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第62話 先頭は民間人

 地図が完成する頃には第5ブロックへ続くゲートに到着した。

 車から降りて先ほどと同じ経緯を経て第5ブロックへと入り込む。

 ゲート自体は特に壊されているといった感じはない。

 だからなのか、ここを対策本部として使っているようだ。

 事前に連絡が行っていたのか、数名の兵士に敬礼で出迎えられた。

 副総裁が片手を上げると敬礼を止め、後ろ手に組んだ。


「ご苦労。戦況は芳しくないようだな。状況はどうなっておる」

「はっ。個々の戦力は並ではありますが、新種の統率力が高く、押されております」


 新種? って魔人のことか。


「被害は」

「第1部隊は戦闘不能。第2部隊は優勢ですが、第3・第5部隊は苦戦中。第4部隊は音信不通です」

「ね、第4部隊ってこの人たちのこと?」

「うわっ」


 幻燈機ポップアップディスプレイには戦闘中の部隊が映し出された。

 動く者は殆どおらず、凄惨な光景が広がっていた。

 そして一番見たくなかったのは、死んだ兵士が魔物となって襲い掛かっているところだ。

 人の形は既にしていないが、取り込まれている衣服が同じだから間違いないだろう。


「な、なんだ貴様は!」

「騒ぐな。彼女は電力の妖精(エレキテルフェアリー)様だ」


 様付けになったぞ。

 タイムの力を完全に認めたってことだよな。

 嬉しい。

 自然と顔がほころんでしまう。


電力の(エレキテル)……」

妖精(フェアリー)……様」

「でありますか」

「そうだ。彼らが地上民(オバグラ)から派遣された戦力だ」

「失礼ですが、自分には民間人にしか見えません」


 はい、民間人です。


「そんなことよりどうなんだ」

「はっ、妖精(フェアリー)様の仰るとおり、第4部隊です」

「ふむ。酷いな」

「はっ、申し訳ありません。力及ばず……」

「安心せよ。これからは彼らが新種の相手をすることになる。我らはその露払いだ」


 やっぱりそうなるのね。


「はっ……」


 分かるよ。

 お偉いさんが言うから一応従うけど、内心は絶望しかないんだろうな。

 視線が痛いです。

 俺だってこんな一般人を連れてこられて「強力な戦力だ」とか言われても、希望なんて持てないよ。

 俺自身、可能なら魔物になんて関わりたくない。

 専門家に任せておきたい。

 エイルにとっても余計な……ん?


『どうかしたのか?』

『居るわ』

『なにが?』

『父さんよ。ここに居るのよ』

『ここにって、この第5ブロックにか?』

『ええ』

『気のせいってことは?』

『私が父さんの魔力を感じ間違えるわけないでしょ』

『そうは言っても数年振りなんだろ』

『絶対ここに居る。間違いないわ』

『分かった。信じるよ』


 疑うことは無意味だ。

 疑ったところで、判断材料が俺にはない。


『ありがとう』

『何処に居るかは分かるのか?』

『痕跡が多すぎて逆に分かりづらいの』

『多すぎる?』

『ええ。この近くにはないけれど、比較的新しい跡が(ばら)けているの』

『そっか』


 なんにしても、やっと手がかりらしいものが見つかった。

 戦闘に巻き込まれていなければいいんだけど。


『でも新しい痕跡ってことは、生きているってことだろ。よかったな』

『そうね』

『なんだよ。あんまり嬉しそうじゃないな』

『当たり前でしょ。喜ぶのは会ってからよ』


 会ってから、か。

 今は無事でも魔物に……なんてこともある。

 素直には喜べないか。


『で、何処へ行くつもりだ?』

『そうね。こっちかしら』


 そっちは……第4部隊が居る方か。


「副総裁、僕たちはこちらへ行こうと思います」

「……第4部隊が居る方であります」


 補足説明、ありがとう。


「ふむ……そうだな。任せよう。第1部隊で動ける者は彼らに付いていき、負傷兵の救出に当たれ」

「はっ」


 え、付いてくるの?

 素人だってバレるじゃないか。

 とはいえ、拒めるものでもない。

 拒めるものではないが……なんなんだこの異様な光景は。

 4人の一般人を先頭に、5人の兵士が付いてくるという……

 その内の1人はあの光剣を持っていた人だ。

 うう、せめてあなたが先頭を歩いてくれませんか。

 そんなささやかな願いも虚しく、タイムの道案内で瓦礫の山を避けて荒れた道を歩いて行く。

 そのお陰で行き止まりや瓦礫を越えていくなどということもなく、負傷者の回収を……いや、この人は既に亡くなっている。

 死んだ人全員が魔物化するわけじゃないのか。

 って、え?! その場で焼くの?

 連れて帰らないんだ。

 そりゃ放置できないだろうけど……

 次の人は生きてはいたが、もう長くなさそうだ。

 家族に渡してくれと頼み事をしている。


「早く、楽に、して、くれ……」


 マジか……そんなところ、一般人の目の前でやらないでください。

 そんな光景が何度も繰り返されている。

次回から戦闘開始します

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