表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

プロローグ

平凡な高校生活。それは誰もが一度は夢見る青春の象徴であり、多くの物語の舞台となる光景だ。


しかし、ここに描かれるのは、その“平凡”とは一線を画す、ある特異な関係性の物語である。


静かな朝の教室。窓際の席で、小柄な少年が一冊の文庫本を手にしていた。その姿は誰の目にも留まらない、ごく普通のクラスメイトとして映るだろう。しかし彼——橘悠たちばな ゆうは、自分の視線を常に一点に集中させていた。


「おはよう、悠くん!」


明るい声が教室に響く。同時に、教室全体の雰囲気が少しだけ柔らかくなるのを感じるのは彼だけではない。声の主は、彼の恋人——陽宮理緒ひのみや りお。明るい笑顔と愛らしい振る舞いで、誰からも親しまれる存在だった。


「おはよう、理緒。」


静かに返事をする悠。しかしその目の奥には、周囲には見せない熱を秘めていた。彼女が自分の目の前にいる。それだけで、彼の胸には満たされた感覚が広がる。


だが、それは単なる安心感ではない。


悠の心の奥底には、彼女に対する強烈な執着が渦巻いていた。彼女の笑顔を見られるのは自分だけでなければならない。他の誰かがその笑顔に向けられるのは、耐え難い苦痛だ。


一方の理緒もまた、悠に対して同様の想いを抱いていた。彼の控えめな微笑み、その声、その存在…それらすべてが自分だけのものでなければならない。周囲の女子が悠に無邪気に話しかける姿を見たとき、理緒の中には小さな火種が生まれていた。


“誰にも渡さない”


“誰にも渡せない”


互いにそんな思いを抱えながらも、表面上は穏やかな日常を演じる2人。しかし、その心の中では、愛が狂気に変わる一歩手前の危ういバランスが成り立っていた。


これは、そんな2人の“普通の高校生活”の中に潜む、狂気と愛情の物語である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ