3機目
作戦室の前に着き、2人――ではなく1人と1体で入室する。
中ではパイロットの上官である大佐と技術士官の少佐が待っていた。
『オルレア、リオ特別操縦官、帰投しました』
オルレア嬢がピシッっと敬礼する。
俺も一応緑ランプを点灯する。
自分はロボットなので軍属ではなく備品扱いで、階級はなく特別操縦官という役割を拝命している。
『掃討任務ご苦労。楽にしたまえ』
大佐は40後半のナイスミドルである。
『ドローン12機の撃墜、機体への損害なし。素晴らしい成果だ。他の隊の協力もあって、これで先日の遭遇戦にて散った敵戦力はあらかた掃討されたであろう。我らの艦は少し遅れたが予定通りの航路で進駐する。貴官の中隊は損耗が激しいので補充が完了するまで威力偵察を主な任務とし、本命の襲撃作戦は別の中隊で行う。――まあ補充も計画されているから少しの間我慢してくれ』
『承知しました』
緑ランプをピコーン
少し待って30歳くらいの眼鏡美人の少佐が口を開く。
『では続けて私から。コホン、おめでとう!圧電ブザーつけていいってさ〜』
バシバシと俺の外殻が叩かれ、画面が揺れる。
ブザー?ビープ音を流すことが出来るようになるのか?
『ありがとう御座います』
ああ、オルレア嬢がお願いしてくれたのか。
『でも鳴るかどうかは分かんないよ〜』
『大丈夫です、リオ様には意思がありますから』
『ふ~ん、ただの重力子の波形なんだけどね〜』
そういう設定なのかな?
『とりあえずもう一機の搬送ロボットを改造しとくから次の出撃後を楽しみにしといて〜』
一応、緑ランプを点灯する。
『ウーン、意思、あるのかな〜?』
眼鏡をずり下げた美人の顔が画面一杯に迫り、少し躊躇う。
遂にランプによるコミュニケーションが確立するときがk――
『……ま、そんなわけないか!』
――来なかった。原因はなんとなく予想がついている。
このロボットは俺がログインしていない間はきっとただの置物で、話しかけても一切反応がないんだろう。
いやまぁただ単にコミュニケーションは取れないっていう設定なだけなんだろうけど。
このゲーム、写実性が高すぎてついリアルと見紛ってしまう。
『他にはあるか?』
『発言よろしいでしょうか』
大佐が問うと、オルレア嬢から声が上がる。
『構わん、どうした、少尉』
『その……オレンジの行方は判明しましたでしょうか』
『オレンジ』は俺らが幾度も多数の犠牲を払って追い詰め、取り逃がしてきた、ボス級機体のことだ。
そして俺のウイングになる前から、オルレア嬢にはヤツとの間に確執があるようだった。
『確かな情報ではないが、この先の宙域で目撃情報があった。会敵する可能性はゼロではない。そのときは本艦の全機全力をもって撃墜する。……心配するな、皆、少尉と同じ気持ちだよ。よろしく頼むな』
『了解しました』ピシッ
皆か、何があったんだろう?言葉を発せないこの身がもどかしい。
『ではデブリーフィングは以上とする。解散』
ピシッ
ピコーン
『体調は大丈夫そう?』『はい、問題ありません』
オルレア嬢と技術士官が話しながら部屋を出ていく。
二人に付いて部屋を出ようとすると、大佐から声がかかる。
『リオ特別操縦官。……オルレア少尉を頼む』
頼むと言われてもなぁ、了解と緑色を点灯させ退室する。