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第030話 バレンタインデー

2月14日らしく、バレンタインネタをやりました。

なお、お気付きの方もおられますでしょうが、この世界は現在4月です。

(/・ω・)/ コロコロコロ =〇

お昼過ぎのギルド併設の食堂。


お腹もふくれ、昼食の余韻に浸っている者達で溢れかえっている。


そんな中、とある空間のみそれとは違いピンク色の空気で溢れかえっていた。


「はい、あーん♡」


サーシャはハートマークの形をしたチョコをマコトの口の中に入れた。


「美味しい?私のチョコ♡」


「あ……うん……。美味しいよ………でも……」


マコトは苦笑いをしながら周囲を見渡す。

そう、二人の様子はシロウをはじめとしたパーティメンバーだけでなく、漏れなくその場にいた他のパーティメンバーからも注目をあびていた。


「全く、小娘は年中サカリが付いていて付き合ってられませんわ」


そう言ってリリスは立ち上がり、パーティメンバーに背を向けた。


「あらあらあら。チョコを渡す殿方のいない方の嫉妬の声が聞こえますわ。おほほほほほほ」


なにキャラなのか良く分からないが、兎も角いつもと違うキャラでサーシャはリリスを煽った。


「ふん。貴方のド辺境のド田舎で流行っている『ばれんたいん』などに、嫉妬などするはずもありませんわ」

「ほほほほほ。では、ごきげんよう」


リリスはぷるぷると小刻みに震えながらそう言い残すと、食堂を去って行った。


「ぷぷぷー。絶対、今からチョコを買いにボッタクル商店に行く気よ」

「ねぇねぇ、マコっちゃん。尾行しましょ」


「え!?そんな……リリスさんに悪いよ………」


「いや、ここはわしらが見守ってやるべきじゃろう」


意外にもサーシャの提案に乗ったのは、リリスの伯母であるエリスであった。


「というわけで()くぞ、我が精鋭たち」


「おーっ!」


「おー……」


こうして、リリスに続いてサーシャ、マコト、エリスの3名が食堂を後にしたのであった。


「シロウは付いて行かないの?」


「んー?いや、仮にサーシャ君の言っていることが正しければ、リリスに悪いだろ」


「あー………未だに気付いてないんだ………」


そう、シロウは気付いていないのだ。


さて、そんな事はさておき、ボッタクル商店。

この世界では、バレンタインデーなど当然存在しておらず、リリスは通常営業モードにあるチョコの棚を眺めていた。


「あの小娘より、絶対に良い物を買いますわ」


ふんす、と鼻息を荒くしながらリリスはチョコを見繕っていく。


「何か、お探しですかにゃあ?」


そんなリリスに、猫獣人の店員が声を掛けた。


「あら?良いところに来られましたわ」

「この中で、殿方に一番喜ばれそうなチョコはどれかしら」


「それはもう、これですにゃあ!」


猫獣人の店員は、迷いもなく一つの製品を指差した。


「あら、ごくごく普通のチョコに見えますけど……確かにハートマークやら星マークやら形は凝られてますけど」


「にゅふふふふふふ。実はですにゃあ、この商品は特殊な加工が施されておりましてにゃあ、ごにょごにょごにょ………」


「な、何ですって!そんな………」


「いやいや、そこまでやってこその愛にゃ」


「………分かりましたわ。これを頂きますわ!」


「毎度ありにゃあ」


こうして、リリスはボッタクル商店を後にした。


「これで良いのかにゃ?サーシャにゃん」


「ええ、上出来よ!ドロシー」


二人は、お互いに親指を立てて称え合った。


「ホント、あの小娘は、誰とでも仲良くなるのぉ」


「それが彼女の良いところなんです」



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。



そして、舞台は宿屋。

ギルドに併設されているこの宿屋は、個室ではなく数人~10人が一つの部屋で寝泊まり出来る仕様となっており、シロウ達もそれに漏れず同様の部屋を使っている。


にもかかわらず、リリスは部屋で一人、シロウが帰って来るのを待っていた。

シロウがいつも使っているベッドに仰向けになって、自身の身体中にチョコを盛って。


「確かに、あの店員の言うとおり体の上に直接置いても溶けませんわ」


リリスは、そう呟きながらシロウが扉を開けるのを待っていた。


「いやぁ、本当にするとは思ってもみなかったわ」


部屋の鍵穴から覗き見るサーシャは言う。


「いや、お主が考えたものじゃろ」


「そうだけどさ。シロウさんが一番に入って来るとは限らないじゃない」


「確かに……」


あれ?もしかして我が姪はポンコツなのかや?とエリスが思ったところで、マコトがシロウとオフィーリアを連れてやってきた。


「あれ?何してるんだ二人とも。部屋に入らないのかい?」


「いえいえ。ここはパーティリーダーであるシロウさんを待っておりました!」


サーシャはそう言うと、見事なまでの敬礼を敢行した。


「お、嬉しいこと言ってくれるじゃないの」


そう言うと、シロウはドアノブを回して部屋の扉を開けた。


「リリスさんもだけど、シロウさんも結構ちょろいわね」


「シーっ!」


こうして部屋に入ったシロウは、自身がいつも使っているベッドに横たわっているリリスに目が行った。


「お、リリス。先に帰ってたのか。って、何やってるの?」


「シロウを待ってたのですわ………で…その………どうかしら……この姿………」


「ん?姿って………おおっ!そうかそうか!サーシャ君が言ってたバレンタインってやつか」


「そうですわ………で…いかがかしら」


「うんうん、いいよいいよ。素晴らしい」


シロウはベッドの周囲を歩きながら感想を述べる。


「では…おひとつ………」


「うん、素晴らしい!直ぐにでもシルバに見せてあげるといいよ」

「絶対喜ぶぜ、あいつ!」


シロウはそう言って、満面の笑みで親指を立てた。

そう、シロウは未だに気付いていないのだ。

シルバが既にリリスの想いの相手ではない事に。


こうして、リリスの作戦は大失敗に終わったのであった。

お読みいただき、誠にありがとうございました。

次回もよろしくお願いします。

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