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第87話 本当に親子だった

 地上に出てお互いに距離を取る。


「俺より長生きするなんて言っておきながら、情けないなぁ」


 燃え尽きた魔人の亡骸の前に行き、跪く。

 さすがに今斬り掛かるのは無粋というものだ。

 別れの言葉もあるだろう。


「それじゃ、始めようか」


 そう言うと、何処から取り出したのか、剣の柄を持っていた。

 そして炎の刃が現れる。

 何処かで見た武器だ。


「その剣を何処で手に入れた!」

「ん? ああ、地上の人間から貰ってきた」


 絶対に心琴(みこと)さんのことだ。

 他にあの武器を使っている人を見かけていない。

 というか、心琴(みこと)さんが出した刃に比べて、物凄く大きくて炎の勢いが凄い。

 同じ武器でも扱う人によってここまで変わるものなのか。

 とても同じ武器とは思えない。


「お前は剣士らしいからな。合わせてやるよ」


 本来は剣士じゃないけど、俺に合わせて剣士でやってやるってことか。

 なめられたもんだぜ。


「合わせなくていいよ。俺たちは変幻自在だからな」

「俺たち?」

『最初から行くぞ』

『うん』

「悪いけど、俺たちは2人で1人なんでな!」

「タイム・オブ・ターイム! マジカルモード、タイムちゃん!」

「なんだその小っこいのは!」

「エイルの作った鉄人形(ゴーレム)さ」

「いや違うだろ」


 なんでだよっ!

 俺は鉄人形(ゴーレム)なのに、同じ魔力無しのタイムは鉄人形(ゴーレム)じゃないのか。


「どちらかというと、神族に近いんじゃないか。その子、実体が無いだろ」

「あるよっ。ちゃんと触れるんだぞ。実体が無かったら触れないだろ」

「嘘を吐くな」

「だったら触ってみろよ」

「マスター?!」

「おー、触ってやろうじゃないか」

「え、えええー」

「ほら、ナデナデしてもらってこい」

「本気?!」

「あいつもナデナデする気満々だぞ」

「本気なんだ……はぁー。行ってきます」


 両手で手招きしている魔人の元に、タイムがフヨフヨと飛んでいく。

 ふっ、タイムの愛らしさに心を打たれるがいい。


「えっと、初めまして、エイルのお父さん。タイムは、タイム・ラットと申します」


 こんなときもカーテシーを忘れない。

 礼儀正しいな。


「あ、ご丁寧にどうも。俺はデニス・デヴィッド・ターナーという。知ってのとおり、エイルの父親だ」

「ホントにお父さんなの?」

「疑うのか? 目の鋭さなんか、ソックリだろ」

「はぁ……」


 そう言うと、片手でがしっと鷲掴みにしやがった。


「きゃあ!」

「あ、てめぇ! なにしやがる」

「あ、すまん。本当に触れると思わなかったから思いっきり掴んじまった」

「もー、タイムじゃなかったら潰れてますよ」


 そんなに強かったのか。


「しかし、不思議な感触だな。硬いようで柔らかい。素材はなんだ?」

「きゃっ、何処触ってるんですかっ。あ、こら、スカートを捲るなっ!」

「……本当に親子なんだな」


 やっていることがエイルとソックリだ。


「マスター、感心してないで助けてよぅ」

「安心しろ。いつもエイルがやっていることをやっているだけだ。下心も悪意もない」

「そういう問題じゃないよぅ」


 確かに大きかったら(7頭身だったら)絵面的にヤバいかも知れない。

 でも小さいから(3頭身だから)問題ない。

 見た目お人形さん遊びしているようなものだ。

 ……それはそれで絵面が危ないか?


「マスタァーっっ」

「おーおーよしよし。怖かったでちゅねー」

「ふぇぇぇん!」

「いや、疑ってすまなかった。謝罪しよう。しかし、本当になにでできているんだ? 俺の知らない素材があるなんて……世界は広い」

「そうだな……」

「こうなるとますます負けられなくなった」

「なんでだよ。娘の成長を素直に認めてやれよ」

「その子を本当にあいつが作ったのならな」


 え、もしかしてバレているのか?

 素材とか言っていたからすっかり信じたものだとばかり。


「どうしてそう思うんだ?」

「あいつの心が感じられない。もしかしてお前もじゃないのか? ちょっと触らせろ」

「触りたかったら倒してみろ」

「そうかよっ」


 炎の剣を振りかざして襲い掛かってくる。

 時子の補助は無いけど、なんとか見えるぞ。

 これを受け流して……


『マスターダメっ、避けて!』

『なにっ』


 [バックダッシュ]で無理矢理避ける。

 その直前に信じられないものが見えた。

 受けようとした黒埜(くろの)を炎の刀身がすり抜けていくところが見えたんだ。

 衝撃はない。黒埜(くろの)が溶けたわけでもない。

 なんの抵抗もなく、するりと通り抜けてきた。

 もしそのまま受け流そうとしていたら、致命傷を負っていたかも知れない。

 かすり傷で済んだのは幸いだ。

 いや、火傷か?

 切り傷を焼かれたような感じだ。

 なるほど。斬ると焼くを同時に……か。

 対魔物武器としても、対人武器としても優秀だ。

 しかし考えようによってはこっちの攻撃も受けられないんだから、条件は同じか。


「んん? 今すり抜けたか?」


 お前も分かってなかったんかよ。


「っかしいな。女剣士とはやり合えたんだがな」


 それはつまり炎の剣同士ならつばぜり合いができるってことですか。

 心琴(みこと)さんは奪われた剣を取り戻そうとしていたようだ。

 取り返せなかったんだな。

次回はお前のものは俺のもの

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