第65話 まずは魔物
勢いよく魔物の目の前に飛び出し、同時に黒埜を上段から振り切る。
魔物は避ける暇もなく肩から腰に掛けて真っ二つになった。
ついでに地面も真っ二つに……
また力加減間違えたか。
さっきより抜いたつもりだったんだけどな。
この辺は練習あるのみ。
地面に刺さった黒埜を手放し、抜刀しながら横薙ぎで十字斬りにする。
分割した魔物をすかさず[焼滅]で灰にする。
最初から飛ばすなー。
もう少し斬り刻んでから火球かと思ったんだけど。
うっ、近くで燃えていると結構熱気を感じるぞ。
なんて場合じゃない。
一気に魔人を叩くぞ!
少し距離があるな。
黒埜を逆手に持ち替え、そのまま魔人へ投げつける。
[武器投擲]のお陰だな。
奇襲に驚いたのか動きを止めていたから当たると思ったのに、直前でかわされてしまった。
それでも腕に斬り傷を作ることができた。
よし、黒埜は魔人に通用するぞ。
追撃で火矢が矢継ぎ早に飛んでいく。
前と比べて時子が照準を合わせるのが上手くなっている。
それに1度合ってしまえばロックが掛かるから、そうそう外れることもない。
追尾するから避けようが無駄なこと。
叩き落とすしか手段は無い。
確実に俺よりダメージを与えている……くっ。
手の空いている魔物がそうはさせまいと時子に襲い掛かる。
が、時子は気にしない。
俺が居るからな。
時子と身体を入れ替え、蹴り飛ばしてやった。
っっくぅぅっ! 硬!
そこへ時子が俺を飛び越えながら小野小太刀を振るう。
分かってますよ。引っ張って威力増し増しだろ!
……あれ、携帯持ってなかったか?
いつ持ち替えたんだ。
って、今気にしている場合じゃないっ。
半ば時子を地面に叩き付けるくらいの勢いで振り回した。
さっきのように真っ二つにはならなかったが、片腕を斬り飛ばすことはできた。
ヤバっ、勢い付けすぎたか。足首までめり込んでるぞ。
そんな動けなくなった時子の背中に、残った腕が襲い掛かる。
そんなことはさせまいと、今度は俺が転がるように背中合わせとなり、黒埜で受け止めた。
更に時子に荷重が掛かるが、それでも潰れない。
そんな身動きが取れない状況を魔人が見逃すはずもない。
両手で黒くて大きななにかの塊を掲げてそのまま叩き付けてきた。
味方ごと潰す気か。
味方とも思っちゃいないんだろうな。
あれをまともに食らうのはさすがにヤバい!
と思った瞬間に首根っこを捕まれて前へ引っ張り出された。
その場に残された魔物が黒い塊に飲み込まれていく。
「はぁ、はぁ、はぁ、ごめん、暫く動けそうにない」
「時子がやったのか?」
「[加速装置]使って時間を、はぁ、引き延ばしたの。はぁ、身体に負担が大きい……から、はぁ、使いたくなかったん……だけどね。[剛力]も切れちゃった」
「喋るな。休んでいろ。後は任せておけ」
「ごめん。直ぐ戻るから」
「いいから、自分を守ることだけに集中しろ」
考えようによってはこれで1対1。
真剣勝負と行きますか。
ここより後ろには、絶対に行かせない。
次回は投げすぎ厳禁




