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8機目

11時、ミッション開始だ。

『Gドッグ1、カタパルト3より発艦。タキシング行います』

ウィーーン

中隊……と言ってもたった4機の1個小隊でしかないが……のオペレータから通信が入ると、俺のバードトレイルを固定した射出機のアームが動き出す。

『各員、発艦後針路000-315にて高度マイナス10,000に到達し高度を維持。作戦宙域まで編隊し巡航して下さい』

『『『「了解」』』』

……

『ハーネス1、バードトレイル、出るぞ』ブウゥン

……

『ハーネス2、アガス、テイクオフ』ブウゥン


『Gドッグ1、カタパルト3よりテイクオフ、クリア』

俺の番だ!

「バードトレイル、いきまぁす!」ブウゥン

やっぱ発艦はこうでないとね。


『Gドッグ2、カタパルト4よりテイクオフ、クリア』

『Gドッグ2、テイクオフ』ブウゥン


発艦後、すぐに4機で集まり編隊飛行に移行する。

空気抵抗が無いので雁行する意味は強くはないが、遠い昔に宙軍が空軍から別れてからも慣習で続いているそうだ。

強くはないというのは、オートパイロットで飛行するのに、先頭に習うだけで良いという言い分があるらしい。


ゴォ……

エンジンの音が震える。

目の前に真っ暗の空間が広がり、遠くで恒星が輝いている以外は道標も何もなくて、ぼんやりしていると空間識失調を起こしてしまう。

地上の概念がなく墜落しないから問題無いものの、HUDの線だけが自機の向きや傾きを教えてくれる。

――編隊を組むは、俺みたいなのが迷子にならないようにするって意味もありそうだな。


『第1小隊、作戦宙域まで残り5分、3分後オートパイロットを解除します』

オペレータから作戦宙域に近づいていることが告げられる。

俺らの小隊は、センサが反応した直線上の一番近い位置を担当することになっている。

任務を一緒に行う第2中隊は、隊によっては結構遠くまで行かないといけない。

移動が長いのはつまらないので少し可哀想ではある。


『よし、予定通りに行くぞ。Gドッグ隊は宙域C-1-イから、俺たちハーネス隊は宙域C-1-ホから順次偵察だ。』

『『「了解」』』


――作戦宙域は便宜上、X軸をA,B…E、Y軸を1,2…5、Z軸をイ,ロ…ホの5分割で表現することになっている。

ちなみに正方向は発艦時の艦艇の向きで決まる。

つまり俺らGドッグ隊は小惑星ベルトの1区画の上から、大尉らハーネス隊は下から探索を行うということだ。


作戦宙域に到達し、ハーネス隊と別れて偵察任務を開始する。

ウイングのオルレア嬢が、偵察用装備としてカメラ付きドローンを10機展開して周囲の岩石を隅々まで探索している。

俺はリードとして少し先行し危険がないかをボディチェッキング中だ。

センサ類に反応しにくいラーカー系のドローンが潜んでいた場合、真っ先に狙われる役目のため気が抜けない役目ではあるが、もう15分も続けているので――


『何もなくて拍子抜けですね、ロベール大尉』

『馬鹿野郎、油断するなよ。獣は獲物を狩る瞬間が一番静かになるんだ。』


ハーネス隊の会話を聞きながら、俺も正直暇だな〜と、目前の光景をボーッと眺める。

小惑星ベルト、バードトレイルと同じくらいの岩が数万kmの薄さで恒星の重力の影響を受けて帯びを成している。

この付近のベルトの岩はほとんどが黒いが、白い岩石が等間隔に、まるで人為的な配置で存在している。

俺らGドッグ隊の進路が、そのフワフワと浮遊する白い岩石の一つに差し掛かる。


――ふと嫌な予感がする。

落ちていた脳の回転数を、ベタ踏みして一気にレッドゾーンまで入れる。

ガタッ

「まっずい!」

俺は慌てて退避の指示を発報しまくり、白い岩石からできるだけ距離を取るように機体を翻す。

ピンピンピンピン

『ッ!!』

オルレア嬢が恐ろしい反応速度で俺の機体にピッタリ着いてくる。

「ナイスだ!」

『Gドッグ2!何があった!』

大尉から通信が飛ぶ。

『不明です!リオ様より退避指示ッグゥ!』

そういうやいなや、近くの白い岩石が唐突に爆散する。

カッ!……バチチチ!

岩石の破片が機体に衝撃をもたらす。

「ヤバいな!」

バードトレイルの装甲は非常に硬い、この程度の衝撃ならば貫通しないだろうが、キャノピーはどうしても透明であることから、若干強度に不安がある。

また爆発の熱エネルギーも防ぐことは出来ないだろう。最悪パイロットはコクピット内で蒸し焼きだ。

オルレア嬢を守るように、俺のバードトレイルで彼女のコクピットに覆い被さる。

機械である俺のコクピットは、割れても熱で蒸されても死ぬことはない。

『Gドッグ隊付近で熱源反応!爆発です!』

オペレータが全隊に向けて報告する。


そして一つの爆発を皮切りに、付近の白い岩石が寄ってきて次々に爆散する。

その都度、爆発が起こった向きに機体を傾け、出来るだけオルレア嬢に破片が及ばないようにすると、彼女も意図に気づいたのか、偵察装備をパージして、俺の機体にギリギリまで密着し動きを合わせてくれる。

傍から見ると、爆発の中で2つの機体が踊っているように見えるだろう。


また、俺のコクピット面に装荷されているミサイルは岩の破片が当たって暴発する可能性があるので、適当な白い岩石に向けて撃ち込んでおく。

ミサイルだってタダじゃねえんだぞ!


『うわああ!おかあザァーーッ――ブツッ』

『少尉!クソッ』

『ハーネス2の機体反応喪失!』

ハーネス分隊の方でも爆破が起こっているようだ。

ロベール大尉が艦艇へ通信を飛ばす。

『大佐!罠だ!』

『確認した!全隊小惑星ベルトより離脱しろ!』

『聞こえたなGドッグ隊、ホ側に抜けて合流する!ベルトの外縁に近い!』

オルレア嬢が返答する。

『コピー!』


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