表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/10

未知の星系への航路

「エクリプス、航行準備完了。」


アスタは宇宙船の操作パネルに手を置き、視線を前方に向けた。目の前の窓の外には、広大な宇宙が広がっている。ノア・コロニーを後にし、アスタが夢見ていた宇宙への第一歩が今始まろうとしていた。


「これで、俺もようやく旅立てるんだな……」


言葉にするたびに、胸の奥で興奮が湧き上がる。だが、同時に不安もあった。これが初めての星間航行。何が起こるか分からない。エクリプスにはAIアシスタントのルミナが搭載されているとはいえ、すべてが初体験だ。


「ルミナ、状況はどうだ?」

「すべて正常です、アスタさん。航路データも問題ありません。ただし、途中に小規模な隕石群が確認されています。衝突の危険性は低いですが、回避行動が必要になる可能性があります。」


「隕石群か……。初っ端から試練ってわけだな。」

アスタは眉間に軽く皺を寄せながらも、冗談めかした口調で返した。緊張をほぐそうとしている自分に気づき、苦笑する。


「安全第一ですよ、アスタさん。」

ルミナの冷静な声が、緊張を少しだけ和らげてくれる。


エクリプスは静かにコロニーを離れ、ゆっくりと速度を上げていく。加速モードが作動し、星間航行用のエンジンが唸りを上げると、窓の外の景色が流れ始めた。


「……これが、宇宙か。」


アスタは窓越しに広がる星空を見つめた。祖父の話で聞いていた銀河の美しさ。無限に広がる暗闇と、点々と輝く無数の星々。その壮大さに、言葉を失った。


「感動していますね。」

ルミナが柔らかい声で話しかける。


「そりゃあな。コロニーの中じゃ見られない景色だし、これがずっと夢だったんだ。」

アスタは正直な気持ちを言葉にした。


しかし、その感動は長くは続かなかった。ルミナが警告音と共に冷静な声を上げる。


「隕石群の接近を確認しました。航路変更が必要です。」


ホログラムスクリーンには、予測される隕石の動きが表示されている。小型の隕石が高速で進んでおり、接触すればエクリプスに深刻な損傷を与える可能性がある。


「初っ端から波乱のスタートだな……!」

アスタは操作パネルを見つめながら、汗ばむ手をしっかりと握りしめた。


「手動で回避できますが、判断ミスがあると衝突の危険性が高まります。未来選択能力の使用を推奨します。」


「分かってる……!」


アスタは深く息を吸い込み、脳内で10通りの未来をシミュレーションする。「未来選択能力パス・フォージング」は、アスタが転生後に得た特殊能力。だが、その使用には精神的な集中力を要するため、過度に依存することはできない。


アスタの思考は、超高速で分岐する未来を分析していく。


無理に加速して隕石を抜ける。だが船体がかすり損傷する。

停止してやり過ごす。隕石が小型で衝突するリスクが増す。

右旋回を試みる。予測よりも隕石群が密集していて失敗。

船のエネルギーを一時的にシールドに集中させて衝突を防ぐ。

シミュレーション結果を踏まえ、最も成功率の高い「右旋回と加速」を選択する。


「ルミナ、右旋回と加速だ!エネルギーはスラスターに集中!」

「了解しました、アスタさん。」


エクリプスが鮮やかな弧を描き、隕石群の中を駆け抜ける。大きな衝突音もなく、船体は無事に抜けた。


「やった……!」

額に滲む汗を拭いながら、アスタは安堵の息をついた。


「見事な判断です、アスタさん。これで安全圏に入りました。」

ルミナが冷静に褒める声に、アスタは少しだけ照れる。


隕石群を抜けた後、エクリプスは順調に航路を進み、最初の目的地である惑星「ベリル」が視界に入った。


ベリルは資源採掘で知られる惑星であり、宇宙港も広く賑やかだ。アスタが船を港に停泊させると、多種多様な種族の人々が行き交う光景が目に飛び込んできた。


「さあ、ここが俺の最初の目的地か……どんな星なのか楽しみだな。」


アスタはルミナに留守を頼むと、宇宙港の通りへ足を踏み出した。市場には色とりどりの資源や製品が並び、様々な種族の商人たちが威勢の良い声を上げている。


「これが宇宙の世界か……!」


未知の文化や技術に触れるたび、アスタの心は高鳴る。そして、この冒険がまだ始まったばかりであることを実感した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ