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短篇一篇 その10

作者: 戸倉谷一活

 以前というか、何年か前の話ですが、ラジオか何かで「人類が滅ぶまで残り一日のとき、貴方はどの様に過ごしますか」的な話があったようなことを急に思い出しました。

 そして自分ならば「どの様に過ごすのだろう」と考えていたらこの作品を書きたくなりました。

 優先順位で言えば後回しで良かったのですが、変なスイッチが入ってしまったようです。

「人類が滅ぶまで残り二十四時間を切りました」

 人類が滅亡するまで残り二十三時間と五十分少々となっても公共放送は淡々と事件、事故を中心にニュース番組を続けている。

 国内、国外を問わずに首都圏や大都市では暴徒と化した人達がありとあらゆるものを破壊していた。勿論、その様なことをしても人類の滅亡が止められるわけではない。中にはどこで入手したのか、爆薬を使って高層ビルのドミノ倒しを楽しんでいる一団もいた。

 公共放送はその状況を現地から中継している。これだけ観れば海外の暴動や内戦を中継している、単にそれだけのように思ってしまう。だが、実際には人類が滅亡するまで二十三時間と五十分少々なわけだ。

「皆さん、落ち着いて行動して下さい。誤った情報に惑わされないで下さい」

 公共放送のアナウンサーは繰り返し同じことを伝えるが、もはや誰の耳に届いているのか、誰もテレビを観ていないのでは無いか、その様に思ってしまう。少なくとも一人、全てを諦めてテレビを観ながら缶ビールを飲んでいる男がここに居た。

 民放は全てを諦めて放送局自体を閉めてしまったのか、何も映らない局もあれば、とりあえず過去のバラエティ番組を再放送している局もある。公共放送を見習っているのかいないのか、放送局周辺の事件や事故を律儀に報道している局もある。

 インターネット上では洞窟へ逃げ込めば助かるとか言って海外の有名無名の洞窟へ逃げ込むことを推奨している人も居た。勿論、その情報に踊らされて日本からも海外の洞窟を目指す人、中には国内の洞窟へ逃げ込む人も少なからずいた。

 逆に極東の日本ならば大丈夫とか言って海外から日本へ逃げ込んでくる人達もいた。

 一方、洞窟では無くて海中が安全という話もあって海外では潜水艇を所持している会社に人が殺到していたり、軍が所有している潜水艦を目当てに軍港へ人が集まっているとの報道もある。これは海外の海軍が所有する軍港に限らず、我が国の軍港も同様のことが起きていた。しかし、人類が残り二十三時間前後で滅亡するとわかっていても軍人は施設内へ民間人を一人も入れようとしない。それは我が国であろうとなかろうと世界共通のようだ。だが、国によっては軍人が銃口を向けても軍の施設内へ入って何がなんでも潜水艦に乗ろうとする人も居た。

「でも、潜水艦って、素人が動かせるもんじゃ無いだろうに」

 どこの国か定かでは無いが、とうとう民間人が数に任せて軍港の検問所を突破して潜水艦が停泊している桟橋へ向けて走っている映像がテレビで映っていた。一部の軍人がそれら民間人を制止させるために発砲しているが、それすらも無意味だった。

「パニックって、本当に恐いな」

 改めてそう思った。

 次のニュースでは宇宙へ逃げようとする人達がいることが報じられた。当然これも海外のいわゆるロケット発射場へ人が殺到しているところが中継されている。潜水艦と同じで素人が動かせるものでは無いし、乗員の数で言えば潜水艦よりも限られている。仮に宇宙へ行ったとしても酸素や食料を考えたら数日で地球へ戻ってこなくてはいけない。その点を考えるとわざわざ宇宙へ逃げる意味が無いし、何よりも都合良く打ち上げられるロケットが無い。それでも何故か人々はロケット発射場を目指している。

 宇宙へ行くのが無理ならばせめて飛行機で上空の高いところ、いわゆる高々度を目指して空港や飛行場に殺到している人も居る。

 一度は逃げようと思ったのだが、自分が逃げようと思ったときには既に多くの人が鉄道の駅へ殺到したり、高速道路は渋滞を通り越してほぼほぼ動かない状態である。そう言うのをテレビの中継などで観てしまうと逃げること自体諦めてしまった。

 仕事は人類が滅亡するとわかった当日はいつも通り終業時間まで仕事してから帰宅したのだが、翌日出勤したらほとんど誰も出勤していなかった。仕事を諦めて帰宅してテレビをボーッと観ることとなった。

 幸いと言って良いのかわからないが、米とインスタントラーメンだけは買い溜めしていたから食うに困りはしなかったが、それでも毎日ご飯にお茶を掛けるか、インスタントラーメンとなればさすがに飽きてしまう。

 そう言う中継を観ながら缶ビールを飲んでいたのだが、その缶ビール自体が最後の一本を飲みきってしまった。

 足下には空き缶が散乱している。人類が滅亡すると言うから部屋を片付ける気も失せていたのだが、さすがにこれは良くないだろうという気になって護美袋に空き缶を詰めていく。しかし、ゴミの集積場へ持って行っても誰が回収するのだろうか。仕方が無いから部屋のベランダに空き缶が詰まった護美袋を置くことにした。

 ベランダから外を見ると本当に誰一人歩いていない。逃げる人はとっくの昔に逃げてしまったのだろうし、近所で残っている人はごくわずかなのだろう。その人達は各家庭で最後の晩餐でも楽しんでいるのだろうか、それともゲームでもして楽しんでいるのだろうか。

 どこからか、芳ばしい匂いが漂ってくる。バーベキューを楽しんでいる家庭があるようだ。

 お天気も良いことだし、外へ出てみよう。財布を持って行っても使うことはもう無いし、無意味だと理解しつつも持って行く自分がいる。

 財布の中には万札がまだ数枚残っている。使うことは無いとわかっていても確認してしまう自分がおかしい。

 人類が滅亡するとわかった時点でほとんどの物流は止まってしまったし、スーパーマーケットやショッピングセンターという所へ行ったら食品売り場は長蛇の列だし、中には商品の奪い合いまで起きていた。一方で生活雑貨や衣料品の売り場は客はほとんど居なかった。中には人類が滅亡するし、最後は贅沢に着飾りたいと思ったのか、高価な服を購入している人も居たが、そう言う人は珍しい方だろう。

 とりあえず近所のスーパーマーケットに入ってみたが、店員が一人もいない。当然、逃げてしまったのだろう。それにしても入り口の自動ドアは鍵もかかっていないし、自由に入れるし、商品を勝手に持って帰ることもできる。勿論、こちらとしては商品を盗むとか、その気は無かったのだが、店員が一人もいない店舗で客が一人ポツンと居るというのは不自然だったし、誰かに疑われたらどうしようと考えてしまう。

 アルコール飲料などが並んでいるはずの棚へ行ってみるが、何一つ残っていない。肉も魚も野菜も何一つ残っていない。

 仕方が無いから他の店舗を目指してみる。コンビニが目に入ったので入ってみる。

「いらっしゃいませ」

 店の奥から元気の無い声が響いてくる。思わず「ん?」となってしまう。中年の男性がゆっくりと姿を現す。

「いらっしゃいませ」

 もう一度、今度はさっきよりは元気のある声で挨拶してくれた。

「ビール、ありますか?」

 尋ねてみた。

「お客さん、残念ながら、食品関係は全て売り切れまして……」

 予想はしていたが、残りの二十数時間、残っている米とインスタントラーメンだけで過ごすのか、そう思うと陰鬱になってしまう。

 酔って眠っている間に人類が滅び、自分自身も眠っている間に消えて無くなることが出来ればどれだけ楽だろう、そう思って缶ビールを飲み続けてきたのだが、案外、こういう時に限って酔えないものである。

 普段、アルコールを飲まないからこういう時は缶ビールが一本か二本あれば充分酔えると思っていたのだが、緊張でもしているのか、ほとんど酔えなかった。

 仕方が無い。諦めて人類が滅亡する瞬間をこの目で見ながら自分の人生を終えることにしよう。そう考えるしか無かった。

 それはさておき、このコンビニのおじさんは何故、コンビニに居るのだろうか?

「ところで、逃げなかったのですか?」

 気になったので口に出して聞いてみた。

「ぃゃぁ、逃げようと思っとったのですが、お客さんが来られますし、バイトさんやパートさんは逃げちゃうし、気が付いたら、一人で店番をすることになってまして……」

「今からでも、逃げないんですか?」

「そう言うお客さんは、逃げられないんですか?」

 それを言われると困るのだが、「逃げそびれまして……」と答えることしかできなかった。

「借金してまで、この店のオーナーになったんですよ。実際には店長も兼ねてますから、忙しいだけの毎日でしたが、それでも愛着もありますし、連れて逃げたかったんですが、建物ですからね。連れて逃げるわけにもいかずに、一緒に最期を迎えようか、と」

 そう言う理由も有るのか。そう思った。とりあえずオーナーさんに一礼して店を出た。

 相変わらず快晴だし、野鳥はいつも通り飛んでいるし、野良猫は顔を洗っているし、本当に人類は滅ぶのだろうか?

 米とインスタントラーメンで腹を一杯にして眠ることにしよう。これで眠れなかったらどうしようか。

 実際、人類が滅亡するまで残り二十四時間となった時、何ができるのでしょうか?

 私としては本編にも書きましたが、高層ビルのドミノ倒しはやってみたいですね。自衛隊にでもお願いしたら大量の爆薬を譲って貰えたら良いのですが、それは無理でしょうね。

 お酒はほとんど呑めないので最後の瞬間は酔い潰れて「気が付きませんでした!」って感じで過ごしたいですね。中途半端に飲み過ぎて急性アルコール中毒となって救急車で病院に搬送されないよう、気を付けたいところです。

 でも、やっぱり美味しい物、好きな物をたくさん食べて腹一杯で最後を迎えたいですね。


 あんまり縁起の悪い話を書いていると本当に「人類の滅亡」が近付くかもしれません。そうなっても私の責任ではありません。ここは「小説家になろう」ですから、ね。

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