第57話 忠告
村長の部屋に戻ると、一さんが居た。
戻っていたのか。
「村長、鍵が掛かっていなかったんですが」
「ふむ。掛けてなかったのだから当たり前であろう」
掛けていなかった?!
出てこられないようにしていたんじゃないのかよ。
考えが分からん。
開ける手間が省けたくらいに考えておくか。
「この方たちが……地下民ですか」
「そうだ。約束を反故にしたのだ。殺されても文句は言うまい」
ならなんで生かしておくんだよ。
「魔物、地下、追いやった。お前たち、罪人。殺される、文句、言えない」
お、凄い片言だけど、ここの言葉が話せるのか。
「違うと云っておるに……まあよい。お客人、彼らのこと、頼んだぞ」
「つまりあなたたちが地下に追いやった魔物を退治してこい。そういうことですね」
「ふむ。そういうことにしておくかの」
あれ、否定しないんだ。
なんで?
「やはり、お前たち、魔物、追いやった!」
「黙れ」
うっ、結構迫力あるな。
低くて重みのある言葉。
心琴さんみたいな強さはないが、積み重ねたものが違う感じだ。
誰も言い返せずに黙り込んでしまった。
「1つ忠告してやろう。お客人の機嫌を損ねるでないぞ。損ねたが最後、私ら共々この地上からなにも残らず消え去ると知れ」
それはどういう意味ですか。
冗談……という雰囲気ではなさそうだ。
え、本気で言っているの?
さっき否定しなかったのは、それが理由?
というか、船の武装の話……信じてくれたってことだよな。
普通ならホラ話だと思うような話を。
確かに本当の話だけど、そんなことしませんから。
しないけど……この更に重くなった場の空気、なんとかなりませんか。
笑って流せるような雰囲気じゃない。
村長、せめてその険しい表情を止めてもらえませんか。
「肝、銘じよう」
銘じないで。
流してください。
これじゃ俺たち極悪人みたいじゃないか。
「銘じておきなさい」
エイル、お前なに言ってんの?!
「彼女はなんと?」
よかったー言葉通じてなくてよかったー。
「〝そんなことしないわよ〟」
「モナカくん!」
「っはっはっは。お客人は雇い主の言葉をゆがめるのがお好きなようだ」
バレているし。
分かりました。ちゃんと翻訳します!
「〝銘じておきなさい〟と」
これでいいんだな。
「ふむ。相分かった。私も銘じるとしよう」
機嫌を損ねたくらいでそんなことしませんから。
ドンドン凶悪なイメージが植え付けられている。
もう仲良くすることはできないのかな。
「場所は一に教えてある。気をつけて行かれるがよい」
「行ってきます」
第4章終了です
次回はいよいよ地下世界に行きます




