第4章
「おい…待て!お前あそこで何してたんだ!海江田全に何をした!」
…っダッダダダダダ ダダダダダダ―――
こいつは必死だった。
俺には犯行が明かされるのを恐れ、逃げている様にしか見えなかった。
…っダッダダダダダ ダダダダダダ―――
「あ…」
バンバンッ!!病院の敷地内を逃げていたんだから当然だ。彼女は逃走経路が無くなって施錠されたドアを叩いていた。
「答えろ、お前どうして西村田を知っている?」
「此処開けてくれたら答えるよ」
は?と思ったがこの中は入院患者専用の食品管理庫。此処を開けたところでこいつが逃げる事は不可能。そして俺は工場で働いていた時、此処の掃除も依頼された経験があり、
開け方は知っていた。
ギィィ―――バンッ!
「開いたぞ?」
「ちょっと来て」
少女は管理庫の奥に木島を案内する。閉所とはいっても四畳半位の広さがあり、施錠すれば人間の出入りは望めないが換気構位ならあった。
「だから何だ?」
少女は何も言わずに持っていたカバンからペットボトルを取り出す。その光景は本当に理解に苦しむ。しかし―-解ってしまった…その中身は ガソリン500mlと、ライター
「!!」
「すいません、木島さん…殺させてもらいます」
その姿はかなりあっさり“そうですか”と肯定してしまいそうな程淡々としていた。
だが、本能的にそれを阻止ようとした。
「おい!何してる此処でそんな事したらお前と俺だけ死ぬって訳にはいかない、この病院にいる人間も巻き込むぞ!」
「だったら、木島さん、貴方がこれを被ればいい。」
は…?こいつ何言ってる…俺は今日初めてこいつに会った。だが、こいつは俺を知っている…それだけじゃない、海江田全を事故に合わせたのもこいつだろう。それを知られたからここで…殺される…?
ビシャッ――-
「うわっ!やめろ!」
「此処まで一線を越えた人間がそれを背負って生きる理由って何ですか…」
―--それを失くした今、お前が生きる理由は何だ?-―-
理由を持たないと生きられないのか…? 一線を越えた?だったらそれは俺も同類だ。仮に海江田を殺しかけたのがこいつだとしても事実、海江田は俺に助けを求めた、十年間を奪った事に何の変りも無い、ただ、応えるよ、俺は此処で死ぬ事は出来ない、今まで生きていると言える人生を送ってこなかった、だからこんな奴がこんな所で死んだら、
何もしないで、他人の人生から“普通”を奪ってただそれだけで死んでいくモノで終わる、それは…あまりに…呆気ない
「やめろ!あんた殺人犯になりたいのか?これ以上の苦痛味わいたいのか!」
こいつにもあるのか…?
『反論できない、というか感情が消滅した様な』
『何も…感じないのか?』
『否、感じない…とは違うな、唯、泣こうとか、笑おうとかそういう事はもう、出来ない。』
「おい、お前は何が足りないんだ?」
「気付いた…?」
「足りないものは?」
「私は…っ…」
「おい!そこで何してる?管理庫に立ち入るには事前の許可申請が必要だ」
「ヤバい!逃げ…
「私警察に行く、殺人未遂でしょ?」
「お前には聞きたいことがある。警察行かれたら面倒だ、帰れ。」
「はい…」
「…その前に、お前の状態は?」
「痛考無動、“現象制作”で私が出した課題です。」
「どういうことだ?」
それは俺が世界の何処捜してもない程くだらない課題にしようとして作ったものだ…
知っている…と言う事はこいつは、どこまで俺を把握して…