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第71話 絶体絶命

 そいつは突然やってきやがった。

 今までの魔物とは違う。

 腕1本でこの泥猪(マッドボア)とかいうヤツを止めやがった。


「つれねぇな。逃げんなや」


 こいつ、もしかしてこの間立入禁止の先に……地下に入り込んだ3匹のうちの1匹か。

 なっ、両手で牙を掴んだと思ったら、そのまま持ち上げやがった。

 なんつぅ力だ。


「うわぁ!」

「きゃー!」

「ひぃぃ」

「くっ」


 当然俺たちは振り落とされてしまった。

 が、ノンビリ痛がってる暇はねぇ!

 俺たちの上に泥猪(マッドボア)を振り下ろしやがった。


「避けろっ!」

「ひっ!」


 クソッ、1人逃げ遅れたか。


「ほー、中々避けるんや。っふははははは、それそれそれそれっ!」


 泥猪(マッドボア)を振り回し、潰れた1人を徹底的に潰してやがる。

 即死したはずだ。

 なのに意味の無い追い打ちを掛けて俺たちを煽ってるのか?


「やめろぉ!」

「待てっ、もう手遅れだ!」


 我慢しきれなくなったヤツが魔物に斬り掛かっていきやがった。

 どう考えても勝ち目はない。

 叩き潰す対象が変わっただけだ。

 あっけなく叩きのばされ、地面にめり込んで動かなくなった。

 くそっ。

 助けることも、()めさせることも、なにもできねぇ。

 逃げることすら……あ、足が、動きゃしねぇ。


「っははははははは! 脆い、脆すぎるねぇ!」

「ブモォ!」

「っとっとぉ。お? イノシシが消えちまったぃや」


 消えたと思ったら、風が走り抜けていきなり魔物が燃え上がりやがった。

 なにが起こってやがる。

 俺たちにもうこんな力は残ってないはずだ。


「あっちゃっちゃっちゃぃや! こっならぃやー!」


 炎を掴んだ?!

 掴めんのかよ。


「ひゃあ!」


 ほのおが悲鳴を上げた?!

 この声、さっき話しかけてきたヤツだ。

 そして魔物は片手でぶん回すと、俺に向かって投げやがった。

 避けられねぇ!


「うがっ(あっち)ぃ……くねえだと?」

「やったわね! ほら、あたしが時間稼ぐから、あんたたちはさっさと逃げなさい」


 助かった……のか?


「すまねぇ」

「だから分かんないって言ってるでしょ! 分かったら頷きなさい!」

「お、おう」

泥猪(マッドボア)の仇! 覚悟しなさいっ!」

「っは! てめぇん相手は俺じゃねぇんだぃや。行けや!」


 魔物が徒党を組んで押し寄せて来ただと!

 あいつ、魔物を統率できるのかっ。

 なんにしても、魔物は全てあの風だか炎だかに集中してやがる。

 今のうちに!


「あぎゃっ!」


 飛び越えてきただと?!

 残った1人も、頭を掴まれてそのまま地面に叩き付けられちまった。

 くそっ、頭の中身が散乱してやがる。

 俺もああなるのか……


「ペッペッ、やっぱ不味(まじ)ぃんやこいつら。腹ん減ってなきゃ食えたもんじゃねぃや。うがあああああああっ! あの美味そな匂いん何処行ったんや! おっと、不味そうやって、逃がすと思ったんや? (あめ)ぇんよ」

「くっ」


 残ったのはとうとう俺1人か。

 幸い、こいつ以外の魔物は俺をガン無視してやがる。

 腹ぁくくるしかねぇな。


「ほう、逃げんなぁ終わっかや」

「へっ、なに言ってっか分かんねぇな。イヤホン(こいつ)完璧に壊れちまったか?」

「はあ? んだぃや、こいつも言語障害持ちぃや。上も下もまともん喋れんやつぁいねんや。ま、喋ったとぅや、意味ねんや」


 掛かってこねぇんか。

 ……くっ、隙だらけなのに踏み込めねぇ。


「ん? まぁそう焦んなぃや。ちぃた楽しませてくれんや。ひゃっひゃっひゃっひゃっ」


 へっ、笑ってやがる。

 こっちは笑う余裕なんかあるはずもねぇってのによ。

 こいつを倒さなきゃ、帰れねぇ。

 訓練をサボったこたねぇんだけどな。

 クソッ、完全に遊ばれてる。


「ほれほれ、頑張れ頑張れ、おお、あちゅいあちゅい! うひゃひゃひゃひゃ!」


 くおんのぉ!

 全っ然斬れやしねぇ。

 なんなんだ一体。


「あぐっ」

「おっとごめんごめん。ちょっと強かったかぃや? いひひひひ。もうちっと優しゅうしたろや」


 なに言ってっか分かんねぇけど、バカにされてんのだけは分かるぞ。

 くっそお!


「おや? 武器しまっちまってええんのや? 拳で(かた)んがえんか……ん?」


 モナカのこと、バカに出来ねぇな。

 結局、こいつ頼みかよ。


「なんだそりゃ。ただの剣かぃや? はぁー、期待外れだんや」

「へっ、そうあからさまにがっかりすんな。こいつをその身に受けてからにしろよ。はぁぁぁぁっ!」

「ギャーギャー騒いでんねぃや!」


 仕組みや理由なんざ知らねぇ。

 ただよく斬れるってことだきゃ確かだ。

 でもな。良くも悪くもただ斬れるだけなんだよ。

 魔物相手に使ったところで、再生されるのがオチだ。

 役になんざ立ちゃしねぇ。

 それでも、ただ斬れるだけでも、一矢報いてぇじゃねぇか。


「ぐわぁぁぁぁっ!」

「へっ、汚ぇ叫び声だな」

「てんめぇ、よくも俺様ん腕を!」


 斬り飛ばした腕が、ドサッと地に落ちた。

 へっ、ざまぁみろ。

 こいつは切れ味だきゃ確かなんだよ。

 この(はじめ)が設計した高周波振動剣はよ。

 ん? 腕が再生……しねえ?

 斬り飛ばした腕が……(うごめ)かねえ?

 どういうこっだ。

 こいつ、魔物じゃねぇのか。

 魔獣と同じ?

 もしかして……斬り刻むだけで倒せる?


「許さねぇ許さねぇ許さねぇ!」


 これなら勝てるっ!

次回は大物ゲストの登場です

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