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第67話 父さんの行方

 魔人の視線の先にあったもの……いや、居た者は。


『エイル! なにやっているんだよ。大人しくしていろ』

『魔人は? 倒したの?』

『いや、逃げ出したよ』


 〝お前を見て〟……とは言えなかった。


『そう。逃げたの……追いかけましょう』

『いや、無理だ。3人とも満身創痍だろ』

『モナカくんはまだ動けるでしょ』

『戦闘可能時間がもう2分しかないよ』

『まだ2分あるんでしょ!』

『無茶言うな』

『無茶じゃないわ。足りないなら時子に充電してもらいなさい』

『エイル、落ち着け』

『落ち着いているわ。冷静よ。冷静に作戦指示を出しているわ』


 ダメだ、前しか見えていない。

 周りが全然見えていない。

 こんなの作戦でもなんでもない。

 引き際ってヤツを考えてくれ。

 ……って言っても、考えられないんだろうな。


『分かった』

『マスター?! いくらなんでも無理だよ』

『追いかける前に聞きたいことがある』

『マスター!』

『あの魔人はお前のお父さんなのか?』

『マスター?』

『どうなんだ』

『違うわ』

『本当に違うんだな』

『本当よ』

『ならお前の知り合いの誰かなのか?』

『なんでそんなことを聞くの?』

『質問に答えろ。答え次第ではこのまま追いかけてやる』

『……知らない人よ』

『根拠は?』

『……記憶に無い魔力痕だからよ』

『お前が知らないだけ、覚えていないだけの可能性は?』

『それを言われたらどんな人でも可能性が出てくるわ。会ったことも顔を見たこともない工房の顧客がどれだけ居ると思っているの』

『……そうか。タイム、時子、戻るぞ』

『モナカくん!』

『あの魔人がお前の知っている誰かなら追いかける価値がある。でもそうでないなら、思い出せないくらい遠縁の人なら価値はない』

『あるわよっ。あの魔人から父さんの魔力痕が匂ってきたの! だからもしかしたら……』

『追いかけたら会えるかも知れないって?』


 エイルは無言で頷いた。


『手遅れになる前にか?』


 再び頷いた。


『手遅れでも……か?』

『手遅れなんかじゃない!』


 いや、手遅れの可能性が高い。

 あんなのが3人も居る。

 魔物だって居る。

 幾ら俺たちよりお父さんの方が強かったとしても、生き残っているはずがない。

 ここの軍人が倒せない魔人だぞ。

 俺たちだってあそこまでお膳立てしておきながらちょっと傷を負わせた程度だ。

 エイルには悪いが既に……下手をすれば配下の魔物になっていてもおかしくない。

 だから魔人に痕跡がある……と考えるのが自然なのでは?


『悪いが客観的に見て追いかけるのはリスクしかない。大体お前自身も動き回れるほど回復していないだろ』

『そんなことないわ。ここまで自力で来たのよ』

「ならシャキッと立て!」

「はぁ、はぁ、た、立ってるのよ!」

「勇者語はどうした。秘匿通信(内緒話)じゃなく、実際に声に出してみろ」

「くっ……はぁ、はぁ、う、うりゅひゃひきゃめ」

「あ? なに言ってっか分かんねぇぞ!」

「はぁ、はぁ」

「黙ってたら分かんねぇだろうがっ」

「マスター、もうその辺にしてあげて」


 秘匿通信(内緒話)している間中、ずっと息を荒げていたくせに。

 無理させられるわけないだろ。

 雇い主の命令は絶対だ。

 でも雇い主の命を守ることは最優先。

 命令違反だって辞さないんだよ。


「戻るぞ。これは絶対だ」

「モキャ……ナ……しゅっ、はぁ、はぁ、モナカ!」


 ふっ、勇者語は諦めたか。

 俺の名前さえまともに言えないほど疲れ切っているくせに。


「タイム、残りの魔物はどうなったか分かるか?」

「魔人が逃げたら途端にバラバラに動き始めたから、こっちが盛り返してるよ」

「それまでは連携が取れていたのか。よくここに辿り着けたな」

「軍の人が足止めしてくれたからだよ」

「そうか。礼を言わないとな。あと、謝らなきゃ」


 エイルを担ぎ、時子をおぶっ……と、その前に。


「補助魔法、ありがとうな。助かったよ。よしよし」

「……バカバカバァーカ」


 な……また罵倒された!

 頭きた。撫で回してやるっ!

 わしわしわしわしわしわしわしわし。


「うきゅ、いい加減にしてよっ!」


 と言う割には振り払おうとしないのは、さすがナデナデ大好き星人。

 身体が正直なところは変わってなくてよかった。

 ちょっと安心したところで時子をおぶり、みんなの元へ歩き始める。

 さっきも見たような光景だ。

 ただ、エイルは大人しくぐったりしているけど。

次回は風紀が乱れます

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