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第51話 グラデ処理はありません

 後どれだけ居るんだ。

 終わりが見えない戦いほど怖いものは無い。

 飛んできた鞭を黒埜(くろの)で払い落とす。

 が、斬れずに柔らかく受け止められてしまった。

 そのまま絡め取られ、引き寄せられる。

 黒埜(くろの)を手放し、回避したところにパンチが空を切る。

 そこを抜刀して斬り付ける。

 さっきのヤツより硬い?

 斬り落とすつもりが、落としきれなかった。

 それでももう使い物には……うわ、傷が再生してくっついたぞ。

 やっぱり斬り落とすか心琴(みこと)さんみたいに傷口を焼くかしないとダメだ。

 だから炎の剣なんだな。

 生半可な攻撃は無意味ってことか。


「なあ、属性付与系の魔法は使えないのか?」

「何度か試したことあるけど、効果が無いんだよ」

「そうなのか」


 普通の武器じゃないからな。

 ま、刃こぼれを一切しないというのは大きな強みだ。

 ……心琴(みこと)さんの炎の剣が刃こぼれするとも思えないけど。

 ええい、こっちは武器をほぼ無限に出せるんだ!

 こんな強みは中々ない!

 だから[武器投擲(とうてき)]アプリが大活躍なんだよっ。

 黒埜(くろの)を何本も取り出し、それを一斉に投げつける。

 1度に投げられる本数に制限など無いのだよ!

 アプリ制作者が想定していなかったとも取れるがな。

 とはいえこっちにもバッテリーという制限があるから無茶はできない。

 せいぜい5本くらいが限度か。

 それでも牽制には十分役に立つ。

 怯んだ隙に本命の黒埜(くろの)で斬りかかる。

 ちょっと浅いか。

 更に踏み込んで前足を1本狩り取っていく。

 再生される前に時子が蹴り飛ばして[火連弾(ファイヤーバースト)]で塵にする。

 ちっ、1本失ったところで倒れはしないか。

 それでもバランスを崩したから残った前足を狙って飛び込んでいく。

 無理な体勢からの鞭を避けるのは難しくない。

 横一閃で切り飛ばしてやった。

 さすがに倒れるだろうと思ったが、まだ耐えるのか。

 鞭を杖代わりに立っている? 器用だな。

 だったらその鞭を斬り……斬れないっ。

 またグニッと柔らかく受け止められてしまった。

 マズい、攻撃がくるっ。

 一旦避けて距離を取り、再び斬り付けに……いや、そういえばこいつ、飛び道具持ってたんだっけ!

 エネルギー弾が襲ってきたが、体勢が悪い。

 直撃するっ!


「絶!」

「きゃあっ」


 なんとかタイムの結界が間に合って直撃は免れたものの、爆風で時子が飛ばされそうになった。


「大丈夫か」

「なんとか」


 あっ、しまった。切り取った足がそのままだ。

 反撃されたから燃やす時間を作ってやれなかった。

 拾われたと思ったら、そのまま腕が足を吸収したぞ。

 ……なんか腕が変形して手のひらに口? のようなものができた。


「次来るよ」


 連続して撃てるのかよっ!

 時子を抱えてとにかく回避だ。

 あっ、変形した腕から撃ちまくっているのか。あれ、口じゃなくて銃口かっ。

 これじゃ弾幕シューティングだよ。

 とにかく俺は回避に専念して、攻撃は時子に任せる。撃ち合いだ!

 照準さえ合っていれば必中だけど、どれも致命傷になっていない。

 的が大きすぎるんだ。

 火矢(ファイヤーアロー)は刺さるけど火力が足りない。

 火球(ファイヤーボール)は鞭で叩き落とされる。

 風刃(ふうじん)もすぐに傷口が塞がってしまう。

 他にもいろいろ飛んでいくけど、効果が薄い。

 生命力が高すぎる。

 やっぱり俺が斬り落として時子が焼かないとダメだ。

 少し無理をしてでも接近して――


「ちょっと大きいの行くよ」

「えっ」


 大きいの?

 大きいのって、なんだ?

 うは、マジでデカいな。

 今までの2倍……いや、面積でいうと4倍か?

 体積だと……そもそもアレ、体積あるのか?

 縦横が2倍の大きさの火球(ファイヤーボール)が飛んでいった。

 スピードも2倍。ドットの大きさも2倍……単純拡大かよっ。

 グラフィック担当、頑張って!

 威力も2倍?

 いや、もっとありそう。

 エネルギー弾をものともせず突き進んでいく。

 魔物に当たると全身をドット絵の炎が包み込んで燃え上がった。

 一応見慣れた光景だけど、こうもドットが大きいと本当に燃えているのか疑問にさえ思えてくる。

 が、オオネズミや魔物の切れ端が燃えているときと見た目は変わらない。

 サイズ感だけがおかしいんだ。

 でもやっぱりちゃんと燃えているらしい。

 魔物が苦しんでいる。

 効果は抜群だ。


「凄いな。これなら俺は要らなさそうだ」

「そんなことないよ。奥の手だから連発できないの」


 やっぱりそんなうまい話は無いのか。


「トドメ刺しに行くよ」

「おう!」


 コンガリと焼き上がった魔物は、動きが緩慢だ。

 表面も焼け焦げて……なに!

 焼けた皮膚が剥がれ落ちて、ゆっくりとだけどもう再生が始まってやがる。

 芯までは焼けなかったのか。

 それでも十分だ。

 厄介な鞭も柔軟性が無くなって簡単に切り落とせた。

 腕や足を斬り刻んでも再生が追い付かない。

 これなら八百万(無駄にバッテリー)を使わなくても細切れにできる。

 とにかく斬って斬ってとにかく斬って斬り刻んで小さな肉片にしてしまえば、時子がとどめとばかりに燃やしてくれる。

 魔物は厄介だな。

次回、居なくなって分かる有り難みです

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