4機目
『どうぞ、入ってください』
技術士官と別れて、オルレア嬢の私室に着き、入室のお誘いを頂く。
彼女は尉官で幹部待遇のため個室が与えられている。
オルレアが部屋に入り、お言葉に甘えて続こうとすると、廊下から話し声が聞こえてくる。
ヒソヒソ『またアンドロイドの姫がボット野郎を連れ回してるぞ』
ヒソヒソ『姫は人形としかまともに話さねぇからな、ロボット相手にファックしてるんじゃね』
ヒソヒソ『ゲヒャヒャ』
ロボットである俺はスーパー地獄耳であり、多分オルレア嬢には聞こえていないだろう。
それには安堵するが、彼女を悪く言う言葉に怒りが湧く。
しかし今の俺には、ロボットなので黄色の点灯をするしか抗議する方法は無かった。
「リアルで会ったら一発殴るからな」
とゲーム内には聞こえない声で威嚇しておく。
『少しお待ち下さい』
部屋に入るとオルレア嬢はパイロットスーツやら下着を脱ぎ捨て、備え付けのシャワールームに入っていく。
「このゲーム、レーティングは18だけどさ……」
モロ見えのポリゴンにこのゲーム大丈夫か?と心配になる。
シューティングが主なゲームなのに、モロ見えが原因でサービス終了とか笑えない。
部屋の中は私物がほとんど存在せず、殺風景だ。
唯一興味を引くのは机の上の写真立てだが、倒されており見ることは叶わない。
いや、もう一つあった脱ぎたての――
シューン
オルレア嬢は生まれたままの姿でシャワールームから出てくると、身体の水滴を拭うのもそこそこに、俺をソファまで押していき、ソファに腰掛け無機質な俺の身体を抱き締める。
『リオ様……』
普段の抑揚の無い声と違って熱を帯びている。
一糸纏わぬその姿に、意識が研ぎ澄まされて、ロボットの動力がグングンとうるさいく感じる。
雪のように白いが火照った肌、ハラリと耳から落ちる銀色の髪、長い睫毛と灰色の瞳、頬を伝わる水滴、そしてプックリとした唇と――。
『冷たくて気持ちいい……』
抱き締める力が一段と強くなる。
『ゥン……』
始まった……。
オルレア嬢は自分の秘所となだらかな稜丘の頂点に手を添え、艶めかしく動かし始める。
最近出撃後は毎回のように、彼女はなぜか冷たく硬質な俺の身体を使って自分を慰めている。
「ほんとに表現倫理的に大丈夫なのか?!」
一人で致すところは誰もが、誰にも見られたくはないだろう……。
俺はそっとゲームからログアウトした。
そう、ファックはしているのだ。
奴らは事実ではない悪口、つまり誹謗はしていない。
彼女を嘲笑ったことに対して俺は怒っていたのだった。