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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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クラレスとアルキュラス・第二幕・仲良し大作戦

四人の通う小高い丘の上に建っているしょう桃烏中等学校は土日の週休二日制を導入している。その方が教師も都合がいいからだ。しかしながらそんな休みの日も各クラブ活動に専念する部員たちが大勢いる。オカルト研究会の今回の一件もその一環である。

「学校に着くまでに服も乾いたわ」

沙織はナプキンを解いた。

「ほんと山の天候って分からないものね」

綾乃は蓋を外した。

「朝からこんな事になるとは思わなかったわ」

由香はコップを置いた。

「全て西園寺の所為よ」

翠は箸を握りしめた。

体育館倉庫の奥隅のアジト・・部室にていつもの様にお弁当を食べながら作戦会議が行われている。

「何故あそこまでして私達の邪魔をするのかしら!」

沙織は弁当箱を手に持ち勢いよく食べている。

「かまって欲しいんじゃないの」

綾乃はお上品に箸を進めている。

「それにしても私達に対する接し方が異常よ」

由香は少しずつ口にしている。

「どちらにしても関わってほしくないわ」

翠はお茶で一気に流し飲み込んだ。

「ごめんなさい。みんな先生の所為なの」

いつの間にか開いていた部室の扉に一人の若い女性教師が立っていた。

「あっ!光明寺先生!お久しぶりです」

皆が食べる手を止め一斉に声を挙げた。そこには申し訳なさそうな顔をして顧問の光明寺春江先生がいた。

「えっ?今何とおっしゃいました?」

皆は弁当の蓋を閉め終りながらその言葉に?(クエスチョン)が頭を飛び交った。

「皆には本当に申し訳なく思っているわ。私が登校拒否であまり学校に来ない理由もこれには実は二つの家系が問題しているの・・」

あまり顔を見せない引き籠りの光明寺先生は何やら複雑な事を話始めながら席に着いた。

「私の家系の光明寺家と生徒会長の西園寺家は元々は大きな地主の家柄だったの」

光明寺先生の身内話に四人は神妙な表情になった。

「そう言えば今まで気が付かなかったけど“寺”っていう字が二人とも苗字にあるわ」

翠が今頃になって発見した。

「そうなの昔々この周り一帯の土地を分割していた二つの広大なお寺だったの」

光明寺先生はひとつひとつ順を追って話していった。

「その時から既に仲が悪かったんじゃないの?」

由香が疑わしそうな目で気だるく聞いた。

「私も思ったんだけど聞いてみたらそうでも無かったみたいでそれはそれは大変とても仲が良かったようよ」

光明寺先生は親や年配の家族から聞いたであろう家の歴史を語り続けた。

「そのとても仲の良い関係は変わることなく長く続いたんだけど歴史の中の戦でバタバタになって、両家のご老体の住職がこの世を去って跡を継ぐ者がいなく広大な敷地だけが残ってしまったっていうのが現状なのよ」

光明寺先生は長くややこしい内容は適当に切って話した。

「戦っていつの時代よ。だけど大体の話は分かったけど仲が悪くなった肝心な所の原因が分からないわ」

沙織が確信を付いてきた。

「それは実際私も分からないの。気が付たらこうなっちゃてて、二つの家通しが睨み合っているの」

光明寺先生は頭を抱えた。

「それで西園寺も同じように光明寺先生が顧問のオカルト研究会に当たって来るのね。・・ってそんなのとばっちりじゃない!」

沙織が悲鳴を上げた。

「ほんと私の所為で皆には悪いと思っているわ・・」

光明寺先生は声を挙げて号泣した。

「よし、よし、先生の所為じゃないって・・。それに私達にも関係はあるわ!」

翠が光明寺先生を慰めながら切り出した。

「何で私達に関係があるのよ」

由香が机に寝さぼりながら気だるく聞いた。

「何でって考えてみなさい。ここで西園寺と仲良くなっておけば今までの様に向こうからの勝手な理由でああだのこうだの言って来なくなるじゃない。そうなれば西園寺も私達の行動を大目に見てくれると思うわ。逆に言い換えれば有利に活動できるって訳よ!」

翠がはしゃいでピースした。

「そうよ私達の見返りはどっちにしろ仲直りしたら平和になるわよ」

綾乃は平和主義者だ。

「それにしてもどうやって仲直りするのよ。しかも先生と西園寺まだしも二つの家族全員でしょ」

沙織が複雑な顔をしている。

「そこなのよ、まずは根源を探らなくちゃ。昔からのそんなに有名なお方なら図書室で地域の歴史資料を見れば分るでしょう」

図書係も務める綾乃が自慢げに言った。

「あと私の家の蔵にも家系図なりなんなり沢山古い資料があると思うから何かしら参考になると思うわ」

光明寺先生は涙の跡で化粧が崩れている。

「これで決まりね!この仲の悪くなった要因を掘り下げて行きましょう!」

翠が片腕を上げて歓声を挙げた。

「今日の朝のミステリーサークルはどうするのよ」

皆がどよめくなか由香が冷静に気だるく聞いてきた。

「ミステリーサークルは・・、燃えて無くなったじゃない・・」

沙織が悲しい顔で言った。

「それがねぇ、カメラは壊れちゃって小佐井先輩に謝らなくちゃならないけど、データカードは咄嗟にポケットに入れて無事だったのよ。だから証拠写真はあるわよ」

由香は不敵に微笑みながらポケットからデータカードをゆっくりと取り出した。

「由香!あんたは偉い!」

沙織が涙を流して握手してきた。

「これで朝の努力も水の泡にならなくて済んだわ。それじゃぁ~、先生の家族問題を探っていくのと課題のミステリーサークルの解明との二手に分かれましょう!」

翠が号令を挙げた。

「みんな悪いわね私の為に・・」

光明寺先生がまた泣き出した。

「それじゃ、せーの!」

四人は公平を期する為、裏表で二組に分かれた。

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