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第008話 ギルドの窓口

ハイファンタジーのような、壮大なストーリー展開は一切起きない…予定…です。

よろしくお願いします。

「はい。それではお預かり致しますね」


ポン。


そんな音と共に受領書にギルドの受領印を押す、黒髪ストレートの受付嬢。

ただそれだけの動作であるのに、胸にたわわに実った二つの果実が自身の存在を主張するかの如く上下に揺れる。

彼女こそ、ギルド窓口三人衆の一人であり、人気ナンバーワンの女性であった。

名を『アリア』という。


「では、これが受領書ですので、大事に保管して下さいね」


そう言って、一人の男‥‥‥シロウに手渡した。

シロウは受け取ると左ポケットに無造作に入れる。

『本当に大事に保管しているのだろうか』とアリアは思った後、口を開いた。


「それにしても、シロウさん。今回はいつもより『仕送り』の額が多いようですが大丈夫なんですか?」


「あぁ、それなら大丈夫だよ。なんせ、6人パーティになってから効率も良くなったからね」


シロウがオフィーリアとマコト、サーシャの3人を加えて、はや一か月が過ぎていた。

当初はレベル1だったマコトとサーシャも、それぞれ5と3にまで上がっていた。


「思った以上に彼らが頑張ってくれているので助かっているよ」

「なんせ、アレから俺は一度も死んでないし。それも大きいかな」


そう言って、シロウは得意顔(ドヤがお)を決めて親指を立てた。


「あははは……それは大きいですね」


それまでのシロウの悲惨さを知っているだけに、アリアは苦笑いをするしかなかった。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


そのシロウ達の隣のカウンターでは、獣人族(セリアマン)の受付嬢でありギルド窓口三人衆の一人『カチューシャ』と『人族の男』が話をしていた。


彼女は全身真っ白な短毛におおわれていて、時折ぴょこぴょこと動く耳に、常に意志とは無関係に動く長い尻尾を生やしている。

現在は寒い時期のため服を着ているものの、人族にとっての夏用衣服であり肌の露出は結構多い。


本来、彼女は人族の言葉を上手く話せない獣人族(セリアマン)の冒険者の為に設けられた専門受付嬢であったのだが、彼女を目当ての『それ以外の種族(専門外)』の冒険者がわざわざ列に並ぶこともあった。

どこの世界にも、そういう趣味のある男はいるものである。


「全く、みゃーはなんでいちゅも私の列に並ぶかにゃあ」

「みゃあ、これは受け取っておくけどにゃ」


そう言うと、カチューシャは人族の冒険者が報酬の袋から取り出してカウンターに置いたチップをポケットに入れる。

こうして、人族の冒険者はカチューシャと握手した手を頬にさすりながら去って行った。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


その更に隣では‥‥‥人族の男性冒険者が『石』になっていた。


しかし、誰も騒がないし、驚きすらしない。

つまり、これは日常茶飯事の事であった。


冒険者を石にしたのは、ギルド窓口三人衆の最後の一人『メドーサ』である。

長い黒髪を後ろに結って束ねており、黒ぶちの眼鏡を着用し、いかなる時でも氷雪気候のように表情を崩さない圧の強さに、その手の趣味のある冒険者に絶大なる人気を誇っていた。

アリアほどではないが非常に良く実った果実を胸に有しており、それらをぴっちりとしたギルド制服によって、スタイルの良さが際立たせている。


なお、彼女も本来は魔族(デモニアン)専用の受付嬢である。

魔族(デモニアン)といっても、シロウの前世における魔界の住人などではなく、この世界における人、エルフ、ドワーフ、小人族(コッポル)獣人族(セリアマン)のカテゴリに入らない者を指す種族である。


「全く……いつも手を触ってはいけないと言っているでしょう」


眼鏡をかけ直し、クイッと中指で上げながらメドーサは顔色を変えることなく言う。


「ありがとうございます!!!」


石にされた冒険者の仲間たちは、カウンターにチップを置き、石化した冒険者を担いで去って行った。


「明日は俺だからな」


そんな言葉と共に。


‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


再び、アリアとシロウに戻る。


「相変わらず、面白い奴らだなぁ」


「そうですね。でも、彼女達のおかげで私も助かってます」


「確かに」


アリアがワンオペで受付嬢をしていた頃を知っているシロウは、肩をすくめて苦笑いをした。


「それはそうと、そろそろアレが来ますねぇ」


「だなぁ」


そう言って、アリアとシロウは窓の外を眺めたのであった。

お読みいただき、誠にありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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