表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い雲の上にキミはいて  作者: 功野 涼し
付き合うってキミと二人っきりになれることだと思っていた
72/76

6

 少なくとも僕にとっては、他人の家の中に入る機会というものはあまりなかった。


 友達の家に行く、それだけでも別世界のように感じ緊張したのに女の子の家、ましてや彼女の家ともなるとその緊張度合いは比較にならない。


 玄関に入った瞬間から雰囲気というか、匂いというか全く違う。それになによりもよその家にお邪魔する際に、出迎えられた経験がないので余計に焦ってしまう。


「こんにちは」


 僕が挨拶をすると、目の前にいる真紀さんのお母さんはほんの一瞬だけ間が開いて真顔から笑顔に変わる。


 それは親しい間柄の挨拶と違い、赤の他人から娘が連れてきた客として外見から判断して第一印象は認められた、おそらくそんな時間。


「こんにちは。今日は無理言ってごめんなさいね」


「いいえ、真紀さんがどんな人間と付き合っているか気になると思うので、挨拶は必要かなと思います」


「そう言ってもらえると真紀の親としては嬉しいし、なによりも安心できる」


 僕が事前に用意していたセリフを言うと、真紀さんのお母さんは僕にニコッと笑ったあと真紀さんの方を見る。


「真紀にはもったいない。素敵な彼じゃない」


「なによその言い方」


 ニヤケながら笑うお母さんに真紀さんが怒るのを見ながら、()と呼んでもらえたことに嫌われてはなさそうだと感じひとまず安堵する。


「話が長くなってごめんなさい。ささっ、上がって」


「そうだ、これをどうぞ。お口に合うと嬉しいですけど」


 僕は慌てて手にあった紙袋を手渡す。


「あらあら、そんな気を遣わなくてもいいのに。ほんとっ、真紀にはもったいない」


「いちいち言わなくてもいいから。ほら、行こう」


 頬を膨らませ怒る真紀さんに手を引っ張られ僕は市川家にお邪魔する。緊張と嬉しさが半分づつやってきて、僕は少しだけ大人になれた気がして嬉しくなる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ