第016話 ギルドの窓口は午前9時から午後5時まで(12時から1時間の休憩時間を除く)
ハイファンタジーのような、壮大なストーリー展開は一切起きない…予定…です。
よろしくお願いします。
次の日の朝。
パーティ一行がギルドの中へ入ると、既に多くの冒険者で賑わっていた。
とはいえ、まだギルドの窓口は開いていない。
何故なら、現在の時刻7時半だからである。
「とりあえず、朝食でもとるか」
パーティリーダーであるシロウの一言で決まった。
朝食は、鍋にたんまり入った汁気の多いシチウに、大きなカゴに入った二十個ほどの硬パン、他、大皿に6本の大型フランクソーセージ、厚く切られたハム6切れ、そして各々が注文した飲み物であった。
硬パンの食べ方はメンバーそれぞれで、例えばサーシャは少し深めの皿によそったシチウに硬パンを小さくちぎって入れ、スプーンですくって食べている。
フランクソーセージやハムは、そのままガブリと平らげた。
「相変わらず食べ方がなっとらんのぅ」
「ホント、所詮は一部だけ異常に育った小娘だけの事はありますわね」
「うっさいわね。料理なんて自分の好きなように食べればいいのよ」
エリスとリリスの言葉にサーシャはそう答えると、最後に頼んでおいたオレンジジュースを一気飲みした。
「あれ?マコっちゃんまだ食べてるの?早く食べてギルドの窓口に並ぼ」
サーシャは急かすが、この時点で時計の針は8時を少し過ぎた頃であり、ギルドの窓口が開くまでまだ1時間ほどある。
そんなサーシャに急かせたマコトは、礼儀作法そっちのけでお腹の中に詰め込むと、リーダーのシロウに先に行っていると告げて二人ギルドの窓口に並びに行った。
サーシャが抜けると一気に場は静かになり、各々のペースで食事が進んで行く。
そして、ゆったりとした朝食の時間も終わろうかとする頃、シロウは口を開いた。
「しかし、これほど簡単に転職を納得するとは思って無かったよ」
シロウは、ハムにかぶりつき堪能した後に言った。
「もしかして、ワザとゴブリン退治の依頼を受けたってこと?」
「いや、それはない」
「そのために時間をかけて戦い方を教えていたんだし」
「ゴブリン退治は、単に初心者の戦士を卒業するのにうってつけだったってだけさ」
オフィーリアの問いに、シロウはそう答え残りのハムにかぶりついた。
「まぁ確かに、彼奴は素早いが攻撃は大したことないからの」
「そういう事だ」
「しかし、知力が並外れて高い小娘が、何で戦士なんぞやっとるのかと思ったら小僧が原因だったとはのぅ」
「それも『マコっちゃんの側にいたいからぁ』とかいう下らん理由じゃし」
「全く、男のために職業を選ぶなど…………ハッ!」
そう愚痴を呟いたエリスであったが、最後の一言は余計であった。
何故なら‥‥‥。
「ぐっ!」
その言葉が胸に突き刺さった者が居たからである。
それは、自分の姪リリスであった。
「ま……まぁ、そろそろギルドが開くころじゃの」
エリスは慌てたように立ち上がり、シロウとオフィーリアは苦笑しながら立ち上がり、リリスはどんよりした空気を漂わせながら立ち上がったのであった。
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次回もよろしくお願いします。




