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第81話 最後の一撃

「なんのことなのよ」

「少し強く行くからな」


 強くといっても連射式詠唱銃(オートスペルガン)は連射性能はあっても、一発一発の威力はそこまで高くない。

 十分防げる。

 物陰から躍り出て一発撃つ。

 同時に父さんも撃ってくる。

 弾速はあっちの方が早い。

 シールドで防ぐと、衝撃が伝わってきた。

 吸収しきれていない?

 父さんも左手1本で受け止め、握りつぶしていた。


「っっくぅー、結構痛いな。でもこの程度の威力か? 聞いてたのと違うぞ。魔物を(ほうむ)ったヤツはどうした」

「そんなのよ、あなたに使えないのよ」

「今更手加減か? 負けたときにその言い訳はお粗末だぞ」

「負けないのよ」

「ほら、早く交換しろ。次行くぞ」

「あなたこそ手加減のよ、()めるのよ」

「ガキがナマ言ってんじゃねぇ!」


 ひっ……父さんが口悪く怒鳴るなんて……


「使えよ。魔物を葬ったってヤツを」

「……」


 再充魔(リチャージ)は終わっている。

 撃とうと思えば撃てる。

 でも使ったら父さんは……


「もう少し強く行くぞ」


 まだ威力が上がるの?

 まさかリミッターを外して撃つつもり?

 そんなことしたら、詠唱銃(スペルガン)がもたないわ。

 考えても仕方ない。

 火炎弾じゃなくて石槍(ストーンランス)にしよう。


「ほれほれ、先に撃っちまうぞ」

「なめないのよっ!」


 私が撃つと、答えるように撃ってくる。

 シールドで防げたけど、威力が強くてよろけてしまった。

 また設定を変えた方がいいのかしら。


「火炎弾じゃないだと」


 不意打ちにはなったみたいね。

 火炎弾のように握りつぶそうとしたから、手のひらに突き刺さっているわ。


(いって)ぇぇぇっ! 精密作業ができなくなったらどうするつもりだっ!」

「うちが工房を継ぐのよ」

「ああ?! まだ任せられねぇぞ」

「だったらさっさと帰ってくるのよ!」

「うわ、やぶ蛇だ。えー我が親愛なる娘よ、工房は任せた。お父さんはここに引退を宣言する」

「バカ言うんじゃないのよ。まだまだ未熟なのよ。教えて欲しいことのよ、沢山あるのよ」

「それこそバカを言うな。確かに未熟な面はある。魔力操作もまだ甘い。技術面も不安がある。だがその知識はここにいる誰よりも豊富だ。いいか。親方なんてのは全てにおいて優れてる必要は無い。お前のその知識を具現化できるヤツを雇えばいいだけの話だ」

「ならあなたを雇うのよ。他に具現化できる人のよ、居ないのよ」


 だから重要なところは自分でやってきていた。

 今はそれが出来ていない。

 ルキャルさん(工房長)に任せてきたけど、まだ造りが甘いところがある。

 安全マージンや耐久年数が心配ね。


「嬉しいことを言ってくれるねぇ。だがその誘いには乗れん」

「なんでなのよぉ!」


 自分は一緒に来いって誘ったくせに、私の誘いは断るなんて。

 私までそっちに行ったら、母さんはどうなるのよっ。


「ほら、決着を付けるぞ。次は手加減無しだ。お前も手加減するな」

「父さんっ!」

「……ふぅー、お母さんを泣かせるろくでなしはお父さんじゃないって言ってなかったか?」

「父さん……」

「なんだ?」

「母さんが待ってるのよ」

「早くいい人を見つけるように言ってくれ」

「父さんよりいい人のよ、いるわけないのよ」

「っはっはっは。それは視野が狭すぎるってもんだ。この……えーとモナカとかいう青年はどうなんだ?」


 また身分証で覗き見……


「モナカのよ、ただの検体なのよ」

「検体は可愛そうじゃないか?」

「十分なのよ。そもそも母さんの相手なんて務まらないのよ」

「俺は独り身の娘を心配して言ったつもりなんだがな」

「うちの話はしてないのよっ!」

「お前が先に言い出したんだろ」

「言ってないのよ」

「俺よりいい人がいないってのは、お前にとってだろ。トレイシーにとってじゃない」

「そんなことないのよ。母さんにとってのよ、同じことなのよ」


 でなければ、再婚の話を断ったりしない。

 法的には父さんは死亡扱い。

 母さんだってまだまだ若い。

 相手の人も決して悪い人じゃない。

 父さんのこともよく知っている人だ。

 傍目には良い縁談のはずよ。

 断り続けているのは、父さんのことを待っているからじゃない。


「とにかくこれで終わりだ! 構えろ」

「……うちが勝ったのよ、一緒に帰るのよ」

「……俺が勝ったら、俺と一緒に来い」

「分かったのよ」

「手加減は無しだ。分かってるな」


 手加減……か。

 しているわけじゃないんだけどな。

 これ、使うしかないわね。

 殺さないように狙う場所を気をつけないと。

 薬莢(カートリッジ)を交換して構える。

 父さんも準備はいいみたい。

 手のひらの穴も、とっくの昔に塞がったようね。

 簡単に治るようじゃダメ。

 屈服させないと……

 それこそ片腕ぐらい消し飛ばさなきゃダメよ。

 それよりシールドは耐えられるかしら。

 衝撃の吸収が全然できていなかったわ。

 連射式詠唱銃(オートスペルガン)ってこんなに威力あったかしら。

 やっぱり……


「どうした。撃たないなら撃っちまうぞ」

「手加減のよ、しないんじゃないのよ」

「してないさ。だがリミッターは解除しない」


 解除していない?


「ウソなのよ」

「お父さんはウソなんか()いてないぞ。お前、やっぱりこいつを使いこなしてなかったんだな。残念だよ」

「うちの魔力量は少ないのよ」

「そういう問題じゃない。そんな欠陥品、お父さんが娘の護身用に渡すと思うか」


 解除しないでこの威力。

 狙撃ユニットを付けたらこれ以上ってことよね。

 あのとき、これだけ使いこなせていたら……


「カウントだ。5!」


 正面からまともに受けるのは得策ではなさそうね。


「4!」


 角度を付けて逸らすように受けよう。


「3!」


 出力も上げて……くっ、キツい。


「2!」


 単発式詠唱銃(カートリッジガン)と違って前もってチャージできないのがキツい。


「1!」


 バッテリーパック式にしようかしら。


「0!」

次回は地上……いや地下? に戻ります

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