第53話 ご褒美は誰のモノ
やっぱり原因はトキコさん……だよね。
また微精霊が戻って来始めた。
その内他の子たちも遊びに来る……よね。
来てくれるよね。
でももし来てくれなかったら……
なんて思ってたけど、ちゃんと来てくれた。
遊びに来てくれた。
鎌鼬は〝勝手に還ってごめんなさい〟と泣きわめきながら首に巻き付いてきた。
もう首の痕は消えてるからいいって言ってるのに、〝まだ残ってるよ!〟と言って聞かない。
〝ここは暑いくらいだから〟と言うと、風を起こし始めた。
その点龍魚はサバサバしている。
〝ただいまー〟と言っただけで、後は普段どおり。
ボクが召喚したのなら勝手に還ると契約上マズいけど、違うんだから龍魚くらい軽くていいのに。
「ね、また周りの様子を見てきてくれないかな」
〝周りー?〟
〝分かったー〟
昨日の襲撃でまた家が被害に遭ってる。
でも怪我人はそんなにいないみたい。
そっちよりも朝来た人たちの対応に追われてるみたい。
彼らがなに言ってるのか、よく分かんない。
村長と話してる代表の人も片言みたいだし。
「ルイエちゃん、翻訳できないの?」
「うん。まだ教えてもらってないから」
「そっか」
よく分からないけど、知り合いなのかな。
でもあんまり仲は良くないみたい。
村長は〝協定違反だ〟って言うばかりでまともに相手をしてない。
話は一応聞いてるみたいだから、無視してるわけじゃないのかな。
必死になにかを訴えてるみたいだけど……
魔物がどうのって言ってる?
「何度も云うが、我らはお互い不干渉。そう決まっておる」
「分かる、います。ですが、このまま、私たち、全滅、です」
「知ったことではない」
「もともと、あなたたち、逃がした。原因、私たち、全滅。責任、取る」
「逃がしたのではないと云うてるであろう」
「同じ、こと」
話が進展してないみたい。
責任を取るとか、なんの話だろう。
確かタイムさんは立入禁止区域から来たんじゃないかって言ってたかな。
「立入禁止区域を見てきてくれないか」
〝見てきていいのー?〟
〝立ち入ったらダメなんだよー〟
「みんなは泳いで入るから大丈夫だよ。立って入るんじゃないからね」
〝そっかー〟
〝合法だー!〟
〝行ってくるー!〟
これでなにがあるのか、何処から来たのか分かるかな。
「あっ、村長の監視も続けてよ」
〝えー?〟
〝残るのー?〟
〝誰が残るー?〟
〝やだー、つまんなーい〟
〝ボクもー〟
〝ボクだってつまんなーい〟
えーと、こういうときはこう言えばいいんだっけ。
「じゃあ、残ってくれた子は今度一緒に寝てあげるから」
ナームコさんの言うことを疑うわけじゃないけど、こんなことで効果が……
「あたしが監視する!」
「……え?」
「あ……ううん。なんでもないの」
〝任せたー〟
〝わーい、遠足遠足〟
〝行ってきまーす!〟
「あ、こら!」
仕方ないな。
でも鎌鼬じゃ目立つからなー。
どうしよう。
でも本人がやるって言ったんだし……
「やってくれるかい?」
「し、仕方ないわね。退屈だけど、やってあげるわ」
「ありがとう」
えーと、頭を撫でてあげればいいんだっけ。
「頑張ってね」
「ひゃあ!」
「あ、ごめん。イヤだった?」
「そんなことないわなんだったらもっと撫でてもいいのよこのあたしの毛並みは至宝なんだからたっぷり味わいなさい」
「うん、そうだね」
「あう……うう」
「ふふっ。ありがとう。行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます!」
よし、これで村長の様子も分かるかな。
音を風に乗せて運ぶだけだから水鏡は使えないけど。
その分音は鮮明だし、声か聞こえれば十分かな。
次回は突撃準備です




