騒、馬車のガタガタ音、パン屋の焼きたての香り。俺、佐藤カズヤ、28歳、元ニート。異世界に転生して3日目。スキル「ギャンブル」のせいで、戦闘のたびに心臓が縮こまる生活だ。昨日はゴブリン相手に吟遊詩人とかいうクソハズレを引き、死にかけながらも逆転勝利。なんとか冒険者Fランクとして生き延びてる。
隣を歩くのは、アリア。金髪ポニーテールの村娘で、水魔法がちょっと使えるヒロイン枠。青い瞳が朝陽にキラキラしてる。んで、もう一人、昨日酒場で加入したロク。革ジャンにナイフ、目がギラついた盗賊系冒険者。なんか怪しいけど、パーティ人数増えた方がギャンブルの失敗をカバーできる……はず。
「カズヤさん、今日のクエストは何にする? また薬草採取?」アリアがニコニコ聞く。彼女のワンピースが風に揺れる。癒し系だな。
「いや、薬草はもういいよ。ゴブリン出てきたし。あんなハラハラまた味わいたくねえ。」
ロクがニヤリと笑う。「お前、運ゲースキルなんだろ? ならデカいクエスト狙おうぜ。報酬多い方が俺の懐も潤うし。」
「懐って、お前、金目当てかよ。怪しすぎるだろ。」俺はジト目で睨む。
「ハハ、冒険者は金だぜ、カズヤ。ま、俺の罠スキルで楽勝だろ。」ロクがナイフを指でクルクル回す。胡散臭さがマックスだ。
ギルドに入る。受付のリナが書類をパラパラめくりながらこっちを見る。「お、Fランク三人組。パーティ組んだんだ。やる気あるねえ。」
「まあ、なんとか。クエストでオススメある?」俺は気軽に聞く。
リナがボードを指す。「森の奥でオオカミの群れが暴れてる。農場の羊が襲われまくってるから、討伐クエスト出ててさ。報酬は銅貨30枚と、ギルドポイント。Fランクにはキツいけど、三人ならいけるでしょ?」
アリアが少し不安そう。「オオカミ、強いよね……私、魔法でサポートするから!」
ロクが肩をすくめる。「俺の罠で足止めすりゃ楽勝。カズヤの運ゲーに賭けてみようぜ。」
「俺のスキル、賭けの対象にすんなよ……。」胃がキリキリするが、クエスト受注。オオカミ討伐、5匹。失敗したらまたギルド清掃とか嫌だな。
町の門を出て、森へ。道は昨日より狭く、木々が密集してる。鳥の声が減り、たまに遠くで唸り声。雰囲気ヤバい。俺の幸運5がビンビン警報鳴らしてる気がする。
「カズヤさん、緊張してる?」アリアが小声で聞く。
「そりゃな。ギャンブルでハズレ引いたら終わりだし。ニートの心臓、こんなストレス耐えられねえよ。」
ロクが笑う。「ハハ、ビビんなよ。俺の罠でオオカミなんか一網打尽だぜ。」
「その自信、逆に不安なんだけど。」
森の奥、開けた草地に出る。そこにオオカミ5匹。灰色の毛、鋭い牙、目が赤く光ってる。リーダーは一回りデカい。マジで強そう。
「グルルル!」
「うわ、来た! ロク、罠は!?」俺は叫ぶ。
「任せろ!」ロクが地面にワイヤーと小型爆弾みたいなのを仕掛ける。「これで足止めだ!」
だが、オオカミが一斉に突進。罠が発動し、2匹がワイヤに引っかかるが、残り3匹が突っ込んでくる。「ロク、2匹しか止まってねえ!」
「細けえこと気にするな! お前、スキル使えよ!」
「くそ、ギャンブル発動!」
ルーレットが視界に浮かぶ。スロットがガチャガチャ回る。頼む、強いの! 止まる。
【職業:料理人】
【武器:フライパン】
【防具:エプロン】
【魔法:スパイス投げ】
「料理人!? フライパンでどうしろって!?」
オオカミが飛びかかる。俺はフライパンでガン!と叩くが、ダメージほぼゼロ。HPが90/100に減る。アリアが水魔法でオオカミを濡らすが、効果薄い。「カズヤさん、ごめん!」
ロクがナイフで1匹に切りかかるが、リーダーのオオカミに弾き飛ばされる。「ちっ、硬え!」
HPが70/100、50/100と減る。エプロンがビリビリ。スパイス投げを試す。「くらえ、スパイス!」目に入ったオオカミがクシャミするが、怒って突進加速。HP30/100。ヤバい、瀕死だ!
「ニートの人生、こんなとこで終わるのか!? 再発動、ギャンブル!」
ルーレット再び。敵に適した設定。止まる。
【職業:獣狩人】
【武器:連射クロスボウ】
【防具:強化革鎧】
【魔法:罠強化】
体が熱くなる。クロスボウが手に現れ、矢が連続で発射可能。魔法「罠強化」を発動。ロクの罠が光り、残りのオオカミ2匹を完全に拘束。「ロク、今だ!」
「やるじゃん、カズヤ!」ロクがナイフで拘束されたオオカミを仕留める。俺はクロスボウでリーダー狙い。矢が急所に命中。リーダーが吠えながら倒れる。
【経験値獲得:50×5】
【レベルアップ:レベル6】
【敏捷+4、力+3】
「はあはあ……勝った。マジで死ぬかと思った。」地面にへたり込む。汗と埃でドロドロ。
アリアが駆け寄る。「カズヤさん、すごい! 料理人の時、フライパン振り回してたの、めっちゃ面白かったよ!」
「面白くねえよ! あのエプロン、防御力ゼロだろ!」
ロクが笑いながら近づく。「ハハ、いいコンビだな。俺の罠とカズヤの運ゲー、悪くねえぜ。」
「悪くねえって、お前の罠、半分しか効かなかったじゃん。」
「細けえこと言うなよ。報酬ゲットだろ?」ロクがオオカミの牙を拾う。俺も牙と毛皮をインベントリに。
町に戻り、ギルドで報告。リナが感心した顔。「オオカミ5匹、Fランクでよくやったね。報酬、銅貨30枚とポイント10。次はEランク昇格試験受けられるよ。」
「マジ? ニートが昇格とか、ちょっとカッコよくね?」俺はニヤける。
アリアが笑う。「カズヤさん、もっと強くなれるよ! 私もがんばる!」
ロクが肩を叩く。「お前、運ゲーだけどハマるな。次はもっとデカいクエスト狙おうぜ。」
酒場で祝杯。ビールと焼き鳥。異世界の味、最高だ。アリアが水魔法でコップに水を出す。「節約だよ!」って、かわいいな。
ロクが言う。「カズヤ、お前のスキル、失敗が派手すぎる。次は何引くんだ?」
「さあな。運次第だよ。ニートの運、舐めんなよ。」
内心、胃がキリキリ。ギャンブルはスリルあるけど、毎回瀕死はキツい。でも、アリアの笑顔、ロクの胡散臭い笑い。このパーティ、なんか楽しいかも。
夜、宿屋で考える。ニートだった俺が、仲間と冒険。失敗だらけだけど、逆転の瞬間は悪くない。次は何のクエストだ? 運命のルーレット、また回るぜ。
(つづく)