ソラは身近に
「決まった!ついにこのフューエル銀河大会、勝者が決定です!」
コロニー中央広場のホログラムスクリーンに、実況者の興奮した声が響き渡る。画面には、銀河大会「ギャラクシア・アリーナ」の決勝戦の模様が映し出されていた。鮮やかな宇宙背景をバックに、二機の戦闘機が激しいドッグファイトを繰り広げる映像だ。
「勝者はアラン・グレイ少佐!『レイヴン』の異名を持つ現役軍人が、圧倒的な技術でファントムを撃破しました!銀河最強のパイロットは彼に決定です!」
観衆の間から歓声と拍手が巻き起こる。主人公である俺――アルタは、その熱狂を少し離れた場所から眺めていた。
「やっぱりすげえよな、軍人のエースってのは……」
隣に立つ幼馴染のカイルが、目を輝かせながらスクリーンを見上げている。俺は彼の隣で軽く肩をすくめた。
「そりゃそうだろ。俺も準々決勝でレイヴンにボロ負けしたし、こいつらとは次元が違うよ。」
カイルが「お前が5位に入っただけでもすごいって」と励ましてくれるが、俺の心はそれほど晴れやかではなかった。銀河一を夢見て挑んだ「ギャラクシア・アリーナ」。予選を突破し、なんとか本戦に進んだものの、上位にいるのはやはり軍人や傭兵ばかりだった。
準々決勝の記憶
「アルタ・ナギシマ。これが君の限界か?」
冷ややかな声が脳裏によみがえる。準々決勝で俺を打ち負かしたのは、今まさに銀河一となったアラン・グレイ少佐だった。
あの試合。俺は自分の限界を尽くし、最善の一手を選び続けた。だが、それでもレイヴンの正確無比な操縦技術には歯が立たなかった。
「未来を選択する能力か……だが、それを現実にできるのは、能力だけじゃない。経験だ。」
試合後、彼はそう言い残して去っていった。悔しさはあった。だが、それ以上に俺は、銀河一を目指す舞台に立てたことに達成感を覚えていた。
現在へと戻る
「まぁ、俺はもう銀河一とか目指さなくていいんだよ。5位になれたし、それで十分だろ。」
俺が言うと、カイルは不服そうに眉をひそめた。
「5位だって立派だと思うけどな。コロニーにいる奴で、宇宙船を手に入れたやつなんてお前ぐらいだろ?」
それを聞いて、俺は少しだけ笑った。そう、5位に入賞したことで、俺は「宇宙船」という賞品を手にすることができたのだ。それも星間航行可能な中型船だ。
この銀河では、普通の人がコロニーを出るなんて滅多にない。宇宙船の維持費や航行費が高額だからだ。一般人の大半は、コロニーで生まれ、コロニーで死ぬ。
だが、俺は違う。これで、ようやく夢だった宇宙への旅立ちができる。
祖父の冒険譚
思えば、俺が宇宙に憧れるようになったのは、祖父の影響だった。
「アルタ、お前はこのコロニーだけが世界だと思うな。銀河は広い。星々を巡る旅は、人生そのものを変える。」
祖父は、かつて宇宙商人として銀河を巡った冒険者だった。その話を聞くたびに、俺の胸は高鳴った。だが現実は厳しい。父も母も、「コロニーで安定した生活を送る方がいい」と言っていたし、俺もそれが普通だと思っていた。
でも、転生して得たこの「未来選択」の能力と、今回の大会で得た宇宙船。それらが俺の「普通」を変えたのだ。
旅立ちの準備
「それじゃあな、カイル。俺、行くよ。」
決勝戦が終わった翌日、俺はカイルや家族、そして祖父に別れを告げた。父は少し心配そうだったが、祖父は笑って言った。
「やっとお前も一人前の航海者になるんだな。誇りに思うぞ、アルタ。」
手に入れた宇宙船は古いが、性能は抜群だった。船には高性能AI「ルミナ」が搭載されており、初めての航行をしっかりサポートしてくれるらしい。
宇宙船「エクリプス」
宇宙船「エクリプス」のブリッジに立った俺は、緊張と興奮が入り混じった感情に包まれていた。操作パネルに手を触れると、AIの声が響く。
「初めまして、アルタ・ナギシマ。私はこの船のAI、ルミナです。星間航行モードの準備を開始します。」
「よろしくな、ルミナ。これから長い付き合いになりそうだ。」
初めての宇宙航行
エクリプスがゆっくりとコロニーを離れ、広大な宇宙空間に飛び出していく。窓の外には、無限に広がる星々の海。
「これが、宇宙か……!」
息を呑むような景色に、俺は言葉を失った。これまでコロニーの中で見てきた小さな世界が、どれほど狭かったかを思い知らされる。
「安全第一で行こうな、ルミナ。」
「了解しました。アルタさん、まずは近隣の惑星系へ向かうルートを計画します。」
新たな冒険の始まり
俺はスクリーンに表示されたルートを眺めながら、胸の中で決意を固めた。この旅がどんなものになるのかは分からない。けれど、俺には「未来選択」の能力がある。慎重に、だが一歩ずつ前に進んでいくつもりだ。
「祖父が言ってた通りだな。銀河は広い。」
これから俺は、この無限の銀河を巡る冒険に出る。その旅の先に、何が待っているのか――それは俺自身の目で確かめるしかない。