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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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クラレスとアルキュラス・第三幕・ミステリーサークルと仲直りの行方

翠と綾乃は光明寺先生と一緒に先生の自宅である大きなお屋敷に着いた。

「初めて見たわ・・。おおっきぃわねぇ~」

翠と綾乃はその古めかしい瓦屋根で木造建築のご立派な家を見上げていた。

「どうぞお入りください」

光明寺先生は何故か生徒である二人に丁重に言った。

「お邪魔しまぁ~す」

桐木で作られた引戸の外玄関を開くと中には本玄関に続く造園で埋められた中庭が広がっていた。大粒の砂利で覆いつくされた上に家の前まで誘導してくれる丸く大きな石畳が引かれ、招かれるままにその上を一歩一歩と歩いて行った。本玄関に届くもう少しの所で先頭の先生が立ち止まり後ろを振り返った。

「左手の奥にあるのが蔵よ」

その大きな家の敷地にキョトンとする二人に光明寺先生は指を指して言った。その蔵の大きさにまた二人は目を丸くした。


一方、沙織と由香はアジト・・部室に残りミステリーサークルの調査に乗り出していた。部屋を薄暗くして運良く持っていたデータカードをスライド写真にしてスクリーンに映写して拡大して見ていた。

「ご立派な幾何学的な模様ね」

由香は関心して眺めている。

「この象形文字が宇宙から私達に何か伝えているのよ」

沙織は何かに納得している。

「前にも色々な形があったけど今回のは図形も全く違うし何しろとてつもなく大きいわ」

「さぁ、これをどう解読していくかってところよねぇ」

今までもミステリーサークルの写真を多く撮って収めてきたが何ひとつ解らぬままその模様が奇麗だといって今では部屋の壁紙と化している。何気に由香が心霊写真で山積みになった机にもたれ掛かった。その拍子にひらひらと小さな紙切れが落ちていった。落ちたそれは一枚の名刺だった。

「何これ!MIBって誰の名刺?」

由香が拾い上げた名刺には“MIB極東支部 No.007”と書かれてあった。

「007ってねぇ~」

沙織の顔の力が抜けていった。

「待った!裏の文面を見て!“この世の不思議なお困り事ご連絡ください。あなたに代わって解決します”って書いているわよ!」

由香の目が大きく見開いた。

「それにフリーダイヤルの電話番号がFAXとも兼用ですって!」

由香の気だるい声が高くなっていった。

「と、いう事はこのミステリーサークルの写真をFAXで送っておけば後は寝て待てばいいってそういう事ね」

沙織の顔がニンマリと笑いがこぼれた。

「だけどこの名刺貰った覚えがないわぁ」

沙織と由香の記憶から完全に消されている。

「よしっ!この名刺の所にもミステリーサークルの写真を送って寝て待つとして、私達は別の角度から何かしら調べていきましょう」

由香は名刺を軽く持って息を強く吹きかけ風車の様に機用に回して見せた。

「あっ!そうだ!新しく“通信ネットワーク部”って出来たじゃない。あそこに頼んでこの写真を世界中の人に見てもらっていろんな意見を聞いたらどうかしら」

沙織が一つひらめいた。

「そう言えば世界中にこの学校の生活を発信する目的で活動し始めたクラブね。だけど三日も経たないうちにくだらない猿芝居のアピールになっちゃてるじゃない。そんな所に頼んで大丈夫?」

由香も一つ思い出した。

「なるほどコンピューターがメインのあそこならドデカいスーパーコンピューターも有るはずよ。それならこのメッセージの意味もマシンが読み取ってくれるわ。さっそく協力を求めましょう」

沙織は前向きに意気込んで由香をひっぱり部室を出て行こうとした。すると突然、スクリーンに映し出されていたミステリーサークルの画像がぶれ出し消えて真っ白になった。そこへ何やら人影の様なものが照らし出されてきた。

「お主ら童を忘れておらぬか?」

「あっ!お狐様!」

二人は同時に声を挙げた。

「お主らは同じ友である童の声も聴こうとはせぬのか」

お狐様は何か不貞腐れている。

「そんな事は無いようぉ。それより先っきまで皆で集まっていた時に出てくりゃいいのにぃ」

沙織が膨れっ面で言った。

「童はお天道様が顔を出している所では体の姿が留めなくて消えてしまうのじゃ。その場に居た事はいたが当然ながらお主らにも童の姿は見えぬ」

お狐様は特異体質の自分を伝えた。

「それでは仕方がないね」

由香が力の抜けたように気だるく言った。

「で、お狐様はどう御思いでしょうか?」

沙織がお伺いを立てた。

「そうであるなぁ。意見であればそれに描かれている模様は古代からある文字なり図形なりしておる。然るにその陰様な形の柄はお主らが言っている様な宇宙の異物では無い。つまりお主ら人間の考え出した産物という事じゃ。宇宙の者の考えている事なぞ童には分からん。まったく宇宙の者とお主らとは生まれた家柄も位も違うではないか。」

お狐様は我存ぜぬというところだ。

「家柄?位?・・。あぁ~あ、聞くんじゃなかった」

沙織の小さな心の声が出た。

「結局のところ解らないんじゃない」

由香も俯き小声で本音が出た。


蔵に上がった翠、綾乃、光明寺先生の三人はあらゆる古物書を引っ張り出し山積みになった家系図を読みとり因果関係の原因となった要因を探し出していた。

「こんなに沢山あるのにどれも似たようなものばかりで何も当てはまらないわ」

翠は目をこすった。

「こっちは日記や恋文まで出てきてますよ」

綾乃はあくびをしている。

「やっぱり昔はとても仲が良かったみたいね」

光明寺先生は色あせた写真のアルバムを見ている。

「ここまで探して原因になった様な箇所が見当たらないって事はこれだけある本のの中にはどれ一つ当てはまらないという事よね」

翠は諦め背伸びをした。

「もしかしたら別に秘密の文書が何処かにあるんじゃない」

綾乃が足を伸ばした。

「こんなに何回も読み直して見ていても頭の中がこんがらがって分かりづらいわ。いっその事タイムマシンがあればその場にいけて直ぐにわかるのにぃ」

翠が頭をかいて自暴自棄になった。

「それはさすがの理科研究部でも造れませんよぉ」

綾乃は本の内容に集中してページを捲りながら言った。

「待って!これって何の意味かしら?」

光明寺先生はまだ紙の質が変色していない比較的新しい家系図に目をやり理解できない文章を発見した。

「なになに・・、クラレスとアルキュラス・・?その後が何て書いてあるのか分からないわね」

翠と綾乃は二人して一緒に言って目を合わせた。

「今までこんな文章見かけなかったのに此処で急に突然出てきたわね。人の名前かしら・・。外人さん・・。」

光明寺先生は首を傾げながら考え込んでいる。

「何か物語に出てくる神話の神様の様な素敵な名前ね」

綾乃は夢見がちだ。

「私の勘だけどその人物が何か怪しいわ。これは調べる必要があるわね」

翠が睨んだ様にターゲットはその二人の名前に絞られた。

「私達は一旦学校に戻って別の方法で探ってみます」

翠と綾乃はお辞儀をして出て行った。

「私はもう一度一通り読み返してみるわ」

光明寺先生は二人を見送った。

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