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第58話 地下世界へ

 (はじめ)さんに案内された場所は、畑の隅にある井戸だった。

 蓋がされていて、あまり大きくない。

 水の匂いがしないような気がする。

 涸れ井戸かな。

 井戸……初めて見た。


「ここから下に降りられるそうです」


 蓋を開けると底が見えない。

 小石を落としてみたが、乾いた音しか返ってこなかった。

 やっぱり涸れ井戸のようだ。。

 (はじめ)さんが持ってきていた縄ばしごを井戸の縁に掛けて下へ垂らす。

 これで降りるのか。

 ……地下まで?


「少し待っててください」


 (はじめ)さんが最初に降りていく。

 暫くすると下の方でなにかが動くような音がした。


「降りてきてください」


 おお、声が凄く反響している。

 最初にエイルが降り、次に地下民(アングラ)の方々、時子と続いて最後に俺が降りた。

 井戸の底に横穴があり、下に降りる階段になっていた。

 やはり狭い。

 既にみんな降り始めていたので、後に続いて降りていく。

 結構長い。その上かなり急だ。

 転げ落ちたら下まで止まらないんじゃないか?

 降り始めると、後ろで閉まるような音がした。

 暗かった通路が更に暗くなった。

 (はじめ)さんが持っていた明かりだけが頼りだ。

 ……足下暗いな。


「長いわね」


 帰りはここを登るのかと思うと、気が重くなる。


「何処まで続いてるのかな」

「疲れたならおんぶしようか?」

「しなくていいっ。大体こんな狭いところでおんぶされたら、膝が無くなるじゃない」


 それもそうか。

 途中で何度か折り返しながら5分ほど降りていくと、ちょっとした広めの空間に出た。

 ……なにもない?


「ここが地下世界か?」

「いえ、中間地点らしいです。ここから先は地下民(アングラ)に聞けと言われました」

「我々、聞け? 分かるものは居るか」


 どうやら誰も分からないらしい。

 随分と中途半端な案内だな。


「マスター、こっちに扉があるよ」

「扉?」


 タイムが指さす方に近づいてみるが、扉なんて見当たらない。


「何処?」

「ここにカモフラージュされて設置されてるみたい」

「カモフラージュ……これ、開けられますか?」

「なるほど。確かに扉がある」

「しかし、我々はパスワードを知らない」

「知らないんですか?」

「我々は別の扉から地上に行ったのだ」

「パスワードが同じなどということは無い」

「エイル? なにしているんだ?」

「さ、行くわよ」


 というと、扉が開いた。

 またかよ。またピッキングかよ。


「なっ」

「お前、電力持ち(エレキテルオーナー)か?」


 電力持ち(エレキテルオーナー)


「違うわ。私は純粋な魔素人よ。魔力しかないの」


 はいはい、翻訳ですね。

 めんどくせー!

 この一方通行の翻訳、どうにかならないのかよ。


「なら何故開けられる」

「エイルさん……エイル……の指示で、タイムが開けました」


 この面倒くさい状況で照れながら言うな。

 慣れないのは分かるけどさ。


「な、なんだお前は」


 いきなり目の前に現れたタイムに驚いたようだ。

 大の大人が慌てふためいているよ。


「みなさん、初めまして。タイム・ラットっと申します。よろしくお願いします」


 いつものようにポーズを取ってご挨拶。マイペースだな。

 屈膝礼(カーテシー)とかいうらしい。


「そういうことを聞いているのではない」

「お前が作ったロボットか?」

「〝お前〟じゃなくてエイル・ターナー」

「え?」

「あー、彼女はエイル・ターナーと言います」

「そうか。エイルは凄いな。こんな小さな自律型ロボットを作れるなんて」

「タイムはロボットじゃありません!」

「ロボットじゃない? ならなんだというんだ」

「タイムは……えーと……ただの……映――」

「妖精です、妖精!」

「妖精?」

「そうです妖精です。俺と契約した妖精です。電気の申し子、電子の妖精、電力の天使。ご自由にお呼びください」


 全く、自分で言っておいて落ち込むなって。

 そもそも〝ただの映像〟なんかじゃない。

 もういいんじゃないか、妖精で。

 てことは電子の妖精?

 なんでもいい。

 タイムはタイムだ、よしよし。


「妖精なんて居るのか?」

「現に目の前に居るじゃないですか。ほら」


 蝶のような羽をパタつかせ、彼らの周りを飛び回るタイム。

 懐かしい光景だ。

 そんなことをしたこともあったな。


「俺が知ってる妖精と違う」

「妖精も服を着るのか」


 おい!


「無駄口叩いていないで、さっさと入るわよ」

「あ、待てよ。行きましょう」

「あ、ああ」


 入る?

 降りるとか出るじゃなくて?

 扉の向こうは小さな部屋だった。

 というか、この感覚は……エレベーター?!

 扉が閉まると、予想通り下へ降りていくあのフワッとした感覚に襲われた。

 でも鍵の掛かったエレベーターなんてあるのか。

 こうでもしないと簡単に行き来できるからかな。

 それにしても結構長いぞ。

 かなり深いところにあるのか?

 漸く止まり、扉が開く。

 そこも少し広めの部屋だった。

 今度はここから出ないといけないのか。

 出口はすぐに見つかった。

 すると扉の上で赤いランプが点いた。

 まさかなにかやらかしたのか!

 と思ったら天井から物凄い風が吹き下ろしてきた。


「な、なんだ?!」

「慌てるな。ここはクリーニングルームだ。直ぐに収まる」


 クリーニング? ああ、毒素を吹き飛ばしているのか。

 言われたとおり30秒ほどで収まり、赤いランプも青く変わった。

 扉が開いた先も小部屋になっている。

 壁際にロッカーがずらっと並んでいる小部屋だ。

 中に入ると扉が閉まった。

 そしてまた扉があって、鍵が掛かっていて開かない。

 とはいえ、エイルがパネル(電子鍵)を弄れば開かない扉は無いんじゃないか。


「……なによ」

「なにも言っていないだろ」

「さっさと出るわよ」

「待て待て。いきなり魔物に出くわしたらどうする」

「モナカくん、頼んだわよ」


 そうですかそうですねそうでした。

 分かってたけど。

次回は武器紹介です

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