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オカ研の旗の下(もと)  作者: 淡太郎
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ハレー彗星が来た日・第一幕・天体観測の夜、突然に、

いま世界は史上最大の天体ショーと盛り上がりを見せている。光沢のある煌びやかな長い尾を連なせながらハレー彗星が地球に本日大接近をする。時折し同じ頃そんな大注目を浴びるハレー彗星と裏腹にもう一つ遠い銀河から誰に知られる事も無く地球に向かう物体があった。そんなころ彼女たちはこの空前の天体観測に夢中であった。

「すごい!ウサギさんまで見れるわ!」

沙織が天体望遠鏡で見ながら感動して言った。

「かぐや姫も隣に座っているわよ!」

翠が割り込んで覗き込んできた。

「竜宮城でみんなで暮らしているんじゃない?」

沙織がもう一度割り込み返す。

「竜宮城は海のなか。別の物語がごっちゃになっているんじゃない」

由香が夜空を眺めながら気だるい声で言った。

「月を観るのもいいけど今日の主役はハレー彗星よ」

綾乃が天体望遠鏡にもたれながら言った。

お馴染み四人組は『ハレー彗星と神秘の宇宙』を今回のテーマを名目に、自分たちの通う学校の裏山の“天体観測するなら絶好のスポット”という沙織の案内で、大きな天体望遠鏡を装備したキャンピングカーを綾乃の執事の琴原の運転でハイキング感覚でやってきた。

「見えたー!ハレー彗星よ!美しいわ~」

沙織が天体望遠鏡に目を押し付けた。

「存在感があるわよねぇ。神秘的だわ」

翠が沙織を押しのけ覗き込んだ。

「二人だけで揉み合ってないで私たちにも観せてよ」

由香が気だるい声でいつもの二人のじゃれ合いを見ながら言った。

「争わなくてもモニターに映しかえればみんなで観れるわよ」

綾乃がスイッチを切り替えた。

そこには悠然と輝き放ちながら進んでくるハレー彗星がクッキリと映し出された。目に見える大きさはさすがに豆粒程度だがゆっくりと長い尾を連なせながらその存在をアピールしている。

「ハレー彗星はそのむかし不吉な星として恐れられていたの。地球上の酸素が無くなったり、疫病をもたらすとか色んな噂話が出回ったわ」

綾乃は文学少女である。

「ハレー彗星にとってはえらい迷惑な話ね。」

由香の気だるい声はいつものことである。

「美しいながら災難をもたらす星か・・。魅惑あるじゃない」

沙織は夜でも元気である。

「そんな噂話はデマだけどあの長い尾に紛れて宇宙人が侵略しにやって来るに違いないと私は思っているの」

翠も元気である。

「それこそハレー彗星にとっては余計なお世話よ」

沙織が翠に顔を突き合わせた。

「侵略って物騒な事より遊びに来ればいいんじゃないー!」

綾乃が天に向かって叫んだ。

「だけどやっぱり宇宙人は侵略のイメージがあるでしょ」

翠はまだ言っている。

「宇宙人に対する偏見ね」

由香は気だるくあきらめ顔である。

「しかし大接近している割には小さく観えるなぁ」

沙織はもう一度天体望遠鏡に覗き込み目を凝らした。

「そりゃそうよ、大接近って言ったって遠く離れているのよ。近づきすぎたら地球にぶつかっちゃうわ」

翠が呆れた顔で言った。

「どれくらい遠くよ」

沙織がほっぺたを膨れさせた。

「遠く離れていたら大接近ってならないじゃない。」

由香も気だるい声で応戦した。

「地球にぶつからないくらいに離れているのよ!」

翠は自棄になった。

「おかしいわね、この天体望遠鏡の説明書きでは”銀河の果てまでくっきりとよく観える”って書いてあったわ」

綾乃が説明書を手に取った。

「ねぇねぇ、この天体望遠鏡、製造がNASAって書いてあるけど本当?」

由香が指さしたところには、“メイドインNASA”と書いてある。

「詳しくは分からないけど骨董品屋で安く見つけたのよ」

綾乃が首を傾げた。

「お得よねぇ、信頼のNASAだわ」

沙織は何かに納得している。

「無理だこりゃ」

翠は頭をもたげた。

「お嬢様方、チーズフォンデュが出来上がりましたよ」

綾乃の執事の琴原がご馳走を手にしてきた。

「おいしそうー!」

四人全員が声を挙げた。

「やっぱり執事さんの料理は絶品だわ」

沙織が口一杯にほお張って言った。

「そうそう私達のひとつの楽しみよね」

翠も大きく口を開けた。

「ところでさぁ・・」

由香が気だるく小さな声で前のめりになってきた。その時、

「見て!ハレー彗星より大きな流れ星」

綾乃がみんなの会話を引き裂き突然大きな声で空を指さした。

その声に驚きほかの全員も会話を止め立ち上がり見上げた。

「うわっ!迫力あるぅ~。あれこそハレー彗星じゃない?」

沙織が感動している。

その流れ星はハレー彗星のように長い尾を引いているようだ。そしてとてつもない音を放っている。

「あれって、隕石よ!」

翠が気付いたとたん、流れ星に見えたそれは轟音と共に山の峰に消えた。

みんなが唖然として口を開けている。

「・・・近場に落ちたわ。行ってみましょう!」

翠が仕切りだした。

慌ててチーズフォンデュを口に加え、すぐさまテーブルに広がったものを片付け車に乗り込み執事の琴原がアクセルを踏み込んだ。こういう時の四人の連帯能力は凄まじいものである。

爆走で砂煙を立て山の峰の麓まで来た車は、運転手の執事の琴原を残し四人は隕石が落ちた現場を草葉の陰から覗き込んでいた。

「何あれっ!隕石じゃ無いじゃない!」

翠が目を見開き興奮している。そこにはUFOが降り立っていた。

「だけど造りが古典的よねぇ」

綾乃は目を凝らし観察している。そのUFOは三本の脚を軸に着陸していた。

「それより写真!写真!」

沙織が慌てふためいている。

「もう撮ったわよ」

由香がデジタル写真部から借りている一眼レフカメラのシャッターを切っている。

UFOは何事もなく無音のまま静かにいる。

「由香、ところでさぁ食事の時なにか言いかけたじゃない?あれってなに」

翠はUFOに釘付けになったまま由香に振った。

「なんだっけ?こんな状況で忘れちゃったわよ」

由香はファインダーを覗き込んだまま気だるくゆっくりと話した。その時UFOの底から地面に向けて明るい光が放射された。

「あっ!!」

四人全員が驚きのあまり声を挙げた。光の放射を終えるとすぐさまUFOは軸にしている三本の脚を収納して瞬く間に飛び上がって行った。

四人はポカンと口を開けたまま、UFOを見上げていた。

「よしっ!見に行くわよ!」

沙織が我先に我に返りみんなをけしかけた。

四人はUFOがいたところまですぐさま駆け寄った。そこには見た事も無い美しい花が咲いていた。

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